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もう一度だけ会えたなら、ぼくとわたしは──

2026.06.29 公開 ポスト

桜の下の「別れ」から、七夕の「再会」へ。入社3ヶ月の新米編集者が迫る、創作の掛け算と幻の初期プロット越尾圭

この4月に幻冬舎編集者となり、上司のお手伝いという形で『もう一度だけ会えたなら、ぼくとわたしは──』(通称・ぼくわた)に関わらせていただいた私、新米編集者のKが、著者の越尾圭さんにお話を伺いました。今回はその一回目の前編。前作『ぼくが生きるということは、きみが死ぬということ』(通称・ぼくきみ)のルーツや、『もう一度だけ会えたなら、ぼくとわたしは──』のプロットからの変更点など、創作の裏話をお聞きします。

*   *   *

▶ミステリー作家の異ジャンルへの挑戦と要素の掛け算

新米K まずは、『ぼくわた』が生まれたきっかけでもある、前作『ぼくきみ』のルーツからお聞かせください。

越尾 2019年にミステリーでデビューして以来、ミステリーばかりを書いていたのですが、2023年に新作に取り掛かるにあたって、作家としての幅を広げるためにも、違うジャンルに挑戦したいと思ったんです。そこで、これまでとは異なるアプローチとして、「命の尊さ」や「生きる意味」を問いかけるような、感動系のストーリーを書いてみたいと考え始めました。

新米K そこからどのようにプロットを詰めていったのでしょう。

越尾 感動小説と言っても、余命もの、入れ替わり系、記憶喪失、タイムリープなど、いろいろなジャンルがありますよね。ただ、一つずつ確認していくとどれも既視感があって、今から自分がそのまま手を出しても「今更感」が出てしまうなと悩みました。そこで、これらのジャンルを何かと何かで「組み合わせたら」どうなるだろうと思いついたんです。最初に「余命もの」と「入れ替わり」を組み合わせたときに、「あ、これならいける」と手応えを感じました。

新米K「余命一年」と宣告された美羽、そして生きたいと願った美羽と「入れ替わる」死にたいと願った航平。まさに『ぼくきみ』誕生の瞬間ですね。

越尾 そうです、ビビッときました。先行作がないか自分なりに調べた限りでは、当時似通った作品は見当たらなかったので、そのまま一気に企画書を作りました。

新米K 既存のジャンルを掛け合わせて新しい物語を生み出すというのは、創作において本当に大切なアプローチなんですね。

 

▶桜の「別れ」から七夕の「再会」へ。続編のモチーフに込められた意味

新米K 前作の反響を受けて、弊社から続編のご依頼をさせていただきました。その際、前作の「春(桜の季節)」から季節を一つずらして、夏の「七夕」をモチーフにしてはどうかとご提案させていただいたんですよね。

越尾 はい。七夕は、天の川で分かたれた織姫と彦星が一年に一度「再会」を果たすストーリーです。『ぼくきみ』では「別れ」を描いたので、続編を書くなら次は「再会」の物語にしたいと私自身も思っていました。ですから、七夕というモチーフはまさにぴったりだと、プロットを進めながら思っていました。

 

▶実は明里が単独主人公だった? ファン必読のもう一つのプロット

新米K 本作『ぼくわた』を書き進める中で、当初のプロットから展開や結末が変わった部分はありましたか?

越尾『ぼくわた』の初期プロットを読み返してみたのですが、最終的な原稿と大きく変わる部分は特になかったんです。ただ、実は「七夕」でプロットを考える前に、もう一つ別のプロットが存在していました。純粋な続編というよりは、明里を主人公にした、高校生活がメインのストーリーを考えていたんです。

新米K そうだったんですか! それは初めて知りました。実は作中で明里が一番好きなキャラクターなので、その物語もめちゃくちゃ読んでみたいです。

越尾 ありがとうございます。内容は、意識不明になってしまった明里のクラスメイトを、前作の入れ替わりのような「奇跡」で救い出し、「再会」を目指すというお話でした。ただ、今回は『ぼくきみ』の正統な続編としてのリクエストをいただいていたので、もう一度プロットを練り直し、現在の『ぼくわた』が生まれました。

新米K 確かに『ぼくわた』も明里と航平の二人視点で進みますが、読んでいて「この物語の主人公は明里だな」と感じる瞬間が多かったです。

越尾 最初のプロットは完全に明里がメインで、航平はそこまで登場させない予定だったんですよ。

新米K それでも、航平を登場させる予定ではあったんですね。

越尾 そうですね。『ぼくきみ』の登場人物たちも交えながら、みんなで協力して一人を救い出すような展開を想定していました。

新米K そのお話もいつかぜひ読ませていただきたいです!『ぼくわた』を読んでいて感じたのですが、目標に向かって全力で走れる明里の一生懸命な姿って、読んでいるこちらまで不思議と元気がもらえるんですよね。周りを支える大人たちも本当に魅力的で、『ぼくきみ』では少し頼りなさのあった航平が立派な大人になっていたり、日菜乃も自分のことも航平のことも真剣に考えられる素敵な女性で。ちょっと圧を感じる石黒さんだって、実は根が良い人です。そんな魅力的な人たちが手を取り合う姿って、ただ見守っているだけでも心がじんわりと温かくなりますよね。

 

次回は、『ぼくわた』における越尾さんのお気に入りのシーンや、登場人物等についてインタビューをさせていただきます!

関連書籍

越尾圭『もう一度だけ会えたなら、ぼくとわたしは――』

売れない小説家の航平と、十年前に母・美羽を亡くしたとわファンの明里は、満開の桜の下で出会う。航平と美羽が最期の一年を入れ替わっていたという真実を知らされた明里の心には、ある“想い”が生まれる。“もう一度ママに会いたい”──二人は七夕に美羽を呼び出そうとする。大切な人との切ない再会の夜、何を伝えるのか──。

越尾圭『ぼくが生きるということは、きみが死ぬということ』

ブラック企業で疲弊し切った航平と、末期がんで余命宣告を受けた一児の母、美羽。満開の桜の下で二人は入れ替わってしまう。「死にたい」航平と「生きたい」美羽は願いを叶えたはずだったが、“それぞれ”の人生を送るうちに本当の気持ちに気づき、お互いを思いやっていく。果たして「死ぬ」のはどちらなのか。ラストにあなたは涙する。

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もう一度だけ会えたなら、ぼくとわたしは──

2025年3月に発売され、その切ない設定と胸を打つ結末が多くの読者の心に深く残った『ぼくが生きるということは、きみが死ぬということ』の著者・越尾圭さんの最新作『もう一度だけ会えたなら、ぼくとわたしは──』。本特集では、発売を記念して本作にまつわる様々な情報をお届けします。

 

 

 

【あらすじ】

 

売れない小説家の航平(とわ)と、十年前に母・美羽を亡くしたとわファンの明里は、満開の桜の下で出会う。航平と美羽が最期の一年を入れ替わっていたという真実を知らされた明里の心には、ある“想い”が生まれる。“もう一度ママに会いたい”──二人は七夕に美羽を呼び出そうとする。大切な人との切ない再会の夜、何を伝えるのか──。

バックナンバー

越尾圭

一九七三年、愛知県生まれ。早稲田大学卒。第十七回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉を受賞し、『クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない』(宝島社文庫)でデビュー。著書に『協力者ルーシー』『なりすまし』(ともにハルキ文庫)、『誰がためにその手は』(ハーパーBOOKS+)など。

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