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ルポ シニア婚活

2019.10.17 公開 ツイート

「シニアカップルに絶対必要なのは性の一致」結婚相談30年のプロは見ていた 篠藤ゆり

地方を拠点に中高年向けの結婚相談をおこなっている民間福祉団体・太陽の会。

本部会長で宇都宮代表の斎藤尚正さんは、これまで30年近く、シニア婚活の現場に立ち続け、あまたのシニアカップルの成立と破局を見届けてきた。

ルポ シニア婚活』(幻冬舎新書)の著者で、シニア婚活の現状をさまざまな角度から取材してきたライターの篠藤ゆりさんが、書籍の刊行に際して斎藤さんにあらためて話を聞いた。

斎藤さんによれば、性の一致と価値観の一致が、シニアカップルがうまくいく秘訣だという。(構成/編集部)

*   *   *

(写真:iStock.com/Tirachard)

平均年齢65歳、地方のシニア婚活を応援する太陽の会

篠藤『ルポ シニア婚活』の取材ではお世話になり、ありがとうございました。

斎藤さんはもう30年近くシニア婚活の現場にいらっしゃいますが、今回一冊にまとまったものをお読みになって、どんなふうにお感じになりましたか。

斎藤 私はここ20~30年ぐらいこういった取材を受けつづけてきましたが、今回の本はシニア婚活について今まででいちばんよくまとまっていたと感じました。

会員のみなさんにも「これは参考になるから読んだほうがいいよ」とすすめています。

篠藤 そう言っていただけるとすごくうれしいです。

 

篠藤 太陽の会を通じて成婚した方は何組ぐらいいらっしゃるのでしょうか。

斎藤 2016年末に集計した数字があります。1992年~2016年の24年間で入会者数が1,393人入籍、あるいは事実婚となったのは140組。

その140組のうち、2016年末の時点で続いていたのは65%。約3割は残念ながら別れてしまいました

篠藤 会員の男女比についてはいかがですか。

斎藤 入会者は女性のほうが多いです。でも、女性はすぐにやめてしまう。なぜだか、女性はあきらめがはやいんですよね。1回パーティーに来てさらっと会場を見回して、「ああ、いい人いないわ」と思うと来月から来なくなってしまいます。

男性はじっくりと構えて、「そのうちなんとかなるんじゃないか」と根気づよく参加してくれるのですが。

篠藤 会員の平均年齢はおいくつぐらいなんでしょうか。

斎藤 現在は65歳くらいです。入会資格は男性45歳以上、女性40歳以上ですが、入会なさるのは50歳以上の方がほとんどです。

太陽の会本部会長で宇都宮代表の斎藤尚正さん。(写真:編集部)

シニアカップルが別れる原因第一位は「家族とのかねあい」

篠藤 成婚したカップルの3割が別れてしまうとのことですが、うまくいかなくなった理由はどんなものが多いですか。

斎藤 いちばん多いのは家族とのかねあいです。

シニアの結婚となれば、女性が男性の住んでいる家に行って暮らす場合がほとんどです。すると、男性側の子どもとのかねあいがうまくいかないケースが多々あります。

また、相手の親とどうしてもうまくいかないという場合もあります。

篠藤 シニアの結婚ですから、相手の親が存命であればかなり高齢で、介護が必要であることが多いですよね。

斎藤 親の介護の問題はやっぱりあります。介護の必要な親を抱えている男性はなかなか結婚できないです。

「介護をさせるために私と結婚するの?」と女性は思ってしまう。

だから親が存命なうちは、別々に暮らすという方法をとる人は多いです。

 

篠藤 若い人の結婚とちがっていろいろなしがらみがついてまわるのですね。

親どころか、相手や自分自身が結婚してまもなく介護が必要になる確率だって、若い人の結婚よりは可能性が高いですし。

斎藤 そうですね、そのことはよく考えておく必要があります。

以前、78歳の男性と73歳の女性がうちの会で知り合って、「もういい歳で今さら結婚できない」といって、お互いの家を行き来する事実婚状態を5年ぐらい続けていました。

ところが、女性の家に泊まっていたときに男性は急に倒れて病院に運ばれ、何日か後に亡くなってしまったのです。

すると男性の子どもがご遺体を家に持っていってしまって、女性に対して「お葬式は私たちでします。あんたは関係ない人だから」と告げたそうです。

一般客としてお葬式に参列することになり、女性はすごくさみしい思いをしたと言っていました。「本当は私が妻として送り出してあげたかった」と泣いていましたよ。

篠藤 お葬式となると昔からの知り合いや親戚が大勢あつまりますから、正式な妻でもない女性に親族席にいられるのはたまらないと、お子さんたちは思ったのかもしれないですね。

斎藤 ちゃんと籍を入れていたらよかったと、彼女は後悔していました。

『ルポ シニア婚活』著者の篠藤ゆりさん。(写真:編集部)

シニアの初婚男性は結婚がむずかしい

篠藤 シニア世代の方だとすでに結婚の経験があって、再婚相手を探している人が多いのでしょうね。

斎藤 そうですね、初婚の人は少ないです。ただ、最近男性では増えてきました。54,5歳で初婚の方がけっこういらっしゃるのです。

でもこういう方は結婚までたどり着くのがなかなかむずかしい。そもそも女性とのお付き合いの仕方がわかっていない人もいます。

協調性がたりないというか、女性をいたわってあげようという気持ちが相手に伝わりづらいです。

それから、ずっと独身できた男性は、女性との関係をいま一歩進めるのが不得意です。あとひと押しができない。

篠藤 なるほど。お互い「相手はどう思ってるんだろう」なんて探っているうちに、女性はやきもきして別の人のところに行ってしまうのでしょうね。

斎藤 私からするとじれったくて。60~70歳くらいの頭のいい男性で、給料もちゃんともらっている、初婚だから財産分けする人もいない。

条件的には申し分ないので最初はけっこうモテて、お付きあいが始まるけれど、やっぱり一歩進めなくてダメになってしまうわけです。

 

性の一致、価値観の一致が大切

篠藤 長くシニア婚活の現場を見てきた斎藤さんが考える、理想的なシニアの結婚、理想的な夫婦の関係というのはどのようなものでしょう。

斎藤 まず、性的なことが一致していること。それから価値観です。

同じような価値観の人と夜も昼も楽しくいられて、お金がそこそこあって。お金は、あんまり多くはいらないです。

女性が求めるのは楽しく生活できる相手です。一緒に旅行に行くとか、一緒に趣味を楽しむとか、一緒にできることが多ければ多いほどいいと思います。

篠藤 なるほど。長い間生きていると、これまでの習慣だとか、自分の生き方が固まっている部分が多いと思うのですが、ある程度の年齢になっても相手に合わせて変わっていける柔軟性をもっている人は、うまくいくのでしょうね。

気持ちのもちようがポジティブな人じゃないと、なかなかうまくいかないのかもしれないな、という気がします。

斎藤 それはそのとおりですね。しかし柔軟になれる限度もあるし、同じような価値観という意味では私の経験上、年齢差はだいたい5~7歳くらいまでが長続きします

たとえばシニアの男性が若い女性といっしょになった場合は、最初はよくてもだんだん無理が出てくるものです。

そのうちどちらかが爆発して、女性が「私は若いし、もう一回やり直すわ」なんて言い出すことだってあります。

だけど、男性はみんな70歳になっても「50歳くらいの女性がいい」と言うんですよ。

篠藤 いくつになってもなるべく若い人を求めるのですね。

斎藤 それはもう絶対、若い人がいい。「それは無理だよ」と伝えるのですが、「いや、昔はオレ、若い人にモテたんだよ」なんて返ってきます。

篠藤ゆり『ルポ シニア婚活』

暦を過ぎて子どもがほしくなり31歳スリランカ人と成婚した61歳男性。ピースボートの船上で72歳男性にプロポーズされた80歳女性。人生の酸いも甘いも噛み分けた世代の婚活には、複雑多岐なしがらみがあり、ゆえに結婚の暁には極上の喜びに変わる。本書では多くのインタビューから見えてきたシニア婚活の実態と成婚への道筋を紹介。恋愛感情は必要か? 子どもをどう納得させる? 「後妻業」への防衛策は? 幸せな老後、幸せな最期を求める人々の愛の記録。

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ルポ シニア婚活

2019年9月26日発売の幻冬舎新書『ルポ シニア婚活』(篠藤ゆり・著)について、最新情報をお知らせします。

還暦を過ぎて子どもがほしくなり31歳スリランカ人と成婚した61歳男性。

ピースボートの船上で72歳男性にプロポーズされた80歳女性。

65歳以上の独居人口は620万人を超え、伴侶を求めるシニアも増加の一途。

だが人生の酸いも甘いも噛み分けた世代の婚活には、複雑多岐なしがらみがあり、

ゆえに結婚の暁には極上の喜びに変わる。

 

本書では多くのインタビューから見えてきたシニア婚活の実態と成婚への道筋を紹介。

恋愛感情は必要か? 子どもをどう納得させる?「後妻業」への防衛策は?

幸せな老後、幸せな最期を求める人々の愛の記録。

 

●毎晩のLINEで愛を育んだ70代&60代カップル

●相続から性生活まで、具体的希望をすりあわせ

●「貯金を相手の家族のために使われるのが怖い」63歳男性

●国際結婚に期待を寄せる女性不信の外科医

●「子どもがほしい」裕福なシニア男性たち

●パートナーがいる幸福感はほかでは埋められない

●シニア婚活が招いた親子の亀裂

●どちらかが逝った後まで想定しておく

●お墓をどうするか ……など

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篠藤ゆり ライター

福岡県生まれ。国際基督教大学教養学部で美術史を学び、卒業後コピーライターとして広告代理店に勤務。退社後、世界各地を旅する生活をへて、1991年「ガンジーの空」で海燕新人文学賞受賞。「婦人公論」のグラビアなど女性誌を中心に人物インタビューを多数手がける。著書に最新刊『ルポ シニア婚活』のほか、『旅する胃袋』(幻冬舎文庫)、『食卓の迷宮』『音よ、自由の使者よ。―イムジン河への前奏曲』、また聞き手として携わった『岡本太郎  岡本敏子が語るはじめての太郎伝記』(いずれもアートン新社)がある。

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