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2019.02.21 公開 ツイート

選民意識はどこから来るのか 佐久間裕美子

自分自身が初めて、アジア人だという外見を理由に、人に罵声を浴びせられたのも、おそらくこの頃だったと思う。ユニオン・スクエアのマクドナルドのトイレで白人の酔っぱらいに「お前ら、中国人のせいで」と追い詰められたときには恐怖で震え、何も言い返すことができなかった。

クイーンズに暮らし始めてしばらくしてから、電車のホームで私を見ると「このチンク野郎」と囁き続ける白人のおじいさんに日常的に遭遇するようになった。

自分がアジア人という肉体の中で、どんな感情を持ち、どんな風に生きているかとまったく関係ないところでジャッジされるーーそれは衝撃的な体験だった。私という人間に何をされたわけでもないのに、肌の色と顔の造作だけで憎しみを持つ人がいる。

「アンフェアだ!」

と叫びたい気持ちだった。

そして思い出したのは、日本での差別のことだった。自分のまわりにはいつもある程度の偏見や差別が存在した。一番古い差別とのふれあいは、小学校時代だったと思う。12年通った学校のそばには、韓国人学校があった。それを「チョン学校」と意地悪く呼ぶ同級生がいた。世の中の仕組みとか日本の歴史をきちんと理解するずっと前のことだったかもしれない。その子はいじめっ子で、威張っていた。「チョン学校」という言葉に言いようのない気持ち悪さを感じた。そして彼女の優越感を「バカだなあ」と思い、軽蔑した。

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佐久間裕美子『ピンヒールははかない』

NYブルックリンひとり暮らし。どこまでも走り続けたい。 ニューヨークで暮らすようになって、もうすぐ20年になる。 ここでは「シングル=不幸」と思わせるプレッシャーがない。 周りには、果敢に恋愛や別れを繰り返しながら、社会の中で生き生き と頑張っている女性が山ほどいる。一生懸命生きれば生きるほど、 人生は簡単ではないけれど、せっかくだったら、フルスロットルで めいっぱい生きたい。だから自分の足を減速させるピンヒールははかない。 大都会、シングルライフ、女と女と女の話。

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NYで暮らすようになって20年。ブルックリン在住のフリーライターが今、考えていること。きわめて個人的なダイバーシティについての考察。

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佐久間裕美子

1973年生まれ。ライター。慶應義塾大学を卒業後、イェール大学大学院で修士号を取得。98年からニューヨーク在住。新聞社のニューヨーク支局、出版社、通信社勤務を経て2003年に独立。アル・ゴア元アメリカ副大統領からウディ・アレン、ショーン・ペンまで、多数の有名人や知識人にインタビューした。翻訳書に『日本はこうしてオリンピックを勝ち取った! 世界を動かすプレゼン力』『テロリストの息子』、著書に『ヒップな生活革命』『ピンヒールははかない』がある。最新刊はトランプ時代のアメリカで書いた365日分の日記『My Little New York Times』。

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