1. Home
  2. 暮らし術
  3. 大人バレエの世界
  4. 「近い人も遠い人も(配信の人も)おるけど...

大人バレエの世界

2022.02.05 更新 ツイート

#116

「近い人も遠い人も(配信の人も)おるけど、心の距離は一緒やでぇぇ」 丸山裕子

風さんのライブをひと言で表すと「包まれる」です。
音楽に包まれ、多幸感に包まれる。

 

あ、申し遅れました。今回は藤井風さん回です。昨秋のライブ後からずっと書きたい描きたいと思っていたのですが、「大人バレエ」と銘打っている手前、あまり頻繁に藤井風さん回なのはどーなの? と自粛しておりました。でも、もうガマンが限界です。書きます。描かせてください。

 

 

昨年末のNHK紅白歌合戦出場からのねそべり紅白(YouTube配信)、グッズ販売、「きらり」リミックス集リリース、セカンドアルバムリリース告知、それに伴うツアー予告、グッズ販売再びと、わずかひと月の間に畳みかけてくるチーム風。コロスキカ。

困る。
いや、うれしい。
ありがとう。

 

で、冒頭の「包まれる」お話です。

そこそこ長く生きている大人バレリーナ、これまで幾多のライブに参戦してきましたが、風さんのライブでの会場全体が「包まれる」感じは、今まで体験したことのないものでした。

大方のライブではステージ上のアーティストはいつだって与える側で、観客は受ける側で。そこには見えない境界がありました。ステージ上からの「オレを見ろ」という自意識が少なからず感じられるのも常でした。

でも、風さんのライブには境界がない。
ステージも客席もない。
自意識もない。
特にない。

いや。

ただ、すべてが音楽に包まれる。
やがて、多幸感に包まれる。

「近い人も遠い人も(配信の人も)おるけど、心の距離は一緒やでぇぇ」

ライブ初めのゆるゆるMCで放たれるこの言葉も、風さんに言われると本当にその通りに思えて、後方席でも気にならなくなります。

それは奏でられる音楽に、演奏そのものに説得力があるからで。「音楽で包む」音楽の力があるからで。音楽を聴くには、そこにいさえすればいいもんね。距離は関係ないもんね。素直にそう思えるのです。

でも、正直に言うと、あのイケ散らかしっぷりを至近距離で確認したい願望という名の邪念はあります。すごーくあります。いつか最前列当たれ!

ライブで手渡された多幸感は、ライブの後も続きます。思い出すたび蘇ります。ちょうどよい湯加減のお湯に浸かって身も心も緩みきったときのように、やわらかい気持ちになり、知らず知らずのうちに微笑んでいたりします。

「これって何かと似てる」「この感じ、以前もあった」と頭の中で検索をかけて、見つけました。わが家の犬たちのことを思い出したときと同じです。

犬と一緒にするな! なんて怒らないでくださいね。その家の犬は家族であり、人によっては子のような存在でもあり、なんなら遠く離れたところにいるスター的な誰かよりも、リアルに大切だったりします。
人生のうちの約20年を犬中心に生きてきた私にとっては、わが犬たちはまさにそういう存在です。邪心がなく愛だけでできた存在。思い出すとフッと身体の力が抜けて、心があたたかくなって、思わず笑顔になってしまう存在。

24歳の人間の大人の、他人の男が、アーティストで今やスター的存在でもある風さんが、そんな無邪気と愛のかたまりのわが犬たちと同じ何かを呼び起こすことこそ、奇跡のように思います。

 

しかし、これって風さんに限ったことなんだろうかと疑問に思った大人バレリーナ、確認と検証とENJOYを兼ね、他のライブにも参戦してみました。

歌がとても上手なあるアーティストは、ステージからガンガン発信する感じ。「オレを見ろ」という自意識全開。歌は素敵だったけど、ステージと客席が溶け合うことはありませんでした。

別のアーティストは技術的に発展途上で「音楽で包む」にはあまりにも未熟だったけれど、会場が一つになる予感はありました。

 

音楽に包まれるのは、楽曲とか演奏とか、音楽性の高さや完成度によるもの。多幸感で包まれるのは心なのかな。あるいは人柄とか。

ステージの真ん中に立つ人は多少なりともリーダーシップを求められるはず。「オレについて来い」なのか、「一緒に行こう」なのか、そのあたりの人柄の違いなのかもしれません。

大きな会場の大きなステージの上で大勢の人の前で、たくさん準備をして、装飾を施されて、心や人柄なんて見えそうにないけど、その人がどんな気持ちで、どんな心がけでそこに立っているか、日々どう生きているかって、意外と伝わるものなのかもしれませんね。

 

風さんはきっといい人だな。
仮に変人だとしても、いい人だ。

わるい人でも全然いいけど。
全部計算だったらあざとすぎて、それはそれで尊敬する。(何言ってんだ)

{ この記事をシェアする }

大人バレエの世界

いくつになっても憧れる華やかなバレエの世界。アラフォーからバレエを始めた著者による、楽しく、たくましく、哀しくもおかしい“大人バレリーナ”の日常。

バックナンバー

丸山裕子 イラストレーター

京都市出身。踊るイラストレーター。健康のために始めたバレエにはまり、寝る間を惜しんでレッスンに通う。『バレエ語辞典』の全イラストを担当。書籍や雑誌、広告にイラストを描いている。女性、育児、健康、犬と花に関するものが多い。イラストエッセイは『しあわせな犬生活を』(ドッグワールド)、『極楽いぬ生活』(ペピイ)。布花作家でもあり、『まんまるさん®︎』という古布を使ったオリジナルのアクセサリーを作っている。
Instagram  @yuko.illustrations

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP