

日本から台湾へ戻って、3日間の隔離+4日間の自主防疫を終えたひろみさんと私。ちょうど同じような時期に終了したので、「シャバだぜ~」と一緒に昼飲みをしてきました。
つまみのような料理ばっかのくせに、お酒を置いていない店が多い台湾。特に昼からじっくり飲める店なんてなかなかないのですよ。
「大丈夫!『世界的山將』なら、昼から腰をすえて飲めるわよ! 台湾に住む日本人たちの御用達よ」
『世界的山將』? ああ! それは名古屋発祥の居酒屋『世界の山ちゃん』! 名物の手羽先をしゃぶりながらハイボールをグビグビ、よもやま話に花が咲きました。そんななか、ひろみさんがポツリ。
「ねぇ、このレシピの連載、私でいいのかな? 家で作ってるものもあるけど、初めて作ってみた料理も実はあるのよ」
ひろみさんのレシピはどれも台湾を感じさせてくれるもの。作ったことのない料理だってかまやしないんです。そこにはちゃんと「台湾」があるから。それにレシピだけじゃなく、大事なのはひろみさんとその料理の思い出なんです――と熱弁を奮ったら、少し安心してもらえたようで、今回のレシピの案が浮かびました。
それが「肉羹(ロウゲン)」。豚肉に魚のすり身をまとわせたとろみスープです。
実はひろみさんのレシピで初めて、「あのボコボコした変なヤツは、魚のすり身だったのか」と知りました。見ても食べても「肉? 魚? なんじゃこりゃ」な弾力のある不思議な物なんです。台湾にはこの肉羹のお店が多く、私の家の近所にも3軒あります。
「なんじゃこりゃ? に賛成(笑)。むかし実家で義母と一度作ったくらいだけど、豚肉と魚を合わせた面白い料理なので印象には残ってるの。挑戦してみるわ!」
* * *
魷魚肉羹(スルメイカと肉とすり身のとろみスープ)
●材料6名分 所要時間60分(+するめの戻し半日)
スルメ(乾物) 1枚
豚ヒレ肉 300g
魚のすり身 300g
干しシイタケ 4枚
カツオ節 小分けパック4袋
パクチー 適宜
<豚ヒレ肉の漬けダレ>
砂糖 大さじ 1
酒 大さじ 1
醤油 大さじ3
白コショウ 小さじ4分の1
<調味料>
ほんだしなどのカツオ出汁粉 大さじ1
塩 小さじ1
砂糖 大さじ 1
黒酢 適宜
水 1.5リットル+α(干しシイタケの戻し用、とろみ用)
片栗粉 大さじ1
●作り方
<下準備……乾物の戻し>
スルメ……軽く洗い、1✕5センチ幅にハサミで切って1.5リットルの水に入れて半日くらいかけてもどす
干しシイタケ……多目の水に1時間ほど入れてもどし、5ミリ位の細切りにしておく
※それぞれ戻し汁は残しておく
1. 豚ヒレ肉を1センチくらいの細切りにして、漬けダレ(砂糖、酒、醤油、白コショウ)に15分くらい漬ける
2. 1に片栗粉大さじ1を混ぜ合わせてから、魚のすり身を豚ヒレ肉にからませるように混ぜる
3. スルメと干し椎茸をもどした水を鍋に入れて沸騰させ、2の魚のすり身を絡めた豚ヒレ肉をひとつずつ入れていく。浮き上がってきたものから引き上げる
4. 肉を全部引き上げたら、3の鍋に戻したスルメ、干しシイタケを入れて10分ほど中火で煮る
5. カツオ出汁粉、塩、砂糖、黒酢を入れる
6. 水溶き片栗粉(水200cc+片栗粉大さじ1)を回し入れ、スープにとろみを付ける
7. 3の肉を鍋に戻し、カツオ節を振りかける
8.スープ皿によそい、お好みでパクチーや黒酢をかけて召し上がれ
★日本人妻ひろみさんのワンポイントアドバイス
・魚のすり身がスーパーになければ、はんぺんで代用。ミキサーもしくはフードプロセッサーですり身状に。ぶんぶんチョッパーやすりこ木でもいいし、どうしてもなければ手で頑張ってもんでみて! 肉にからむようにやわらかく潰してね。まとまり感がなければ、粘りがでるように片栗粉を適宜足して
・スープの味付けに「黒酢 適宜」とありますが、入れすぎると片栗粉のとろみがつきにくくなります。5の段階では少量にしておいて、食べるときに追加して調整するといいかも
・カツオ出汁粉は大さじ1にしたけど、味を見ながらお好みの濃さにしてOK!
・干しシイタケの戻し時間は、お湯を使えば短縮できます
* * *
久しぶりに作ってみたひろみさんの感想は「すり身をからめた豚肉は一度茹でて取りだしておくんだったわね、と思い出しました。義母と作ったときは、スープへ直接入れていって、浮いたら完成だったかも」。ご家族たちは「ママでも作れるんだねぇ」ですって。
大半のお店では、茹でるところまでを大量にやっておいて、注文に合わせてスープに投入しています。ショーケースのなかに盛られた様子を見ることも。
スルメを入れない肉羹もベーシックですが、スルメを入れたのは、ひろみさん一家が実家へ帰省するときに必ず立ち寄るお店がベースになっているから。
「台湾中部の鹿港(ルーガン)にある、行列店『鹿港肉焿泉(ルーガンロウゲンチュェン)』よ。美食家だった義父は、地元の市場では飽き足らず、食材を探しに鹿港まで足を伸ばしてたの。その時にたまたま寄ったこのお店が美味しくて、今では我が家のコンフォートフードに」

肉羹を注文するときには、白米、ビーフン、冬粉、麺などを追加できます。私は白米を入れて雑炊っぽくいただくのが好み。ビーフンも伸びにくいので捨てがたい。でもひろみさんは、『鹿港肉焿泉』では何も入れずにスープだけを楽しむそう。やっぱりそのままの味がいいから?
「違うのよ。このお店の隣には美味しい麵線のお店『王罔面線糊』があるからなのです! おなかを空けておかなきゃ」

白米やビーフンを入れると、それだけで満足でる一品料理ですが「日本だったらおにぎりや稲荷寿司に合わせるのもいいわね」とひろみさん。
「私はパクチーたっぷりに、黒酢フリフリが好き。出汁の味がしっかりしているので、日本人の口にも合うはずよ」
魚のすり身をまとった豚肉の、ブリンブリンとした不思議な食感とともに、お楽しみください。
【日本人妻ひろみさんプロフィール】
約30年前に台湾人の夫に嫁ぎ台湾へ。料理上手のお姑さんに鍛えられ、台湾料理を学ぶ。料理能力ほぼゼロからメキメキと腕を上げ、台湾料理と日本料理で4人の子供のお腹を満たす立派な媽媽(ママ)に。スイーツも得意で、台湾人向けのスイーツ教室も開講。
台湾で作った、食べた料理や景色を紹介→Instagram
クロスカブでのツーリングやキャンプの体験動画→YouTube
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