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ルポ シニア婚活

2019.09.18 公開 ツイート

85歳女性も!終活としてのシニア婚活パーティー 篠藤ゆり

還暦を過ぎてなお、人生最高の伴侶を求めるシニア層のリアルな姿を追った、幻冬舎新書『ルポ シニア婚活』(篠藤ゆり・著)。

2019年9月26日発売予定の本書から一部を公開。

酷暑の日、宇都宮駅前のホテルで開催された、シニア婚活パーティーを取材した篠藤氏。

85歳の女性はボーイフレンドを求めて参加し、75歳の男性は「この年齢での婚活は終活でもある」と語った。

婚活パーティーに集うそれぞれの事情が浮き彫りとなる。

*   *   *

(写真:iStock.com/TakakoWatanabe)

地方での婚活を応援する太陽の会

地方を拠点に多くの成婚実績をあげているのが、中高年向けの結婚相談をおこなう民間福祉団体・太陽の会だ。

本部は宇都宮にあり、札幌、仙台、東京に支部がある。

民間福祉団体という名称どおり、営利団体ではなく、それぞれの支部の責任者がボランティアに近いかたちで会の運営をおこなっている

太陽の会本部会長で宇都宮代表の斎藤尚正さんがこの仕事をはじめたのは1992年のこと。

宇都宮に支部をつくらないかという話をもちかけられたことがきっかけだった。

「お話をいただいたときは、正直こういう活動にちょっと暗いイメージをもっていたので迷いました。

当時は『老婚』などと呼ぶ人もいましたし、地方ではとくに、歳をとってからの結婚なんて堂々とはできない、といった風潮もあったのです。

ですから、まずは現場を見せていただきたいとお願いして、東京や仙台で婚活の懇親会を見学しました。

そうしたら参加者の皆さんは、すごく前向きで明るいんです。これならやっていけると思って、お引き受けしました」

約30年の間に世間のイメージも変わり、いまやシニア婚を前向きにとらえる人が増えてきている

 

シニア婚活は終活でもある

太陽の会ではお花見や紅葉狩り、バーベキューなどのバスツアーも行っているが、おもな活動の場は月に1回開催される懇親会だ。

そこで宇都宮での懇親会を見学することにした。

宇都宮駅前。(写真:iStock.com/Yuthongcome)

宇都宮駅前のシティホテルの小宴会場に到着すると、会場には丸テーブルが5つ置かれ、窓際にはバイキング形式で料理や飲みものが用意されている。

この日の参加者は、男性10人、女性5人。

当初は女性があと2人参加する予定だったが、気温が35℃になるという予報もあり、直前にキャンセルが出た。

宇都宮は内陸地だけに、夏の暑さは半端ではない。年齢的なこともあり、酷暑のなか無理はしたくないという方が出るのも、いたしかたないだろう。

 

懇親会は、丸テーブル1つにつき1人座っている女性は席を動かず、男性が2人ずつ各テーブルを移動するかたちで進められる。

年齢は、女性の最年長が85歳で、一番若い人が62歳。男性は上が75歳2人で、下は体験参加の方で57歳。

まずは1人ずつ前に出て自己紹介するところから懇親会はスタートした。

印象に残ったのは、75歳になる藤田忠雄さん(仮名)が自己紹介で語った「この歳での婚活は、終活でもある気がします」という言葉だ。

残りの人生を、どう生きるか。シニア婚活は、「自分の人生をどう締めくくるかを、前向きに自分で選ぶ」行為なのかもしれない。

(写真:iStock.com/Ridofranz)

 

パートナーを探す者どうし、本音で話せる

いくつかのテーブルにおじゃましたが、こちらから質問すると、ほとんどの人が率直に答えてくれた。

女性のなかには、いい相手と出会えてボーイフレンドをつくることができたらラッキーだし、もし見つからなかったとしても、おしゃれして男性と会話する時間があるのが楽しい、と話す人もいる。

この日最年長の参加者・北村靖子さん(85歳・仮名)も、そんな感じだ。

とてもおしゃれで華やかな雰囲気をかもしだしており、若いころはさぞかし目立つ存在だったにちがいない。

「最初の結婚はお見合いです。かたい職業の人だということで、親からもまわりからも勧められて結婚しましたが、じつは酒乱でした

子どももいたので20年がまんしましたが、40歳で離婚。それから銀行でお金を借りて、ブティックをはじめました。

43歳で再婚しましたが、80歳のときに夫に先立たれてから、さみしくてうつ状態になり──娘がインターネットで調べて、『こういう会があるよ』と教えてくれたんです」

娘さんは外国人と結婚し、遠く離れて暮らしている。1人で暮らしている母親のことが心配だろうし、年配者の恋愛に理解がある海外の文化を知っている分、「いい歳をしてみっともない」などといった固定観念がないのかもしれない。

(写真:iStock.com/glowonconcept)

もちろん大半の出席者は、真剣に結婚相手を探していることは言うまでもない。また、求める相手像もそれぞれちがう。

たとえば体験参加の秋葉忠義さん(62歳・仮名)は、15年前に離婚。

飲食店を営んでおり、できれば店の仕事をいっしょにやってくれる女性と結婚したいと、希望を語っている。

「こういう会があることは、以前から知っていました。でも懇親会がひらかれるのは、たいてい週末ですから。うちは週末も営業しているので、参加できなかったんです。

かといって、いわゆるお見合いはちょっと“重い”気がして。一日伸ばししているうちに、気がついたら60を過ぎていた。

真剣に先のことを考えなくてはいけないと思い、お店を休んで参加しました

スポーツが好きでスポーツジムにも頻繁にかよっている中林昇さん(64歳・仮名)は、この日もテニス帰りに懇親会に参加した。

「ジムで『結婚相手を探している』とか、『1人でいるのはさみしい』なんて言ったら、エロジジイと思われるのがオチ。みんなから引かれてしまう。

でもここは、本気でパートナーを探したいと思っている人の集まりだから。本音で話せるから、気がラクなんです」

1対1で話すより緊張感がないからなのか、皆さんざっくばらんに話している。

ただ、会話が苦手な人にとっては、こうしたグループでの懇親会はハードルが高いかもしれない。

男性最年少でこの日体験参加だった57歳の小山幸三さん(仮名)は、終始無表情でほとんど会話に参加していなかった。

私がなにか質問するとむっとした表情で、「言いたくありません」という答えがかえってきた。

 

連絡は事務局を通して

太陽の会では、参加者どうしが交際前に直接連絡先を交換することを、原則的に禁じている

気になる人がいたら、それぞれの支部の代表に連絡し、相手の反応をたしかめてもらうことになっている。

(写真:iStock.com/samxmeg)

「うちは、いい意味であるていど介入していく方針です。会員一人ひとりをちゃんと見て、幸せになれるかどうかを見きわめる責任があると思っていますので。

人によっては、このルールを『管理されている』と感じるかもしれません。

でも、皆さんが幸せになるためのルールだからと説明し、ご了承いただける方に入会してもらっています」(斎藤さん)

もちろん、なかには内緒にしてこっそりつきあいを始める人もいないでもない。

「その結果、過去にトラブルになった人も何人かいます。どちらかというと、男性が女性にだまされるケースが多いですね。

女性からお金を貸してほしいと言われて貸してしまい、戻ってこなかったケースが、過去数件ありました。

男性は、お金を貸せば自分の思い通りになると思ったのでしょう」(斎藤さん)

ひとくちにシニアを対象とした結婚相談所、あるいは結婚情報サービスといっても、あくまで出会いを提供し、そこから先は自己責任というスタイルのところもあれば、一昔前のいわゆる仲人さんみたいな感じで事務局が介入していくスタイルのところもある。

どちらが自分に向いているかは、それぞれ好みやライフスタイル、性格などによって変わってくるだろう。

篠藤ゆり『ルポ シニア婚活』

暦を過ぎて子どもがほしくなり31歳スリランカ人と成婚した61歳男性。ピースボートの船上で72歳男性にプロポーズされた80歳女性。人生の酸いも甘いも噛み分けた世代の婚活には、複雑多岐なしがらみがあり、ゆえに結婚の暁には極上の喜びに変わる。本書では多くのインタビューから見えてきたシニア婚活の実態と成婚への道筋を紹介。恋愛感情は必要か? 子どもをどう納得させる? 「後妻業」への防衛策は? 幸せな老後、幸せな最期を求める人々の愛の記録。

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ルポ シニア婚活

2019年9月26日発売の幻冬舎新書『ルポ シニア婚活』(篠藤ゆり・著)について、最新情報をお知らせします。

還暦を過ぎて子どもがほしくなり31歳スリランカ人と成婚した61歳男性。

ピースボートの船上で72歳男性にプロポーズされた80歳女性。

65歳以上の独居人口は620万人を超え、伴侶を求めるシニアも増加の一途。

だが人生の酸いも甘いも噛み分けた世代の婚活には、複雑多岐なしがらみがあり、

ゆえに結婚の暁には極上の喜びに変わる。

 

本書では多くのインタビューから見えてきたシニア婚活の実態と成婚への道筋を紹介。

恋愛感情は必要か? 子どもをどう納得させる?「後妻業」への防衛策は?

幸せな老後、幸せな最期を求める人々の愛の記録。

 

●毎晩のLINEで愛を育んだ70代&60代カップル

●相続から性生活まで、具体的希望をすりあわせ

●「貯金を相手の家族のために使われるのが怖い」63歳男性

●国際結婚に期待を寄せる女性不信の外科医

●「子どもがほしい」裕福なシニア男性たち

●パートナーがいる幸福感はほかでは埋められない

●シニア婚活が招いた親子の亀裂

●どちらかが逝った後まで想定しておく

●お墓をどうするか ……など

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篠藤ゆり ライター

福岡県生まれ。国際基督教大学教養学部で美術史を学び、卒業後コピーライターとして広告代理店に勤務。退社後、世界各地を旅する生活をへて、1991年「ガンジーの空」で海燕新人文学賞受賞。「婦人公論」のグラビアなど女性誌を中心に人物インタビューを多数手がける。著書に最新刊『ルポ シニア婚活』のほか、『旅する胃袋』(幻冬舎文庫)、『食卓の迷宮』『音よ、自由の使者よ。―イムジン河への前奏曲』、また聞き手として携わった『岡本太郎  岡本敏子が語るはじめての太郎伝記』(いずれもアートン新社)がある。

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