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才能の正体

2020.03.21 公開 ツイート

不可能といわれていた「100m走9秒台」の記録が増えてきたのはなぜ?【再掲】 坪田信貴

さて、子どものころを思い出してください。
フィギュアスケートでの「四回転ジャンプ」も、陸上の100メートル走での「10秒切り」も、「人類では不可能だ」みたいに言われていましたよね。
ところが、今は、どんどんできるようになっています。
これは、どうしてなんでしょうか?
ベストセラー『才能の正体』より、抜粋!

iStock/roibu

「技」と「術」の違い

 武道の達人と言われる人たちは、だいたい4~5年でその道をマスターすると言われています。達人といえば“老人”というイメージを持っている人が多いですが、実際のところ、いわゆる“伝説的な達人”たちは、遅くても20代後半くらいまでには、すでに達人になっています。
 これはある武道の先生に教えてもらったことなのですが、「一般道場生」と「後継者」は学ぶ体系が違うのだそうです。具体的にどれほど違うのでしょうか。

 柔道を例にしてみましょう。
 柔道の「技」には、一本背負い、内股、背負い投げなどがありますが、道場へ入るとまずは受け身から習い、自由に技をかけ合う“乱取り”などを行って、技を磨いていきます。こうして一般道場生は、ひたすら「の練習」をします。
 しかし後継者候補には、早々に「を教える」のだそうです。
 最初は一般道場生として入ってきても、見込みのある人たちというのは、技の練習を見ているとわかるのだそうです。技の習得が早く、どんどん上達していくのだとか。

 上達が早いというのには理由があります。そういう人は、技の練習をする中で、ちょっとしたコツに気づくんですね。これ、65ページで紹介した「赤ちゃんの抱き方」にも通じます。
 それが「術」の始まりです。達人というのは、そういう「術」を総合的・体系的に身につけた人です。

 力ずくで投げ飛ばそうと思っても、そう簡単にはできませんよね。しかし相手が押してきた力を利用したり、自分の体重を左から右に瞬時に移動させたりすると、相手のバランスが崩れるタイミングがあります。そのタイミングで技をかけると、あっさり決まる。
 柔道における「術」は、“相手が崩れた瞬間に技をかける”という「崩し」にあります。後継者候補の人たちは、達人たちからこれを教え込まれるわけです。
 相手の体勢が崩れた瞬間を狙えば、技なんかかけなくても、そっと押すだけでも倒れてしまうもの。「膝カックン」をやったことは誰にでもあると思いますが、まさにこれ。重心がズレる、体勢が崩れる瞬間を作る、狙う、ということなのです。これはすべての武道に通じるものです。

 一般道場生は「技」を何度も何度も練習していって、ようやく「術」を身につけていきます。だから強くなるまでに数十年かかります。
 しかし後継者は、まず「術」から学んで「技」を磨く。なので数年で達人になれるというわけです。

誰かが成功すると、急に「できる人」が増える理由

 技術の話を、別の例で考えてみましょう。《第1章「才能」とは何か?》の中で、かつて人類には無理と言われた、フィギュアスケートの四回転ジャンプや100メートル走のタイムで10秒を切るということが、今はクリアできていることに触れました。

 これ、不思議なことに、一人ができるようになると、クリアできる人がその後に次々と出てきますよね。

 これも「技術」です。
 
できるんだ! ということがわかると、すでに「技」を持つ彼らは、できる人を徹底的に研究して「術」を導き出し(コーチなどの指導者の力も借りて)、普通の人にとっては“ありえない目標”のクリアへと向かうことができるのです。

「できると思っていたら、いつかできる」
「できないと思っていたら、そもそもできない」

ということを説明するときに僕がよくするのは、「卵の話」です。

 あなたは「この卵を立ててください」と言われたらどうしますか?
「コロンブスの卵」という有名な逸話を知ってる人は、殻の一部を少しだけ割って立てることを思いつくかもしれませんが、「割ってはいけません」と言われたら?
 実は、微調整すれば卵は立つんです! でも、それを知らなければ卵が立つなんて思わないでしょう。何度かトライしてできなければ、「やっぱり無理」とやめてしまうと思います。
 しかし、卵が立つことを知っている人は、何回でも、立つまでトライできるのです。
 誰かが成功すると、できる人が続出するのは、それが理由です。

 成功する人を見るまでは、「技」を磨くことはしているけれど、「術に到達していなかった」「術があると知らなかった」状況だったのだと思います。そこで成功者が現れると、「術」に向き合うことになる。
 ちなみに、「コロンブスの卵」というのは、「大陸発見なんて誰でもできる!」と言われたコロンブスが、ゆで卵の端を潰して立てて見せて、「誰でもできそうなことも、最初にやるのは難しい」と言った……という有名な逸話です。

関連書籍

坪田信貴『才能の正体』

“地アタマ”は幻想。才能の芽は誰にでもある。しかし、ほとんどの人が無駄な努力で才能を殺している―と、「ビリギャル」を偏差値40UP&難関大学に合格させた著者が断言。「できる人の行動を完コピすると爆ノビ」「客観的事実だけをフィードバックすると能力は育つ」など、才能の見つけ方・伸ばし方を実践的に紹介した、能力開発メソッドの決定版。

堀江貴文/田中里奈/鈴木おさむ/坪田信貴/小林麻耶/佐々木圭一『ぴりから 私の福岡物語』

福岡県が大好きな6名の著名人が描く、「福岡」をテーマとした小説集。 上京前の不安な心境、仕事や恋愛の失敗、親と子のぶつかりあい……。 そんなピリッとからい出来事に直面した主人公たちは、福岡ならではのあの場所、あの味、あの人の心にふれ、新たな希望を見つけていく。

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才能の正体

コロナ禍は、学習シーンにも大きく影響し、休校になったり、授業がオンラインになったりした。学校の授業だけでなく、塾も、部活も、コロナ前の体制に戻るには時間がかかりそうだ。いや、そもそも、戻らないのかもしれない。
でも、だからといって、能力を伸ばせなくなったわけではない!
「才能の本質」について知れば、体制に関係なく、能力を伸ばすことはできる。
学年ビリのギャルが1年で偏差値が40も上がり、慶応大学に合格できたのは、坪田先生との出会いのおかげだが、その『ビリギャル』の坪田先生が、「才能とは何か」について余すことなく書いたのが、ベストセラー『才能の正体』。

その『才能の正体』が文庫化されました! 文庫化記念で、本文を公開します。

バックナンバー

坪田信貴

坪田塾塾長。心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」、多くの生徒の偏差値を急激に上げてきた。 一方で、起業家としての顔も持つ。また、人材育成、チームビルディングの能力が多くの企業から求められ、マネージャー研修、新人研修を行うほか、現在は吉本興業の社外取締役も勤めるなど、活躍の場は枠にとらわれない。テレビ、ラジオ、講演会でも活躍中。 著書に映画化もされて大ベストセラーとなった『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』のほか、『人間は9タイプ 仕事と対人関係がはかどる人間説明書』『バクノビ 子どもの底力を圧倒的に引き出す339の言葉』『どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法』『才能の正体』ほか多数あり 。

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