
スタジオのおさらい会が開催されたのは、私がバレエに対してグレていた秋のことでした(vol.117参照)。出演しなかったのはもちろんのこと、しばらくバレエから離れていたせいもあって、完全に他人事として舞台を眺めてしまいました。
他人事というと冷たい感じがしますが、物事を客観的に見ることは大切です。特にバレエは本来は人に見てもらうものですから、外からどう見えるかを知ることは、上達のために欠かせません。
何であれ、一旦中の人となって詳細やその大変さを知ると、客観的な視点は失われがちです。大人バレエも例外ではありません。立ち方ひとつ、パのひとつを習得する難しさに日々直面しているがゆえに、挑戦した! できた! 頑張った! にフォーカスしてしまい、本来あるべきバレエらしさや美しさへの評価が後回しになったりします。
素人の習いごとなのですから、頑張ったならそれで良いと言えばそうです。いや、頑張る必要すらなく、楽しければ良いのかもしれません。
でも、やっぱり、せっかくバレエを習っているのだから、美しかった、バレエって素敵と言われたいじゃないですか。私はそこを目指したいです。
他人事として傍観したおさらい会は、バレエがバレエらしく見えるのに何が不可欠かを客観的に分析する絶好の機会でした。
大人バレエクラスに通う人は様々です。子どもの頃からの長いキャリアのある人もいれば、ここ1年ほどの間に習い始めたばかりの人もいます。が、バレエに見えるか見えないかには経験の多少にはあまり関係がなく、いくつかのポイントがありました。
まずは、体幹。
体幹の強い人は立ち姿に安定感があって美しく、そこを起点とした動きも美しいです。
そして、足。
爪先をのばすとか、足首を伸ばすとか、足裏を使うとかは、バレエのかなり特徴的な動きです。足の使い方が丁寧な人は、バレエらしく見えました。
あと一つは、中の方の筋肉を使えているかどうか。
外側の筋肉をゴリゴリ使って動くのではなく、中の方の細い筋肉を使って腕や首を動かすイメージです。これも、バレエらしさを醸し出す要素です。
他には「膝を伸ばす」とか「肘を引かない」とか「背中から腕を動かす」とかいろいろあるのですけど、大きくは上の3つで、全てがそこに集約されるように思いました。
ああ、なんだ。
あれもこれも、この17年間、毎日、毎週、毎月、毎年、先生に言われ続けていることばかりです。
雑に3回転するなら丁寧に美しく1回転を。
難しい技よりもまず正しく立つことを。
バレエに見えるかどうかの境目は、基本を正しく丁寧にできているかどうかという、しごく当たり前のことでした。たとえ習い始めたばかりの拙い動きでも、方向性が合っていれば美しく見えるものです。それは子どもたちのレッスンを見ているとよくわかります。
おさらい会や発表会で何を目指すかは、個々人によってもスタジオの方針によっても違います。難しい踊りに挑戦する、それもまた良しです。
でも、バレエらしく美しく見えることを目指すなら、まず地面を押してちゃんと立ち、中の筋肉を使って丁寧に身体を動かすこと。筆のように足裏を使って、ちゃんとつま先や膝を伸ばすこと。難しい技に挑む前に。
だーかーらー、
それが一番難しいんだってば!
知ってる。
身に沁みてる。
できるならやってるから。
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大人バレエの世界

いくつになっても憧れる華やかなバレエの世界。アラフォーからバレエを始めた著者による、楽しく、たくましく、哀しくもおかしい“大人バレリーナ”の日常。
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