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美しい暮らし

2021.06.05 更新 ツイート

天神下つれづれ日記#11

象を借りてくる男 矢吹透

最近ね、複数の知人に同じようなことを言われたのですよ。

透ちゃんのこと、世の中の人たちは案外、誤解しているよね、と。

ん?、世の中の人はわたくしのことを認知すらしてないのでは?、と思ったりいたしますが、百歩譲ってわたくしを認知している方がこの世に何人かでもいるとしたら、その方たちがわたくしの書く文章などから抱いている矢吹透のイメージは、叙情的というか、アーティストっぽい人だろうと知人たちが言うのです。

 

でも、透ちゃんはもっと実務的な人だったりするんだよね、と。

ふうん、そうか、俺のイメージってそんな感じで、実際はまた違った感じなのかー、とわたくしはふむふむと考えます。

まあね、叙情的なところもあると思うんですよ、そして実務的なところもある。

でも、なんとなくイメージ的には叙情が勝っている。しかし、リアルにはどちらかと言うと実務っぽい人間である。

そうねー。そうかもねー。

例えばね、わたくし、象を借りて来なければいけないとしたら、借りて来てしまうような人間なのですよ。

動物園とか動物プロダクションとか、片っ端からじゃんじゃん連絡を取り、なんならインドやアフリカなど外国とも直接に英語で交渉をして、象をアレンジする。象を借りるとなったらね、象の宿泊施設、世話をするスタッフ、象の食事、外国から呼ぶとしたら輸送・検疫・保険など、もろもろの手配の必要が生じる。費用的な問題もあるでしょう。考えられ得るあれこれを予め想定して、その段取りをつける。

まあ、わたくし、実際に象を借りたことはないですけどね。でも、借りるとしたら、どんな方法を自分なら取るのか、今、すらすらっと紙に書き出し、実際の行動に移すことができる。

そういうところが、わたくしをご存知ない方にとっては意外だったりするのかなー。

透ちゃん、象が必要なんだけど、と言われたら、わたくしはすぐに象を用意する。

そんなわたくしが日々のつれづれを綴る「天神下つれづれ日記」も今回で早くも11回目の更新となりましたー。

 

さて、ここ数回は父の転居ネタを書き続けてまいりましたが、おおよそ一段落いたしましたね。

父の新居の引っ越し荷物も片付きましたし、やらなければならない事務処理のあれこれなども済みました。

平常運転の日々が戻ってまいりましたー。

まあ、わたくしの以前の日常と比較して、父のケアに関する作業が多少は増えましたが、どうってことないと言えばどうってことない。

父は頭もクリアですし、足腰にも問題はない。基本的に自分のことは自分でこなしますので、わたくしのやらなければならないことといえば、洗濯や掃除、たまにご飯を作って食べさせたり、それくらい。

わりとのんびりとしております。

むしろね、父の方が忙しくしておりますよ。独り暮らしの気楽さか、交通の便がよい立地に越したせいか、訪れる友人やら編集者の方やらが連日引きも切らず、かと思えば、地方に日帰り出張に出かけたり、わたくしよりもよっぽど忙しなく毎日を過ごしております。

エンジョイ&充実の日々というのかな、楽しそうな感じが伝わってきて、なかなかよいなと思っております。

82年間、一生懸命生きて来たんだからね、あとは目一杯楽しんで生きて頂きたい。

楽しくないことはもう何ひとつやらなくていいからとわたくし、父に常々言っているんですのよ。

ほんとにそう思ってます。

面倒なことは全部、実務に長けている(と言われる)わたくしが処理して差し上げますから。

 

そうそう。コロナ・ワクチン接種のネット予約を父のためにやってあげたのですがね、あのシステム、よくないねー。(少なくともわたくしの居住している区のシステムに関しては。)

老人には絶対できないよ、あれは。うちの父はわりと電脳的なリテラシーの高い方だけれど、それでもあれはムリ。

サイトの出来もよくないし、混んでるし。

俺ですら、混雑と試行錯誤で30分はかかったかんね。

しかも、やっと取れた1回目接種の予約が3週間も先、その接種を済ませたらようやく2回目の予約が出来るようになって、しかし、最低3週間は間を置かなければならなくて、ってもう気が遠くなるようなペースののろさよね。

高齢者でも医療従事者でもないわたくしに接種の順番が回って来るのは一体いつになることやら、って感じやねー。

まあ、仕方がない。

文句を言っても始まらないので、感謝・感謝♥の気持ちで生きましょう♪

 

禁酒法下の生活にも慣れましたわ。

あれほど、日々飲んだくれていたわたくしが、禁酒法制定以来、ほぼアルコール・ゼロで生きてますからね。

むしろ、アルコールを摂取するとちょっと調子が悪くなるくらい。

アルコールは必要ないんだけどね、でも、飲みに出かけて、馴染みの人々と語らうひとときを奪われた悲しみは大きいわ。

そういうひとときがわたくしの活力の源みたいなものだったからね。

わたくしの贔屓の横丁も明かりが落ちて、死んだようになっておりますよ。しみじみと寂しく切ない。

 

そうそう、ノンアルコールビールが案外美味しい、と気づかされたことが数少ないよかったこと。

最近のノンアルビールはよく出来てるねー。

飲み屋さんで頂くと、本当のビールと同じくらいのお値段でアルコールが入っていないというのはちょっと損している感が否めないが、まるでビールを飲んでいるかのような気分にさせてもらえるのは悪くない。

但し、ノンアルビールを飲んでいるとすぐお腹がいっぱいになってしまうのが難点。

本物のビールはじゃぶじゃぶ飲めるんだけどね、ノンアルビールはそんなに量を飲めない不思議。

飲食を営んでいる方々の苦境もございますから、遠くない将来、禁酒法が解かれる日を心待ちにしておりますけれども。

 

そういえば先般、田村正和さんご逝去の報がございました。20年近く前、お仕事をご一緒する機会を頂き、半年ほどお側で過ごしました。正和さん主演のドラマ2本のプロデューサーを任じられたわたくしは、ニューヨークにも一ヶ月ほど共に滞在し、ロケを行ったりいたしました。撮影の間は、朝から晩までずっと一緒でした。

報道などを見ていると、正和さんは人前では食事をなさらなかったなどとありますが、そんなことはないんですよ。わたくし、数えきれないくらい何度も食事をご一緒いたしました。まあ、ご本人はそんなにたくさんは召し上がらないんですが。ゆるゆるとワインなどを飲みながら、皆がわしわしと食うのを面白そうに見ている。あれも食え、これも食え、といっぱい注文してくださる。東京でもニューヨークでも、いいお店にいっぱい連れて行って頂いたなあ。ロケの終わりなど折々にはプレゼントを下さったり、気遣いの濃やかな方でしたね。

頂いたプレゼントで今でも記憶しているのが、某ハイブランドの牛革のバックスキンのシャツ。ぬめぬめとした総革の素材が大変に高価であろうと思わせる品。しかし、いかんせんサイズがちょっと大きかった。正和さんの目にはわたくしはさぞや大男に見えたのでしょうね。

その節は、不束なわたくしのご無礼が多々ございましたことをお詫びしつつ、ご冥福をお祈り申しあげたいと思います。またいつか、空の向こうでお目にかかります。

近年、わたくしの周囲で、逝かれる方々が増えてまいりました。年を取るってそういうことなのかなあ?

正和さんとのニューヨーク・ロケを共にした竹内結子ちゃんも年若く逝ってしまわれた。正和さんとの撮影の緊張を優しく和ませてくれた津川雅彦さんも既に逝かれた。今頃、向こうで皆でわいわいと楽しくやっているかな?

諸行無常。

そんなこんなでまた次回♪

近隣の神社の祭礼は今年も中止ですが、せめて祭り袢纏を着てノンアルビールで乾杯♪

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関連書籍

矢吹透『美しい暮らし』

味覚の記憶は、いつも大切な人たちと結びつく——。 冬の午後に訪ねてきた後輩のために作る冬のほうれんそうの一品。苦味に春を感じる、ふきのとうのピッツア。少年の心細い気持ちを救った香港のキュウリのサンドイッチ。海の家のようなレストランで出会った白いサングリア。仕事と恋の思い出が詰まったベーカリーの閉店……。 人生の喜びも哀しみもたっぷり味わせてくれる、繊細で胸にしみいる文章とレシピ。

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