1. Home
  2. 暮らし術
  3. 大人バレエの世界
  4. パリ・オペラ座で、パリ・オペラ座を観た

大人バレエの世界

2023.11.22 公開 ツイート

#112

パリ・オペラ座で、パリ・オペラ座を観た 丸山裕子

昨夏、パリ・オペラ座ガルニエ宮でパリ・オペラ座バレエ団のジゼルを観ました。ひと月半ほどのイタリア滞在中にパリ旅行をしたときのことです。

「パリ・オペラ座(ガルニエ宮)でパリ・オペラ座(バレエ)を観る」

これはいつか実現したいことの一つでした。ある目的でイタリアに行くことを決めた瞬間から「滞在中に絶対にパリ・オペラ座バレエ団だけは観に行くぞ!」と密かにかたーく心に誓っていました。

とは言え、イタリア行き自体かなり急に決めたことだったので、バレエ公演のチケットなど準備しているはずもなく。シーズン初めに売り出されるパリ・オペラ座バレエ団のチケットはすでに完売していました。

そう言えば、週末弾丸でパリ・オペラ座の公演を観に行くコアなバレエファンの皆様は、シーズン初めにまとめてチケットを予約していたっけ……(泣)

 

絶望的な気持ちで、

「オペラ座にバレエを観に行きたいのにチケット完売してるー(泣)」

とTwitterで呟いたところ、

「オペラ座のサイトをチェックしていると、チケットが出ている時ありますよ」

と、親切なリプライが(泣)

 

「ヨーロッパに滞在しているなら、朝チェックできるので、きっと見つけられますよ」

と(泣)

 

それから毎朝サイトをチェックすること数日、めでたく希望の日程のチケットを手に入れることができました。演目はジゼルです。しかもドロテ&ユーゴという観たかった配役。嬉々。

ジゼルはこれまでに何度も観たことのある演目です。パリ・オペラ座のジゼルも、日本公演で当時の最高とも言えるキャストで観たことがあります。が、しかし、ガルニエ宮で見るジゼルは没入感が別次元でした。

会場全体がジゼルの空気で覆われ、今まさにそこで起こっていることを、私も同時代の者として目撃しているようでした。

どっぷりジゼル。

休憩中もジゼルです。

ジゼルという演目とほぼ同時代に造られた重厚かつ絢爛豪華なガルニエ宮は、休憩中も観客を物語の世界から離しません。現代というリアルには戻らないまま、二幕でさらに没入していきます。

会場ごとうす青いジゼルの世界に包まれている中、明るく浮き立つオケピはそこだけがリアル……と言うよりは、ポッカリと口を開けた異空間への入り口のようでした。あそこを通り抜けるとナルニア国へ行っちゃうのかも。

 

こんな風に感じたのは、舞台を縁取るガルニエ宮の荘厳さはもちろんのこと、私が外国人で旅行者だからかもしれないと、ふと思いました。

劇場に入ったときから、いや、何ならパリの街を歩いている時から、もっと言えば欧州の空港に降り立ったときから、外国人旅行者である私にとっての鑑賞のベースは作られ始めていたのかもしれません。

 

パリの街を散策し、ガルニエ宮にたどり着き、歴史の重みを感じる美しい内装に囲まれた憧れの大階段を上り、年季の入った扉をくぐってボックス席の赤いベルベットの椅子に腰掛ける。目の前に並ぶ赤い椅子たち。向かい側のボックス席に座る髪の色も肌の色も色々な観客たち。天井のシャガール。

この時点で、これから目前で繰り広げられるであろう物語の世界に没入する準備はもうすっかり整っています。いや、もう半分以上入り込んでいるし、すでに感動していたと言っても過言ではありません。

バレエが生まれた文化の中でバレエを観る、それはどっぷりバレエに浸り、ジゼルと同時代のひとりとなって出来事を目撃する、そんな体験でした。

外に出たのは21時過ぎだったでしょうか。空はまだ薄明るく、バスに乗って友人たちの集うモンマルトルのお店に向かいました。旅行者の私は、やっぱりまだジゼルの世界に包まれたままです。

素敵だった。

美しかった。

また包まれたい。

ガルニエ宮初体験で、演目やダンサーについてどうこう述べる余裕はまだなく、浮かぶのはこんな言葉ばかり(語彙力)

「パリ・オペラ座(ガルニエ宮)でパリ・オペラ座(バレエ)を観る」それはバレエ ‘だけ’ を観るのではない特別な鑑賞体験でした。また彼の地でバレエの世界にすっかり包まれたいと強く思っています。

 

ところで、公演中に驚いたことがひとつ。

トイレが少ない!

しかも誰も並んでなーい!!!

私の席は2階のボックス席でしたが、近くのトイレには個室が2~3室しかありませんでした。なのに、誰も並んでいないのです! 日本では、何十と個室があったとしても、幕間になるや否や猛ダッシュして長蛇の列に並ばなければ個室に辿り着けないというのに!

なんで!??

 

一方、ホワイエのシャンパーニュを供するカウンターには超超長蛇の列ができていました。

旅の終わりにミラノのスカラ座にも行きましたが、やはりトイレは少なく、かつ、並んでいる人はいませんでした。たしかに暑い暑い夏ではあったけれど、、汗はかくけれども、、、

なんで!???

{ この記事をシェアする }

大人バレエの世界

いくつになっても憧れる華やかなバレエの世界。アラフォーからバレエを始めた著者による、楽しく、たくましく、哀しくもおかしい“大人バレリーナ”の日常。

バックナンバー

丸山裕子 イラストレーター

京都市出身。踊るイラストレーター。健康のために始めたバレエにはまり、寝る間を惜しんでレッスンに通う。『バレエ語辞典』の全イラストを担当。書籍や雑誌、広告にイラストを描いている。女性、育児、健康、犬と花に関するものが多い。イラストエッセイは『しあわせな犬生活を』(ドッグワールド)、『極楽いぬ生活』(ペピイ)。布花作家でもあり、『まんまるさん®︎』という古布を使ったオリジナルのアクセサリーを作っている。
Instagram  @yuco.illustrations

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP