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  4. 禁断のラムづくし編

〔使用機材:RicohGR3〕

十数年前、かつて私が忙しなく漫画原作を書いていた頃のお話だ。当時の担当編集さんが結婚された。担当さんの人徳からか、超がつくほどの売れっ子作家さんたちが披露宴に参集された。私の対面には、国民的人気漫画をいくつも世に送り出した大巨匠が座られた。絶対に粗相があってはならない。緊張した私はひたすら酒を飲み続け……案の定出来上がってしまった。隣にいた某誌編集長に対し、私は小声でこう言った(らしい)。

 

〈一回でいいから○○○子先生に、“だっちゃ”って言ってほしいなあ〉(秋の叙勲で紫綬褒章を受賞された女性作家さんです=おめでとうございます)

すると普段温厚な編集長が鬼の形相でこう告げた。

〈バカ野郎、俺の首を飛ばす気か〉

もちろん私は編集長に首を絞められ、強制退場させられた次第だ。

閑話休題、本題に入る。

三カ月ほど前、仕事場の近所に珍しい店ができるとの情報を得た。何が珍しいのか。答えはラムだ。この辺りから本稿のオチを想像し始める読者が多いと思うが、優しい気持ちで今しばしお付き合い願いたい。

ここ数年、私は毎朝のルーティンとして筋トレを続けている。コロナ禍の昨今はトレーニング量を増やし、食事にも気を遣う。筋肉増のためには、良質な赤身肉を食うべしとの先達の言葉を思い出し、ラムを大量摂取すべく、新規開業したお店に足を運んだ。

場所は、かつてフジテレビ本社があった新宿区の曙橋。鄙びた商店街の中程にお店はある(今回も店名は不掲載、検索しやすいから自分で調べてね)。

店に入ると、私はオススメのラムのユッケから食べ始めた。オリジナルのタレをまとったラムと卵を混ぜ合わせ、食パンにオン。もう、ヤバいなあ、いくらでも食える。ちなみに、パンは本欄の第6回で登場したBtoBの専門店謹製で、ユッケとの相性は抜群。そして、オーナー激推しのラムメンチ、様々な部位をオーダーできるバター焼きへとシフトアップしていく。都内にラム、あるいはジンギスカンのお店は数多あるが、こちらのように様々な種類をチョイス可能な例は少ないはずだ。もちろん、ラムの一番の醍醐味を味わえるチョップもある。ぜひ手掴みでワシワシ味わっていただきたい。

同店、ランチもお気に入りだ。とくに他ではめったにないラムカツ定食が格別にウマい。スタッフが鰻のひつまぶしに着想を得たという味変方式の定食で、最後にラムのミンチをご飯にのせ、お出汁をかけるお茶漬けは悶絶級の逸品だ。

このお店に出かける直前、ラム好きの某社関係者に声をかけ、同行してもらった。ユッケが目の前に来た直後、この関係者がこう曰った。

〈うわぁ、旨そうなラムだっちゃ〉

あぁぁ、やっぱりそうきましたか。なんだかなぁ、お粗末。もちろん、お店のスタッフが虎柄ビキニで接客している、なんてことはないので念のため(あったら毎日行くわ)。筋肉を喜ばせるため、また近いうちに行くとしますか。

 

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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』『KID』(幻冬舎文庫、幻冬舎)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。ランティエ(角川春樹事務所)で『レッドネック』連載中。最新作は『アンダークラス』(小学館)

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