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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2023.02.18 更新 ツイート

#35

雄勝の牡蠣を食わずに死ねるか!仙台食い倒れ編その1 相場英雄

〔使用機材:Fujifilm X-T30, SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary, BMW X2〕

昨年末、私は猛烈に疲れていた。通常の年末年始進行(締め切りが早まる、担当編集さんたちが苛立つ等々、作家稼業につきもののドタバタ)に加え、映像化案件やらの業務がいくつも重なり、疲労困憊だった。

疲れがピークに達したとき、私はいつも食で挽回を図る。昨年末の場合、〈疲れた→滋養補給→牡蠣〉。我ながら単純極まりない図式だが、これでなんとかやってきた。

 

牡蠣と思いついた瞬間、宮城県石巻市の地元紙記者の顔が浮かんだ(詳細は『6枚の壁新聞 石巻日日新聞・東日本大震災後7日間の記録』角川SSC新書 にて)。

この記者は震災前からのお付き合いで、同市郊外にある雄勝(おがつ)町水浜地区の出身だ。雄勝水浜は複雑に入り組んだリアス式海岸の奥にあり、牡蠣やホヤなど三陸名産の養殖が盛んなことでも知られる。

東日本大震災前の雄勝水浜地区。海が近い漁師町、綺麗な集落(地元出身の元書店員さん提供)。
国分町と水浜は約80キロ。毎日収穫直後にこの距離を走る

昨年末は所用で仙台に行くことが決まっていた。とびきりの牡蠣を食おうと同記者に相談したところ、雄勝水浜の牡蠣が東北一の歓楽街・国分町で食べられるというではないか。食い意地だけで生きてきたモノカキは、用事をさっさと済ませてお店へと馳せ参じた。

 

目的地は国分町のランドマークの真横にある(歌舞伎町のあのゲートと一緒、写真参照)。例によって店名と連絡先は記さないが、この店で牡蠣を食べるためだけに仙台に行く価値がある(完全なる個人の感想です)。

国分町のランドマーク。目的のお店は至近距離にある。
この牡蠣を目にしたら抵抗できない。

店の造りはスペインバル風で、入り口横にドカンと大きなショーケースが鎮座する。氷が敷き詰められたケースに、朝採れの大小様々なサイズの牡蠣がずらりと並ぶ。

なんせ、お店は雄勝の漁師さんが経営している。通常の流通ルートよりも相当早くお店に海産物が到着する仕組みなので、新鮮そのものだ。

もちろん、水揚げ後の浄化処理や厳重な検査を重ねて衛生管理がハンパない。まずは生でいただくことにした。

念願の雄勝水浜の生牡蠣とご対面。この皿を何枚いったのかって? 内緒。

日本各地、いや海外の名産地でも牡蠣を食らってきたが、雄勝産のそれは頭一つ抜けていた(完全なる個人の感想です)。三陸地域では、入江や河口ごとに貝の味が違うことを従前から知っていたが、牡蠣もその例に漏れなかった。

雄勝の牡蠣はとにかく味が濃い。海のミルク、それも特濃級。ブリンブリンの食感で、レモンや辛味調味料など添え物は不要(同)で、ひたすら口に放り込んだ。

先ほど震災に触れたが、お店を経営する漁師さんも津波で甚大な被害を受けた。訪問当日は、復旧から復興への過程で大変なご苦労をされた貴重なお話も聞けた。もう、こうなったら、心して食べまくるしかないではないか。

生で堪能したあとは、蒸し、そしてフライと王道コースを進んだ。白ワインがいくらでも飲めてしまう危険物だったことは言うまでもない。

蒸し牡蠣と白ワイン。これ以上の組み合わせはない。
金華鯖の生ハム仕立て。ただでさえウマいブランド鯖がこんなことに。

次にいただいたのは、同じ漁師さんが養殖しているホヤだ。ちなみにホヤは水揚げ直後から劣化が始まるため、私は産地の近くでないと絶対に食べない(かなり臭くなる)。だが、こちらでは心配ご無用。子持ちのホヤを捌いていただき、トゥルンとした身を口に入れる。牡蠣が海のミルクなら、こちらはフルーツ。マンゴーのような甘めの風味が口全体に溢れるのだ(甘みのあとで適度な塩味が追いかけてくる)。

雄勝水浜のホヤ。捌いた写真はブレブレだった(酔っていた)ので、こちらを。
雄勝水浜の特大ムール貝。デカいのに味は繊細。独特のトロミが染み出し、お肌ツヤツヤ確定の一皿。

いやはや、ヤバい。もう止まらない。あとは同じく養殖物のムール貝をシンプルなワイン蒸しで。写真では大きさが伝わらないが、拳ほどもある大きなムールで、こちらも味が濃い。

もう一度言うが、雄勝水浜の牡蠣、ホヤ、ムール貝を食べるためだけに仙台に行く価値がある(タイアップ企画ではない。いつものようにフルメタル自腹なので悪しからず)。

漁師さんの話を聞きながら周囲の客席を見ると、牡蠣好きの地元民が嬉しそうに生牡蠣を食べていらっしゃる。

牡蠣にうるさい仙台っ子が足繁く通うオイスターバー、どうよ。行ってみたいでしょ?

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食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『アンダークラス』(小学館)、『Exit(イグジット)』日経BP、『レッドネック』(角川春樹事務所)、『血の雫』(幻冬舎文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)、覇王の轍』(小学館)、『サドンデス』(幻冬舎、今秋発売予定)。

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