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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2025.09.18 公開 ポスト

#66

キミはウンナーを見たか? 沖縄離島編相場英雄

使用機材<FujifilmX100V>

あなたはウンナーという単語をご存知だろうか? もし知っているなら、あなたは相当な沖縄通、いやマニアに違いない。

実はこの言葉を私も先々月に知ったばかり。ウンナーとは、沖縄北部にある離島の豊年祭りのことで、この島にしかない伝統行事だ。

本欄の第53回でも登場したこの離島は、いくつかの集落で構成されている。地区ごとに日にちをずらしてウンナーが開催される。私は今回、フェリーが停泊するN地区の祭りをつぶさに見ることができた。

 

離島の名前教えろよ、そんな声が聞こえてきそうなので、あらかじめお断りしておく。53回でも触れたが、この島は交通の便が非常に悪い。

那覇空港から陸路で二時間、その後フェリーで一時間を要する。小綺麗なリゾート施設は皆無、宿泊は民宿かキャンプのみ。コンビニはなし、信号も一箇所だけ。沖縄の定番観光スポットと海辺のお洒落なカフェを愛するような人たちには、とてつもなくハードルが高い(以前触れたように、ここまでで相当なヒントを書いているので、興味がある方はご自分で検索していただきたい=底意地悪い作家)。

この島には沖縄の原風景が色濃く残っている。赤瓦の古い住宅、人懐こい島民、地元民が愛する弁当……。八重山を中心とした離島が次々に大規模リゾートになり、手付かずの自然が猛烈なスピードで壊されたことを知る人(私も)には、最後の聖域かもしれない。

さて、ウンナーに話を戻そう。島の公式サイトによれば、〈五穀豊穣と地域の安寧を祈願する百年以上前から続く大切な祭り〉とある。

夕方六時過ぎ、まずは村ガーイから祭りがスタートする。ガーイとは、新築や入学、出産、誕生日等々、なんらかのお祝い行事のあった一般家庭を祭りのメンバーたちや集落の人たちが順繰りに巡る。

一斗缶を叩く人、ラッパを吹き鳴らす係、三線を弾く部隊ら二、三〇人程度が一堂に会し、家々を回る。受け入れ側も酒や料理を用意し、一行を迎える。

カチャーシーを踊る人、ひたすら酒を飲み続けるオトーやオジー。私も二軒回らせてもらったが、これが阿鼻叫喚。島の仲良しのニーニーたちに両腕をがっちり押さえられ、泡盛の一気大会(良い子はマネしちゃいけないよ)。三時間ほどのガーイを完徹したメンバーたちは、コント番組の酔っ払いのように足元がフラフラだった。

次は集落の東西で板の上に乗った若い男性を落とし合うスナイが盛大に開催され、その後は大綱引きへとなだれ込む。村の広場は大勢の人が集まり(ほとんどが酔っ払い)、松明の下でにぎやかに過ごす。大綱引きのあとは、子供から大人までが参加する琉球相撲が翌朝近くまで続くのだ(私は未明にダウン)。

今年の収穫後の稲藁を編んで大綱に。村の衆がそうがかりで。
集落を東西に分けての大綱引き大会。迫力満点。
村ガーイの一コマ。飲んで歌ってひたすら踊る。楽しいけど、確実に酔う(腰が抜ける)。
村ガーイの途中、仲良しのニーニー、ネーネーたちと再会。このあと、猛烈に飲まされる私。島外の人も参加自由、いろんな国の人と騒いで超絶楽しい。
ウンナーのメインイベントの一つ、スナイ。めちゃくちゃ迫力あり。酔っ払いたちが俄然盛り上がる。
 

なぜウンナーに触れたかといえば、本日発売の我が最新刊『ブラックスワン』(幻冬舎)でこの島に触れ、相当な枚数を費やしたからだ。

今年島に行く前、原稿は書き上げていた。ゲラ作業の最終段階で、島の詳細を改めてチェックしたいと考えていた。タイミングよく、今年ウンナーという奇祭に遭遇した。これは絶対本編に入れねばならぬと決意し、帰京後に担当編集のN編集長に加筆を申し出た。

さあ、ここまで読んでしまったら、『ブラックスワン』を買うしかない。露骨な宣伝と言うなかれ。

沖縄を愛する人だったら、絶対にウンナーに参加したいはず。村がツアーを組んでいるので、ご興味ある方は検索していただきたい。

ウンナー開始直前、夕焼けが。文字通りのマジックアワー。この色味を見るために沖縄に行っている。
ウンナーの前夜、島のスナックにて(毎年通う名店)。このあと、島人が集い、あっという間に満席に。
定宿のオーナーは釣船を保有。釣り客が大量捕獲した沖縄の県魚グルクンをいただく(グラタン風味、超絶美味)。
県魚グルクンをカルパッチョでいただく幸せ(普通、足が速いので刺身不可)。島に行ってよかった。
定宿に着いた瞬間、オリオンを飲む。港と集落を見ながらのオリオンは最高。この一瞬のためだけに一年働いた。
定宿近くのビーチ。もちろん完全貸し切り。サンゴも生きている。魚もたくさん。

 

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食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『血の雫』(幻冬舎文庫)、『レッドネック』(ハルキ文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)、『覇王の轍』(小学館)、『心眼』(実業之日本社)、『サドンデス』(幻冬舎)、『イグジット』(小学館文庫)『ゼロ打ち』(角川春樹事務)、『マンモスの抜け殻』(文春文庫)。『覇王の轍』(小学館文庫)、『浸潤』(別冊文藝春秋連載中)

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