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先生、俺またバグってます。

2026.05.06 公開 ポスト

WHITE JAM、3000人ライブを終えてGASHIMA (WHITE JAM)

ラッパー・GASHIMAさんによる人気連載『先生、俺またバグってます。』。
所属する3人組シンガーソングライター「WHITE JAM」は、
初の3000人規模ライブを大成功させ、次は5000人規模を目指し躍進中。
しかしその裏で、GASHIMAさんは鬱の症状に苦しんでいました……。
″双極性障害″を抱えながら、表現を続けるとはどういうことなのか──その光と影に迫ります。

*   *   *

 

WHITE JAM初の3000人ライブが終わった。
2026年、俺たちが開催したツアーの
グランドフィナーレだ。

この規模でライブをやると
決めた当初はハードルの高い挑戦。
ソールドアウトを目指してはいたけど、
その目標を達成するのは
相当難しいというのが現実だった。

しかし、リーダーであるSHIROSEの
楽曲「磁石」がツアーの途中から
グイグイとバズを起こした。
その結果、誰も予想だにしていなかった
公演90日前にチケットが
完売するという事態が発生した。

チームみんなが嬉しい悲鳴を上げ、
行く先々で「最近すごいね!」と
関係者や友人に賞賛される。
物事は順風満帆に進んでいくにも関わらず、
俺は鬱のドン底にいた。

鬱だと言うと悩みやストレスを
抱えているのだと思われる。
躁うつの怖いところは幸せなのに
その幸せを感じられなくなるところだ。

朝起きても、身体は重く
なかなかベッドから出られない。
そんな身体を引きずって
リハーサルをやっては、
フラフラで帰ってきて、
風呂にも入れずにベッドに倒れ込む。

鬱の副産物の仮眠と過食のせいで、
体重も一気に増加。
その数値は、本来ステージに上がるために
仕上げておくべき体重を大きく上回っていて
コンディションとしては最悪だった。

WHITE JAMに対して上がる期待に反して
どんどん自分は深い闇に沈んでいく。
そんな感覚を覚える毎日だった。

本番1ヶ月前、とにかく俺は
「復活する」という目標だけを掲げて、
毎日を過ごすことにした。

まずはトレーナーと相談して
ライブの適正体重まで
落とすメニューを組む。
負荷を上げすぎると翌日、
起き上がれなくなるので
そのギリギリの塩梅を狙った。

無理をして、悪化させたら
元も子もないので、担当医にも相談する。
とにかく自律神経の乱れが、
何よりも体調を悪くしていた。
日光浴、入浴、散歩、
出来る限りのことをやる。

この三つなんて誰でも
簡単に出来ることに思えるけど
鬱になるとこれが、とてつもなく難しい。

朝の身支度ですら、
ハードルが高かった。
歯を磨いては一旦休み、
洗顔してはまた休み、
髭を剃っては休み。
最後にやっと服を着替える。

普通の人が40分もあれば終わることが
鬱の俺には1時間半かかった。
そんな一つ一つの当たり前を
リハビリだと思ってやるしかなかった。

気温の上昇とともに少しずつ体調も
良くなってきて、
トレーナーとの二人三脚の末に
いつものライブツアーの
コンディションまでなんとか戻せた。

そして、迎えた本番当日。
とにかく繰り返し身体で
覚え込んだライブを一生懸命やった。

必死だったから、正直、
本編の記憶はあんまりない。
でも、ライブのラスト一曲。
最後のサビを歌っている時に
上から銀テープの紙吹雪が降ってきた。

そのキラキラと舞い落ちる紙吹雪を
見ながら、「綺麗だな」と思っている
自分がいて、少し驚いた。

何かを見て、綺麗なんて思えたのは
数ヶ月ぶりだったからだ。

とにかく復活を目指した
グランドフィナーレ。
きちんと俺の心も身体も
帰ってくることが出来た。

メンバーやファンがいなければ
きっと俺はまだベッドの中から
動けずにいたと思う。

まだ100%本調子とは言えない。
だけど、もう長いトンネルの
出口は見えてきた。

子供の時から、ずっと生きることは苦しい。
でも、苦しくても生きる理由はある。

今回も俺が帰って来られる場所を
作ってくれて、ありがとう。

次のツアーはもっと規模がデカくなる。
俺も絶対に生き延びて良い姿で
ステージに帰って来る。

その日まで、みんなも元気で。

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先生、俺またバグってます。

3人組シンガーソングライター・グループ WHITE JAMのラッパーとして活躍するGASHIMA。

そんな彼はある日、「双極性障害」であると診断される。

思い返してみれば、昔から自分はちょっとバグってた。

日本とアメリカで経験した過去、生い立ちと音楽、メンタルヘルスの狭間で感じた「生きづらさ」をパーソナルかつリアルに綴るセルフドキュメンタリー連載。

目まぐるしく変わる環境に対するやり場のない怒り。

振り返ってみれば「若気の至り」だと思っていた破壊的衝動。

あれも、これも、もしかしたら躁状態だったのかも?

 

“ただの勢い”の裏にはちゃんと病理があった。

そう思えると、あの時の俺も少しだけ愛せるようになった。

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GASHIMA (WHITE JAM)

兵庫県生まれ。一橋大学卒。

中学時代をロサンゼルス、高校時代をニューヨークで過ごしたバイリンガル・ラッパー。

2014年、3人組シンガーソングライター・グループ、WHITE JAM のメンバーとしてメジャーデビュー。

日本語と英語を巧みに使いこなすリリックに定評のある作詞家として、グループだけでなく他アーティストへの作詞提供も多数。

代表作に、SixTONES「Telephone」「RAM-PAM-PAM」、Nissy「Liar」、Snow Man「HYPNOSIS」などがある。

海外での孤立体験、日本の音楽業界での挫折、双極性障害の診断など、複雑なバックグラウンドを持ち、近年はそうした内面を率直に発信。

精神疾患に対する偏見や「生きづらさ」への理解を広げる活動にも力を入れている。

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