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アルテイシアの59番目の結婚生活

2020.06.18 更新 ツイート

夫をぶっ殺さないためのライフハックアルテイシア

水無月 股間が蒸れて かゆいかな

そんな句を読みたい季節がやってきた。ウィルスは粘膜感染するので、無防備に股をかきむしらないよう注意したい。

緊急事態宣言があけて、日常生活が戻りつつある。私の周りは「二度と出勤できる気がしない」「一生リモートでやりきりたい」という人々が続出である。

私は在宅歴15年の物書きなので、コロナ自粛中も生活はほぼ変わらなかった。一方の夫はリモートできない仕事なので、普段通り出勤していた。

もし夫がずっと家にいたら「俺を1人にしてくれ……!!」と叫んで、エレキギターを叩き壊したかもしれない。

 

アントワネット先輩のように、自宅の部屋数が700以上あれば「1人になりたければ、自室で無人島開発すればいいのに~~」と余裕である。けれども3LDKのマンション暮らしであれば、顔を合わさないわけにいかない。

自粛生活によって夫婦ゲンカやDVが増えた、という話は他人事じゃない。普段は仲のいい夫婦ですら、密室に閉じこめられるとストレスがたまるもの。

私は完全な1人暮らしは寂しくて死ぬけど、1人の時間がないと死ぬ。というスペランカー並みに死にがちな人間だ。

よって夫がずっと家にいたらイライラして死ぬだろう。幸いインドア派の妻に対して、夫は多趣味で外出好きのオタクなので平和に暮らせている。

「定年後、無趣味な夫がずっと家にいてウザい」と嘆く妻は多い。

JJ(熟女)仲間からも「母が外出すると父が不機嫌になる」「母の外出に父がついていきたがる」「いつか母が父を殺すんじゃないかと心配」といった声が寄せられる。

ババアがジジイを血祭りにしないためにも、無趣味な父親にはどうぶつの森とか買い与えるのがいいかもしれない。

我が夫は「退職後はカッパを探しに行きたい」というアクティブな奇人である。

彼は若い頃に『野人発見』というムービーを撮っているので、「ユーチューバー教室に通ったら? 小学生の友達ができるかもよ」と勧めている。

共通の趣味を楽しむ夫婦も素敵だが、うちは別行動派、混ぜない派の夫婦である。

お互いに好きなことをして束縛も干渉もしないし、お互いの友人を紹介したりもしない。我々にはそれが合っているので、やはり夫婦はマッチングだと思う。

「結婚向き」「結婚向きじゃない」とよく言われるが、結婚は単なる箱で、中身は50年の共同生活。他人が決めた形に合わせるんじゃなく、自分たちに合った形にカスタマイズすればいいのだ。

そして、それには話し合い&歩み寄りがマストである。

話し合いができない人と50年暮らすのは無理ゲーだ。

不満を述べるヒロインの唇を強引にふさぐみたいなやつは、二次元でしか許されない。「いいからもう黙って」とCV子安武人に囁かれたらトゥンクだが、リアルでやられたら頭突きする。

「話し合いができるパートナーかどうか見極めるために、結婚前にお試し同棲しました」
「それでケンカやすれ違いが起きた時、ちゃんと話し合って歩み寄れる人だと確認してから、婚姻届けを出しました」

そんなふうに語る女子たちは、対等に尊重しあう夫婦関係を築いている。

「それでも、たまにぶっ殺したくなりますけど」という言葉に「わかる!」と膝を打ち鳴らしてパーカッションする我である。

私も新婚当初はよくブッコロ助になっていた。年月を重ねるにつれブッコロ化しなくなったのは、アサーティブな話し合いのコツを身につけたからだろう。

たまには夫婦コラムっぽく、それらのライフハックをシェアしたいと思う。

始めに断っておくが、性別の前に個人差がある。「男はこうだ」「女はこうだ」と決めつけるのはジェンダーバイアスだし不適切だ。
という前提のもと、あくまでいろんな夫婦の話を聞いた上での「あるある案件」として語りたい。

古より男女間では「なんで察してくれないの? 言ってくれなきゃわからないよ! 戦争」が続いてきた。

一般的に男性は女性よりも感情を察するのが苦手で、言葉で説明しないと伝わらないケースが多い。そのため、わが家では「察して禁止令」を導入している。

かつては私も「キエエエエーッ」と奇声を発するなど、猿っぽいコミュニケーションをとっていた。しかしそれでは1ミリも伝わらないし、ウンコを投げ合う泥仕合になってしまう。

そこでアサーティブな話し合いの基本として「自分を主語にする」「素直な感情と具体的な要望を伝える」を心がけるようにした。

たとえば「なんであなたは○○するの?!」じゃなく「私は○○されると悲しい、××してくれると嬉しい」という具合に。

不満を感じた時は怒りをぶつけるんじゃなく、「悲しい、つらい、寂しい」といった自分の感情を説明する方がうまくいく。

また「話し合いはスキンシップしながら」もルールにしている。手をつないだりハグしながら話す方が愛情が伝わって、ギスギスした空気にならないから。

かつての私は「キエエエエーッ」とキレるたびに「お前はこのディオにとってモンキーなんだよジョジョォォォーッ!!」と子安ボイスで自分を責めていた。

結婚後はモンキー化を防ぐために、キレそうな時は自室に避難して、頭を冷やすことにした。そして自分の心を見つめるために、文章に書いて整理することにした。

その整理した内容をメールで夫に送るようにしたら、コミュニケーションがうまくいくようになった。会話より文章で伝える方が理解が深まる場面は多い。

こうした工夫もしたけれど、私がキレなくなった一番の理由は、夫のアナルが広大だからだ。

毒親育ちの私は親に否定やダメ出しをされ続けて、心が傷だらけだった。

「これ以上傷ついたら死ぬ」という不安や恐怖から、相手の些細な言葉にも「あなたも私を攻撃するの?!」と過剰反応してしまい、感情大爆発が起こっていた。

つまり「キエエエエーッ」とキレる時の私は怒ってるんじゃなく、トラウマ反応によるパニック状態だったのだ。

心に7つどころか700以上の傷を持つ女だった私に対して、アナルガバ太郎(カレー沢先生命名)は一切ダメ出しをせず、「ウンコを漏らしてこそ一人前だ」と全肯定してくれた。

そのおかげで「傷は癒えた!!」と言えるラオウ状態になったのだ。

またアナル&ガッバーナな夫(カレー沢先生命名)は会話力と共感力が高い人なので、助かっている。

「うちの夫は会話力と共感力が低いんですよ。言葉のコミュニケーションが苦手で、他人の感情がわからないタイプなんです」と話す友人たちもいる。ちなみに彼女らの夫は高学歴の理系オクテ男子が多い。

そんな彼女らに話し合いのコツを聞くと、「話の構成をわかりやすくする」との答えが返ってきた。

夫の言動に不満や怒りを感じた時は、
「私は今、怒ってます。その理由について説明します」
「これはあなたを責めたいわけじゃなく、2人の関係をもっと良くするための会話です」
と最初に説明するという。

というのも、こちらの言いたいことをバーッとしゃべると、夫は「結局何が言いたいの??」と混乱して、頭の整理が追いつかないらしい。

また「責められる」と思うと反射的に防御や反論をしがちなので、最初に話し合いの目的を伝えるんだとか。

そのうえで「私はあなたの言動によって、こうこうこういう気持ちになった」と怒りの理由を説明して、「今後は再発防止のために、これこれこうしてほしい」と具体的な要望を話すそうだ。

面倒くせえな、いちいち説明しなくてもわかれや、と正直思う。女同士なら言わなくても大体わかるからだ。

けれども男女間で戦争を回避するためには、粘り強い対話が不可欠。

「いちいち説明しなくてもわかれや!」とキレると「え、なんでそんなに機嫌悪いの? 生理?」とトンチキな返しをされて「ぶっ殺すぞ!!」と流血の惨事になりかねない。

基本、女同士の会話は阿吽の呼吸でポンポン進むことが多い。

独身時代、元彼と共通の女友達と飲んだ時、元彼が全然会話に入ってこなかった。
あとから「なんで全然話さなかったの?」と聞くと「そもそも聞き取れなかった」と返されて「ヒアリングすらできないのか……!」とびっくりした。

女同士の会話と比べない方が、男女間はストレスが少ないと思う。たとえば、女性は愚痴コミュニケーションが得意だ。

「ストレスで食べ過ぎて太っちゃった」と話した時、女同士なら「なんでストレスを感じてるの?」「上司がクソなんだよね」と阿吽で会話が進んでいき、「そっか、それはつらいね、大変だね」と愚痴を聞いてもらってスッキリする。

そのうえ「がんばってて偉いよ!」と褒めてもらって元気百倍、感謝の気持ちに包まれる。

一方、彼氏に「ストレスで食べ過ぎて太っちゃった」と話すと「食べる量を減らして運動した方がいいよ」と返ってきて「知ってるわ」と阿修羅顔になる。

それでも「仕事のストレスが原因で、上司がクソなんだよね」と続けると「だったら別の上司に相談すれば?」とぶった切られて「ぶっ殺すぞ!!」とブッコロ助が発動するのだ。

相手はよかれと思ってアドバイスするのだが、こちらは「そんな一言で解決するぐらいなら悩んでないし、なんでちゃんと話を聞いてくれないの? 面倒くさいの?」とストレスが加速して、さらに太る。

みたいな例を女性陣に話すと「わかる!」と膝パーカッションでライブが始まる。

男性の多くはこちらが求めていることがわからないのだ。

よって、女友達は夫に「今から愚痴を言います。アドバイスとかいらないので『それはつらいね、大変だね』botになって聞いてください」と前置きして話すという。

ウンコと同様、ネガティブな感情をためこむと病気になるため、言葉で吐き出した方がいい。

女同士は愚痴を言い合って、「わかる」「つらいよね」と理解・共感し合うことでストレス発散できる。

女同士と比べて、男同士があまり愚痴を言い合わないのは「男は弱音を吐くな」「弱みを見せるな」「男は黙ってサッポロビール」的なジェンダーの抑圧があるのだろう。

また自己開示すること、感情を言葉にすることが苦手な男性は多い。それは「感情より理性を優先すべき」と刷り込まれて、自分の心を見つめた経験が少ないからじゃないか。

自分の感情がわからないと、他人の感情もわからない。自分の感情を大切にしないと、他人の感情も大切にできない。感情を言語化できないと、他人と理解・共感しあい、深いつながりを築くことも難しい。

『父親を殺した犯人は誰だ?』に書いたが、うちの父も男らしさの呪いのせいで自殺したのだと思う。

とはいえ、昨今は希望を感じることもある。若い世代には男らしさに縛られない、ジェンダーイコール男子が増えている。

「かわいいものが好き」「美容やメイクに興味がある」「体育会系ノリは苦手」「仕事よりプライベート重視」、そんなふうに話す彼らが男同士でキャッキャウフフおしゃべりする姿を見て「尊い……冥途の土産にしよう……」と合掌する我である。

なんでも冥途の土産にしたがるのはJJあるあるだが、冥途に旅立つまでは平和に暮らしたいもの。

私もせっかくなら夫と共白髪になるまで仲良く暮らしたい。ちなみに私は股白髪がヤバいが、夫の股間に白髪は1本もない。

そんな違いはありつつ円満に暮らす我々だが、かつては価値観の違いでぶつかることもあった。

「陰茎、覚悟!」と夫のチンポを斬り落とさないために、夫婦円満ライフハックを探求してきたので、次回はそれについて書きたいと思う。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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