1. Home
  2. 生き方
  3. さすらいの自由が丘
  4. 秘密の花園

さすらいの自由が丘

2019.02.05 公開 ツイート

秘密の花園 今村三菜

私には、姪ばかり4人いる。上から、姪1と姪2が妹の娘で、姪3と姪4が弟の娘だ。

私は、女の子ばかり4人もいるのが、とてもうれしく、前にも書いたが、この子達を見て『若草物語』(オルコット)みたいだなと思い、4人の成長をずっと見守り、友達のような関係でいたいと思っていた。

特に姪3と姪4は、私の実家が、両親の住む2階だとすると、弟家族は3階に住んでいるので、姪3と姪4には、実家に帰ればすぐに会える。

よく、2階の和室に2人分の布団を敷き、私を真ん中にして、3人で寝た。姪3と4が小さな頃、『秘密の花園』(バーネット)を、私の好きな部分を膨らめたり、印象の薄かったエピソードは省いたりして、姪たちに、寝る前に話して聞かせた。主人公のメアリーが、コマドリに導かれて花園の扉を見つけたときのワクワクした気持ちを、私が大げさに話したりすると、姪たちは、目を輝かせて聴いてくれた。

インドに住んでいたメアリーが両親を亡くし、見も知らないヨークシャーの伯父の館に引き取られ、夜、暗い館の中を探検すると、どこからか子供の泣き声が聴こえてきた話をすると、姪たちが、「きゃー」と悲鳴を上げ、両側から姪たちがしがみついてくるので、私は、いつも、布団と布団の間に落っこちていた。

夜が明けると、もう6時ころから、姪3に、「ミーちゃん、ミーちゃん、起きて。メアリーの話をして」と起こされた。起きられなくて、目をつむっていると、姪3に「ミーちゃん、メアリーの続き、しゃべって」と、人差し指と親指で、ギュッと目蓋(まぶた)を開かれた。

こんな風にして、姪の小さい頃、1週間くらいかけて、私は、『秘密の花園』(ミーちゃん風)を語った。

バーネットの『秘密の花園』は、小学校の頃から、私の一番好きな物語であったが、バーネットが生きていたら訊(き)いてみたいことがある。

ここから先は会員限定のコンテンツです

無料!
今すぐ会員登録して続きを読む
会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン

関連書籍

今村三菜『お嬢さんはつらいよ!』

のほほんと成長してきたお嬢さんを奈落の底に突き落とした「ブス」の一言。上京し、ブスを克服した後も、地震かと思うほどの勢いで貧乏揺すりをする上司、知らぬ間に胸毛を生やす弟、整形手術を勧める母などなど、妙な人々の勝手気ままな言動に翻弄される毎日。変で愛しい人たちに囲まれ、涙と笑いの仁義なきお嬢さんのタタカイは今日も続く!

今村三菜『結婚はつらいよ!』

仏文学者・平野威馬雄を祖父に、料理愛好家・平野レミを伯母に持つ著者の波瀾万丈な日常を綴った赤裸々エッセイ。 ひと組の布団で腕枕をして眠る元舅・姑、こじらせ女子だった友人が成し遂げた“やっちゃった婚”、連れ合いをなくし短歌を詠みまくる祖母、夫婦ゲンカの果て過呼吸を起こす母、イボ痔の写真を撮ってと懇願する夫……。「ウンコをする男の人とは絶対に結婚できない」と悩み、「真っ白でバラの香りがする人とならできるかも」と真剣に考えていた思春期から20年余り、夫のお尻に素手で坐薬を入れられるまでに成長した“元・お嬢さん”の、結婚生活悲喜こもごも。

{ この記事をシェアする }

さすらいの自由が丘

激しい離婚劇を繰り広げた著者(現在、休戦中)がひとりで戻ってきた自由が丘。田舎者を魅了してやまない町・自由が丘。「衾(ふすま)駅」と内定していた駅名が直前で「自由ヶ丘」となったこの町は、おひとりさまにも優しいロハス空間なのか?自由が丘に“憑かれた”女の徒然日記――。

バックナンバー

今村三菜 エッセイスト

1966年静岡市生まれ。エッセイスト。仏文学者・詩人でもある祖父・平野威馬雄を筆頭に、平野レミ、和田誠など芸術方面にたずさわる親戚多数。著書に『お嬢さんはつらいよ!』『結婚はつらいよ!』(ともに幻冬舎)がある。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP