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ルポ シニア婚活

2019.10.18 公開 ツイート

「男性が女性の年金めあてに婚活する時代」結婚相談30年のプロは見ていた 篠藤ゆり

地方を拠点に中高年向けの結婚相談をおこなっている民間福祉団体・太陽の会。

本部会長で宇都宮代表の斎藤尚正さんは、これまで30年近く、シニア婚活の現場に立ち続け、あまたのシニアカップルの成立と破局を見届けてきた。

ルポ シニア婚活』(幻冬舎新書)の著者で、シニア婚活の現状をさまざまな角度から取材してきたライターの篠藤ゆりさんが、書籍の刊行に際して斎藤さんにあらためて話を聞いた。

斎藤さんによれば、最近は男性が女性の年金をあてにして婚活する時代だという。(構成/編集部)

*   *   *

(写真:iStock.com/Hana-Photo)

シニア婚活市場でモテる男女とは

斎藤 シニア男性でモテるのは、背が高くてお金の使い方がうまい人です。

たとえば婚活パーティのあと、何人かで「カラオケに行こう」ということになったとします。

モテる男性は「いいよ、女性の分は俺が出すから」って言うんですよね。「女性3人分、3,000円そこそこだろ」ってね。

篠藤 そこは女の人、見ていますね。

斎藤 見るでしょう?(笑) だけど、ヘタな男性もいるんですよ。電卓で計算して「1人1,253円ね」。それじゃダメなんですよね。

篠藤 いっぽう、女性でモテる人は、どういう方ですか。

斎藤 だれとでも明るくほがらかに接している人がモテます。

近くに座ったのが自分の好みのタイプでなくても、そういったことを顔に出さず、とりあえずその場はみんなと仲良くできる人です。

感じのいい人は、隣のテーブルから見てたってステキな感じに見えるじゃないですか。

それが、自分の好みではないからとツンケンしていたら、その様子もほかの男性は見ています。

篠藤 ムスッとつまらなそうな顔をしている人は誰だってイヤですよね。

 

男性が女性の年金をあてにして婚活する時代

篠藤『ルポ シニア婚活』の取材のときに、以前にくらべて経済的な余裕がなくなっている人が多いと話してくださいましたが、今もお感じになりますか。

斎藤 はい、どんどんそうなってきていますね。

15年くらい前は、団塊の世代の男性が55、6歳の現役世代で、給料をたくさんもらっていたじゃないですか。あのころは成婚するカップルがたくさんいました。

毎月1組か2組、結婚していたんです。ある程度の経済力は結婚に絶対必要だと感じます。

篠藤 今、年金だけでは2000万円たりないと言われていたり、長生きすればするほど不安の増す社会状況です。

不安だから結婚しようとするのか、不安だから現状から一歩も動かないのか、その選択は人によって大きくわかれるのでしょうね。

斎藤 後者の考えが多数派のように思います。今は、男性が女性の年金をあてにして結婚しようとする時代です。

女性側からときどき聞く話ですが、最初のデートのときに男性が「いくら年金もらえるの?」と尋ねてくる

「オレはこれくらいしかもらえないから、じゃあ2人合わせればなんとか生活できるね」なんて言ってくるらしいです。

「私の年金まであてにしてるのよ、あの人」と、女性は怒っていました。

篠藤 それは……楽しい結婚生活のイメージがまったく浮かんできませんね。

『ルポ シニア婚活』著者の篠藤ゆりさん。(写真:編集部)

斎藤 最近、会費も大幅に値下げしました。男性の入会金20,000円を10,000円に、女性10,000円を3,000円にしたんです。

月々の会費も男性3,000円から2,500円、女性2,000円から1,500円にしました。

篠藤 都心部の同業他社さんと比べると、もとの値段もたいへんお安いと思うのですが……。費用が高いという声が多かったのですか?

斎藤 入会金や月の会費はゼロで、パーティーの会費だけを取る業者さんもあるでしょう。お客さんはそういうところと比べて「太陽の会は高い」と思うみたいです。

ただ、おかしな人を入り込ませないという点では、私たちのような婚活に特化した団体のほうが安心だと思いますね。

独身証明書など各種証明書も確認しているし、「この前出会ったのにもう結婚するの? それは絶対おかしいよ」とアドバイスしたりできますから。

 

20歳年下女性にBMWをねだられた75歳男性

斎藤 お金についてのトラブルは、シニア婚活にかならず付きまとってきます。

そのいちばん大きな事件がいわゆる後妻業殺人事件。婚活中のみなさんには、できるだけああいった被害に遭わないでほしいと思うんです。

老後の資金には限りがあるのに「お金をだましとられた」なんて聞かされると、悲しくて。裁判なんかしたってしょうがないですしね。

篠藤 表に出てきていないだけで、あの事件と大差ないことは起こっているかもしれませんよね。

斎藤 数年前にもこんなケースがあったんです。男性は埼玉県に住む75歳の資産家、うちの会員で、女性とは太陽の会以外のところで知り合ったようです。

20歳年下の女性が、オレと結婚してくれそうなんだよ。そっちの会にはしばらく行かないから」という電話があったので、「待って。どういう相手なの? どういう話になったの」と訊きました。

この女性は3回ぐらい会ったあとで、「私、あんたと結婚してもいいよ」と言ったらしいです。そして「結婚するんだから、結納金ちょうだい」と切り出した。

「いくら?」「100万」「じゃあ渡すよ」と、彼は渡したらしいです。「それまでにホテルに行ったりして、男女の関係になったの?」と聞いてみたら、「そういうのは一切ないんだ」と彼は言います。

100万円渡したからには、ホテルやら温泉やら一緒に行けるのかと彼は期待したそうですが、「まだ結婚してないんだから、そういうのはダメだよ」と断わられた。

そのうちに、「結婚後の生活のために、車がいるから買って。BMW。500万円くらいの中古でいいから」と要求されたそうです。

篠藤 絶対おかしいですね(笑)。

斎藤「それ以上お金出しちゃダメだよ、もう出したお金は返ってこないかもしれないけど、それ以上はダメだから」と説得して、なんとか彼も目が覚めたようです。

篠藤 20歳も年下の女性が結婚をほのめかしてきたらウキウキして、この女性をのがしたら次はないと思ってしまったのでしょうね。お金トラブルには気をつけなくてはいけませんね。

太陽の会本部会長で宇都宮代表の斎藤尚正さん。(写真:編集部)

結婚後のお金のことは付き合う前に男性から話すべき

斎藤 成婚したあと、お金の問題で別れてしまうシニアカップルも多いです。

男性はどうしても実際より多くあるように見せかけがちなんですよ。

たとえば「オレは年金を月20万円もらっている。月15万円は使っていいから」と言われていて、女性は「ああ、それならやっていけるかな」なんて思って一緒になったら、実際にはそこから家賃やら光熱費やらも払わなければいけないとか。

篠藤 ただ、女性としてはお金のことを聞きづらいです。

「こんなこと聞いたらお金目当てだと思われるんじゃないか」とか、「細かい女だと思われるんじゃないか」と気にしてしまいます。

どのタイミングで話し合ったらいいでしょうか。

斎藤 私は男性の会員さんに、「お付き合いの前に2~3回デートする中で、早めの段階で経済的なことを提示しておいたほうがいい」とアドバイスしています。

「オレと結婚するとだいたいこんな感じの生活になるよ。ある程度もってるから任せとけ」「年金が月○○円で、ほかに家賃収入とかいろいろあります」「奥さんには月に20万円渡すよ」などという感じです。

本気でお付き合いをする気があるんだったら、そこまできちんと男性側が話すべきです。

 

シニア婚活は、楽しい人生を送るきっかけのひとつ

篠藤 まだ婚活パーティーに来たことがない人や、婚活にふみきれないシニアの方に対してアドバイスはありますか。

斎藤「婚活なんて自分にはむずかしい」って思うかもしれませんが、実際やってみるとけっこう楽しいんです

結婚するしないは別にして、恋人ができるだけでもいいじゃないですか。とりあえず楽しい人生を送るきっかけにしてもらえたらと思います。

彼女や彼氏ができたら、毎日の生活が絶対に楽しいですから

篠藤『ルポ シニア婚活』のために取材させていただいた、太陽の会に入っている67歳(当時)の女性の方。

「今、ちょっと気になってる人がいるんです」と頬を赤らめてお話ししてくれて、すごいわ、高校生みたいだなって思いました。彼に会えることがすごく楽しいって感じでした。

斎藤 そういう気持ちは、おそらくみんなもっていると思うんです。

まわりの目を気にすることをやめて、一歩踏みだして素直に「恋人がほしい」という気持ちをもってみてください。

デートする相手が決まっただけで絶対楽しいですから。前の晩、ワクワクして寝られないかもしれない

篠藤 仕事上のパーティや同窓会とちがって、ここなら来ている人はみんな「婚活」という同じ目的で集まっているという気安さがありますよね。

斎藤 そうです。新しく入会した人がよく、「実際にパーティに参加するまですごく不安でした」とおっしゃるんです。

「自分なんかだれにも声をかけられないんじゃないか」と思うみたいです。

そして、一回パーティーに来ると、ほとんどの人が「すごく安心しました」と言うんです。

自分と同じように寂しい思いを抱えて生きている人が、こんなにいっぱいいるのかと。

その人たちが集まって、みんないきいきと婚活しているじゃないですか。

ああ、こういうことなんだ、いやぁ、出てよかったとおっしゃいます。

(写真:編集部)

篠藤ゆり『ルポ シニア婚活』

暦を過ぎて子どもがほしくなり31歳スリランカ人と成婚した61歳男性。ピースボートの船上で72歳男性にプロポーズされた80歳女性。人生の酸いも甘いも噛み分けた世代の婚活には、複雑多岐なしがらみがあり、ゆえに結婚の暁には極上の喜びに変わる。本書では多くのインタビューから見えてきたシニア婚活の実態と成婚への道筋を紹介。恋愛感情は必要か? 子どもをどう納得させる? 「後妻業」への防衛策は? 幸せな老後、幸せな最期を求める人々の愛の記録。

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ルポ シニア婚活

2019年9月26日発売の幻冬舎新書『ルポ シニア婚活』(篠藤ゆり・著)について、最新情報をお知らせします。

還暦を過ぎて子どもがほしくなり31歳スリランカ人と成婚した61歳男性。

ピースボートの船上で72歳男性にプロポーズされた80歳女性。

65歳以上の独居人口は620万人を超え、伴侶を求めるシニアも増加の一途。

だが人生の酸いも甘いも噛み分けた世代の婚活には、複雑多岐なしがらみがあり、

ゆえに結婚の暁には極上の喜びに変わる。

 

本書では多くのインタビューから見えてきたシニア婚活の実態と成婚への道筋を紹介。

恋愛感情は必要か? 子どもをどう納得させる?「後妻業」への防衛策は?

幸せな老後、幸せな最期を求める人々の愛の記録。

 

●毎晩のLINEで愛を育んだ70代&60代カップル

●相続から性生活まで、具体的希望をすりあわせ

●「貯金を相手の家族のために使われるのが怖い」63歳男性

●国際結婚に期待を寄せる女性不信の外科医

●「子どもがほしい」裕福なシニア男性たち

●パートナーがいる幸福感はほかでは埋められない

●シニア婚活が招いた親子の亀裂

●どちらかが逝った後まで想定しておく

●お墓をどうするか ……など

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篠藤ゆり ライター

福岡県生まれ。国際基督教大学教養学部で美術史を学び、卒業後コピーライターとして広告代理店に勤務。退社後、世界各地を旅する生活をへて、1991年「ガンジーの空」で海燕新人文学賞受賞。「婦人公論」のグラビアなど女性誌を中心に人物インタビューを多数手がける。著書に最新刊『ルポ シニア婚活』のほか、『旅する胃袋』(幻冬舎文庫)、『食卓の迷宮』『音よ、自由の使者よ。―イムジン河への前奏曲』、また聞き手として携わった『岡本太郎  岡本敏子が語るはじめての太郎伝記』(いずれもアートン新社)がある。

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