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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2021.11.18 更新 ツイート

#20

ドヤ顔もバエもいらない 普段使いのお鮨屋さん発見編 相場英雄

〔使用機材:RicohGR3〕

当欄で飲み食いのエッセイを始めて一年半以上が経過した。町中華や蕎麦、そして弁当に自炊飯となんだか低コストのネタばかり綴ってきたが、今回は違うぞ。満を侍して、あの高級な食べ物の登場、主役は鮨だ。実はサラリーマン記者時代から、かれこれ二〇年以上お世話になっているお店が都内に三軒あるのだが、いずれもメディア露出は絶対拒否。いつか鮨を取り上げたいと思っていたのだが、今回はようやく念願がかなった形だ。

先月の当欄でも触れたが、私は食い道楽の祖父に薫陶を受けた。幼少期に頑固爺の晩酌に毎晩付き合った結果、魚が好きになった。とくに、プロの職人が〈仕事を施した〉魚介類が大の好物だ。

 

さて本題。今回のお店は、なんと私の仕事場がある高田馬場エリアで、今年四月に開店したばかりだ。

若き店主が掲げるコンセプトは〈気兼ねなく来れるみんなのおすしやさん〉(原文ママ)。とある日、初めてお店を訪れると、まさに店主の狙い通りの客層で、地元の商店主さんやら、近所の事務所関係者が肩肘張らずに和気藹々と食事を楽しんでいた。

ここだけの話だが、〈次の予約は一年後〉だの、〈食通の誰々さんがご贔屓〉的なお寿司(鮨)屋さんが苦手、いや嫌いだ。

都内の高級商業地に着飾った人たちが集い、ハイソな人たちの噂話が飛び交い、食の蘊蓄マウントが充満するお店では、正直なところ食った気がしない。それにその種のお店は値段が高いので、零細モノカキには敷居が高い、というか自腹では行けない(亡き祖父の教えは、メシは自分のカネで食え)。

あとでわかったのだが、この若き店主は私が長年通った都内の名店出身だった。頑固を絵に描いたような親方の下で修行を積んだ人なので、〈仕事〉はたしかだ。写真を見ていただければご理解いただけると思うが、魚介のシメの作業、酢の扱い、そしてシャリの具合は、あの親方直伝だとすぐにわかった。

アジ  大衆魚も職人の手にかかればこの通り、美しい食べ物に昇華する。
中トロ  細かい包丁が入ると、単なる切り身が上等な中トロに化ける。
コハダ  青魚フェチとしては、もうなんも言えねえ状態に。
シンイカ コドモのイカ。驚くほど柔らかく、しっとり。そして溶ける。
イクラ 店主が自ら仕込むイクラ。もちろん、プチプチなど絶対にしない。

〈気兼ねなく〉のコンセプト通り、超高級食材がずらりというわけではなく、その日厳選したネタを、きちんと手をかけて提供するという至極真っ当なスタイルだ。お会計も明朗だ。なにせネタの値段が店内にしっかり掲示されているので、お勘定の段で慌てることもない。

ノドグロの煽り 店主オリジナル(多分)のノドグロの炙り。一手間も二手間もどころの騒ぎではなく、凝ったつくり。
巻物 シメはいつも巻物。きゅうりの切り方で職人の腕がわかる。

昨今の動画再生サイトや各種SNSでは、高級食材をこれでもかと見せつける職人、それに一喜一憂する客の顔が溢れている。一方、この店は非ドヤ顔、非バエ系だ。各種のグルメサイト上でも投稿数が少ない穴場。ドヤ顔職人好きな人、あるいはバエ狙いの人が増えるのは本意ではないので、今回は地名だけでお店のヒントはおしまい。興味があれば、自分で探してね。

お刺身盛り合わせ 握ってもらう前は定番のお刺身。炙ったサンマ、戻り鰹、昆布締めの鯛。サンマの肝で作ったソースを付けると、飛ぶ。
アワビの肝の塩辛 鮑の肝を使った塩辛。齢54にして初めての味。お酒がいくらでも飲めてしまう危険物。
穴子の炙り 絶妙の火加減で炙った穴子。こちらもいくらでも酒が飲める。

さて、あるネットメディアの編集者から聞いたお話を披露しよう。〈SNSで鮨を扱うと“いいね”が激増する傾向がある〉とか。本稿の評価はいかほどか。別にアクセス数が増えても稿料がアップするわけではないのだが、ちょっと気になるなあ。

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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『アンダークラス』(小学館)、『Exit(イグジット)』日経BP、『レッドネック』(角川春樹事務所)、『血の雫』(幻冬舎文庫 10月7日発売)。

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