1. Home
  2. 生き方
  3. さすらいの自由が丘
  4. 生理用ナプキンの話

さすらいの自由が丘

2018.05.17 公開 ツイート

第13回

生理用ナプキンの話 今村三菜

 ああ、春って素晴らしい。

 近所のお庭の柵にはクリーム色の木香薔薇がからまり、足元にはパンジーが咲き、木々の間から鳥のさえずりも聞こえる。

 春ってなんて素敵なの。ブラーヴォ、ブラーヴォ、ブラヴィッシモ。私が青空に向かって快哉(かいさい)を叫びたくなるのも、花粉症が治ったからだ。去年の4月に一人で自由が丘に引っ越して来てから、毎朝欠かさず酢玉ねぎを食べたのだ。

 一緒に酢玉ねぎを始めたのに、三日坊主でやめた実家の人たちは、今年も鼻をたらし、目を赤くしている。

 そういえば春になってから、生理もない。

 毎日が爽やかなはずだ。2年前には、生理の周期が19日になってしまい、「ああ、私の人生、一年中生理なのか」と、暗澹(あんたん)たる思いがした。そういう時期を過ぎたら、だんだん生理の周期が長くなり、時々一回、生理が抜けることがあった。そういうときでも生理痛はしっかりとあり、誰かに頭と足をもって、ぎゅーっと身体を雑巾絞りにされたごとく下腹部が痛み、そんなに痛いにも関わらず、さっぱり出血がないときには、私の中で、女性ホルモンと老化が一生懸命、戦っているのだなあと思った。

ここから先は会員限定のコンテンツです

無料!
今すぐ会員登録して続きを読む
会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン

関連書籍

今村三菜『お嬢さんはつらいよ!』

のほほんと成長してきたお嬢さんを奈落の底に突き落とした「ブス」の一言。上京し、ブスを克服した後も、地震かと思うほどの勢いで貧乏揺すりをする上司、知らぬ間に胸毛を生やす弟、整形手術を勧める母などなど、妙な人々の勝手気ままな言動に翻弄される毎日。変で愛しい人たちに囲まれ、涙と笑いの仁義なきお嬢さんのタタカイは今日も続く!

今村三菜『結婚はつらいよ!』

仏文学者・平野威馬雄を祖父に、料理愛好家・平野レミを伯母に持つ著者の波瀾万丈な日常を綴った赤裸々エッセイ。 ひと組の布団で腕枕をして眠る元舅・姑、こじらせ女子だった友人が成し遂げた“やっちゃった婚”、連れ合いをなくし短歌を詠みまくる祖母、夫婦ゲンカの果て過呼吸を起こす母、イボ痔の写真を撮ってと懇願する夫……。「ウンコをする男の人とは絶対に結婚できない」と悩み、「真っ白でバラの香りがする人とならできるかも」と真剣に考えていた思春期から20年余り、夫のお尻に素手で坐薬を入れられるまでに成長した“元・お嬢さん”の、結婚生活悲喜こもごも。

{ この記事をシェアする }

さすらいの自由が丘

激しい離婚劇を繰り広げた著者(現在、休戦中)がひとりで戻ってきた自由が丘。田舎者を魅了してやまない町・自由が丘。「衾(ふすま)駅」と内定していた駅名が直前で「自由ヶ丘」となったこの町は、おひとりさまにも優しいロハス空間なのか?自由が丘に“憑かれた”女の徒然日記――。

バックナンバー

今村三菜 エッセイスト

1966年静岡市生まれ。エッセイスト。仏文学者・詩人でもある祖父・平野威馬雄を筆頭に、平野レミ、和田誠など芸術方面にたずさわる親戚多数。著書に『お嬢さんはつらいよ!』『結婚はつらいよ!』(ともに幻冬舎)がある。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP