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アルテイシアの59番目の結婚生活

2020.05.18 更新 ツイート

俺の考えた最強の老後計画アルテイシア

5/8発売『まるごと 腐女子のつづ井さん』の解説を書かせてもらった。

本書は累計50万部突破の『腐女子のつづ井さん』シリーズを文庫化したものである。

 

「大好きな つづ井さんとの お仕事に たかぶるパッション 我ウレション」と短歌を詠む我は、以前からつづ井さんの漫画のファンである。

オンラインサロン「アルテイシアの大人の女子校」のオフ会で「つづ井さんの漫画、好きな人~?」と聞いた時も、ほぼ全員が挙手していた。

僭越ながらそんなファンを代表する気持ちで、つづ井さんの魅力を解説させてもらった。拙いJJ(熟女)ラップも披露しているので、読んでもらえると嬉しい。

改めて、私はなぜこんなにつづ井さんが好きなのか? と考えると、女の友情とシスターフッドが描かれているからだと思う。

つづ井さんと同様「彼氏がいなくても、女友達とオタ活して毎日ハチャメチャに楽しい~~!!」という女子が私の周りには大勢いる。

つづ井さんはそんな彼女らから圧倒的な共感と支持を得ている。「やっぱ推しと女友達がいれば、人生って幸せだよね!」と再確認できるからだろう。

昨今はシスターフッドを描いたコンテンツが人気だ。

たとえば『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』の阿佐ヶ谷姉妹も女性ファンが多く、「ああいう生き方に憧れます」「理想のJJライフですよね」と語る若い女子が多い。

そうした声を聞くと、時代は変わってきているな、と感じる。

ひと昔前なら、阿佐ヶ谷姉妹は「イタい負け犬おばさん」みたいにメディアに消費されただろう。

それがこれだけ女子に愛されて、憧れや理想と言われるのは、「結婚出産=女の幸せ」という呪いから解放される女子が増えたからだろう。

かつては「恋愛・結婚・出産は三点セット」「この三つをコンプリートするのが女の幸せ」というジェンダーロールが根強かったが、昨今は「幸せの形は人それぞれ」と多様性が広まりつつある。

それは弊女子校のメンバーと話していても実感する。

「私はもともと男いらずの完全生命体タイプだけど、『こんな自分は欠陥があるのかも』『やっぱり結婚するべきか?』と悩んでました。でも女子校で同じような仲間と出会って『べつに結婚しなくていいや』と思えたんです」

「結婚のプレッシャーから解放されて、宿便が出たみたいにスッキリしました!」と語る彼女らの笑顔を見ると、私もでかいウンコが出たみたいに嬉しくなる。

また「一応、20前半は結婚に夢や憧れがありました」と語るメンバーも多い。

「でもアラサーになって、周りに離婚する友人や、不幸な結婚生活を送る友人が増えたんですよ。夫のモラハラとか借金とかワンオペ家事とか、そういう話を聞いて『結婚したからって幸せじゃない』と現実に気づいたんです」

結婚に失望した彼女らは、むしろ「女は男がいなくても幸せになれる」と気づいて楽になったし、人生に希望が持てるようになった、と語る。

そんな彼女らが共通して言うのは「デンデラがあると思うと生きていけます!」という言葉だ。

つづ井さんの漫画にも「わたしのかんがえたさいきょうの老後」として、友人たちと暮らすシェアハウスの構想が描かれているが、我々も「老後は女だけのデンデラで暮らそう」と話している。

「BL図書館やシアタールームや土俵がほしい」「保護猫を飼いたい」と希望を出し合っていて、最近は「屋上に露天風呂がほしい」「庭にプールがあるといいかも」とセレブみたいなこと言い出す者もいる。

2兆円さえあれば……!! だが、とにかく皆でお金を出し合って、支え合って暮らしていきたい。

弊女子校には既婚や子持ちのメンバーもいるが、女は寿命が長いため、最後はシングルになる可能性が高い。なので未婚も既婚も子ナシも子持ちも、みんなで年をとっていこう、と話している。

また先頃「大人の互助会LINEグループ」も発足した。
これは「いざという時に支え合えると、安心だし心強いよね」という趣旨で、病気・事故・震災・入院・手術などの際に、希望者同士でサポートしあうグループである。

今後さらに高齢化が進めば「丸一日ログインしてなければ生存確認する」等のシステムも導入していきたい。

このアルテイシアには『夢』がある!

と、私は中学生の頃から友達に話していた。将来は女だけで暮らす女子寮を作りたいと。

『クララ白書』や『アグネス白書』に憧れていたのもあるが、思えば小学生の頃から少女怪盗団が共同生活する物語を書いていた。そんな私の前世は、ガチで尼寺で暮らす薫尼(くんに)だったのかもしれない。

ガチ薫尼説もあるが、やはり一番の理由は、毒親育ちで頼れる家族がいなかったからだ。

私はずっと「結婚」がしたいんじゃなく「家族」がほしかった。毒親育ちで心が傷だらけだっため、安心して休める場所がほしかった。
そして運よく夫と出会って15年暮らすうちに「傷は癒えた!!」と言えるラオウ状態になった。

現在の私は「もし夫が死んだら二度と結婚しないな、もう男はいらないや」と思っている。四十を過ぎて、男いらずの完全生命体に近づいたのかもしれない。

なにより今の私には「俺の考えた最強の老後計画」がある。その実現に向けて、こつこつと金勘定する日々である。

そんなこんなでコロナでござる。今回の政府の対応を見て「老後も国には絶対頼れねえ」と確信した人は多いだろう。

私も「あれだけ莫大な予算をかけて、黄金のマスクじゃなかったらパーフェクト狂人になって暴れたる」と意気込んでいたが、いまだに貝殻ビキニみたいなマスクすら届かない。

そんなコロナ自粛中も、女子校メンバーとオンライン飲み会やグループチャット会で交流している。2か月近く夫以外と会わない生活で、それがなければ狂を発していただろう。

最近流行っているのは、『バチェラージャパン3』を同時視聴しながらバチェラーの悪口を言いまくるグループチャット会だ。

皆で悪口に花を咲かせつつ「自粛が明けたらドレスアップしてカクテルパーティーしたいね、バチェラー(男)抜きで」「それ絶対やろう!」と盛り上がっている。

以前「女性専用の街があったらいいのに」というツイートに、女性陣から賛同の声が寄せられた。

その一方で「男性差別だ、ミサンドリーだ!」とキレる男性陣の声もあったが、このツイートに込められたのは「女を狙った加害に怯えずに暮らしたい」というシンプルで切実な願いだ。

私の初めての性被害は、5歳の時だった。商店街のオモチャ屋でチョロQを見ていた時、店主の男に体中をベタベタ触られたのだ。

その後、近所のお母さんが「うちの娘から聞いたのよ、あのオモチャ屋の店主に体を触られたって」とうちの母親に話していた。

母から「あなたも触られたの?」と聞かれた私は「ううん」と否定した。子どもは怖いことがあると親に隠そうとするから。

当時は性被害と認識していなかったけど、私は怖くてそのオモチャ屋に行けなくなった、チョロQはめっちゃ欲しかったけど。

女同士で話していると、ほぼ全員が子どもの頃に性被害を経験している。痴漢や露出狂や盗撮などの被害に遭って「親には話さず隠していた」という女子がほとんどだ。

アラサーの女友達は「小学生の時にプールで痴漢に遭って、私もそれ以来プールに行けなくなりました」と話していた。

子どもの頃から性被害に遭い、大人になっても痴漢やセクハラやストーカー被害に遭う。これが多くの女性が生きている現実なのだ。

3月下旬、昼間に近所を歩いていると、50代ぐらいのおっさんが突然近づいてきて「わああああああ!!」と叫んだ。
私は一瞬フリーズした後に「ぶっ殺すぞ!!」と怒鳴ったが、おっさんはもう走り去っていた。

ぶつかりおじさんと同様、女に嫌がらせをしたい、女を怯えさせたい男が存在する。うちの夫はそんな被害に遭わないし、もし私が夫と歩いていたら被害に遭わなかっただろう。

統計を見ても、性犯罪被害者の9割以上が女性であり、加害者の9割が男性である。

生まれてから40年間、犬に噛まれ続けたら「犬に近づきたくない」と思うのが自然だろう。それは差別じゃなく、トラウマ反応だ。自己防衛本能からアラームが作動するのだ。

「噛まない犬もいる」と言われても、こちらには見分けがつかないし、昼間に近所を歩いているだけで噛まれたら自衛のしようもない。

「街で男が近づいてきたら身構える」と言うと「自意識過剰だ」「男を犯罪者扱いするな」と責められて、実際に被害に遭うと「なぜ自衛しなかった」と責められる。

そんな国で「女性専用の街がほしい」と言って、何が悪い。男が近づいてきたら袈裟切りにするとかじゃなく、ただ近づきたくないだけなのに。いつ誰が襲ってくるかわからない世界で、ただ安全に暮らしたいだけなのに。

そう訴える女が気に入らないなら、無視すればいい。「俺たちを必要としろ!」とか言われても困るし、男同士で愉快にチャンバラとかすればいい。

女性専用の街ツイートに「女だけで力仕事はどうするんだ!」とクソリプがついていたが、大仏を建立するわけでもあるまいし、今は機械を使って大仏建立できるし、つかそもそも大仏いらねえし。

私は中高と女子校に通っていたが、男がいなくて困ったことは一度もなかった。重いものはみんなで協力して運んだし、プールの時間はのびのびとキン肉バスターをかけあっていた。

女子校がパラダイスなわけじゃない。でも女だけの世界では「女」じゃなく「人間」として生きられた。

だから私は共学の老人ホームには入りたくない。ババアになってジジイに偉そうにされたら「もうすぐ死ぬし、まあいっか」と袈裟切りにしてしまいそうだし。

女子校メンバーも「私も共学の老人ホームはイヤです、夜這いとかされそうだし。未完通なのに80過ぎて貫通したら、ショック死すると思うんですよ」と話していた。

そんなわけで、不動産や建築関係のメンバーと「どんな物件が理想かな?」「企業の元女子寮をシェアハウスにする例もありますよ」と話し合い、医療関係のメンバーからは「老人ホームも余ってくるので、それを買い取ってデンデラにするのもいいかもしれません」と意見をもらっている。

2兆円あればプールも作れるが、おばあさん同士でキン肉バスターをしたら多分死ぬので注意したい。

寂しがりやの私は老後は気の合う仲間と暮らしたいが、1人で静かに暮らしたい人もいるだろう。

吉良吉影は性癖がそれを許さなかったが、pixivで満たせる人だったらイケるだろう。人との交流がほしくなれば、ネットで趣味や価値観の合う人とつながればいい。性癖を語りまくるグループチャット会も楽しそうだ。

多様性社会とは、人の生き方を邪魔しない、余計な口出しをしない社会である。

「私は私の好きに生きる!」という女子が増えている日本で、未来は多種多様なデンデラが存在するかもしれない。それを見るのが楽しみだし、だったら長生きするのも悪くないかもな、と思う。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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