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アルテイシアの59番目の結婚生活

2020.09.18 更新 ツイート

夫と男児を育てるのが無理ゲーすぎる問題 アルテイシア

前回の記事『性差別や性暴力の話になるとケンカになる問題』には、沢山の膝パーカッションをいただいた。

「何でも話せる夫なのに、性差別や性暴力の話になると通じない」という声に「わかる!」と膝を打ち過ぎて、おいらのヒザ大僧正はボロボロだ。

自分にとってどうでもいい相手であれば、どうでもいい。そうじゃなく、誰よりも信頼しているパートナーに理解してもらえないことがつらいのだ。

性暴力については特に、男女の意識のギャップが大きい。

前回も述べたように、性犯罪の加害者の95%以上が男性、被害者の90%以上が女性である。

 

ほとんどの女性は何度も性被害に遭っているが、ほとんどの男性は一度も性被害に遭ったことがない。

その非対称性ゆえに、夫に痴漢の話をしたら「でも冤罪もあるよね」と返されて「私だって被害者なのに、なんでそんなこと言うの?!」と怒りと絶望を感じるのだ。

交通事故の被害者に「でも当たり屋もいるよね」とは言わないだろう。なぜ性暴力の話になると脳がバグってしまうのか?

それは、性暴力をエロネタやギャグとして消費するメディアの影響も大きいだろう。

つい先日も、アルテイシアは激怒した

かの邪知暴虐を除かねばならぬ(グレッチで)と決意した。それは会社員時代の元同僚(45歳男性)のFacebookの投稿を見たからだ。

その元同僚は「男が路上で女性を押し倒して下着を奪った事件」の記事をシェアして、「パンツ下さい、と土下座してお願いせえ! ほんまオモロイニュース多いわ」と書いていた。

それに対して、複数の男性が「勃たなかったから言い訳したのでは(笑)」等とコメントを寄せていた。

吐き気をもよおすホモソとはッ!!

とホモソノリに呆れてモノも言えなかったが、黙って見過ごすわけにはいかない。

誰かが注意しなければ、今後も彼はセカンドレイプ的な発言をまき散らし、それに傷つく人が大勢いるだろう。

というわけで、私は以下のコメントを返した。

「性暴力を面白ネタ扱いするのやめません? 現実に性暴力被害者はいっぱいいるんですよ。これで伝わらなければ『この事件の被害者が自分の娘だったら笑えるか』と想像してみてください」

その数時間後、彼はしれっと投稿を削除していた。

貴様、それで済むと思うなよ?

というわけで、私は彼に追いメッセージを送った。

「ディオニス王くん(仮名)を責めたいわけじゃなくて、感覚のズレが危ういなと感じました。
性暴力被害のトラウマに苦しむ人はたくさんいます。
無自覚に誰かを傷つけたくないと思うなら、よかったらこのコラム(前回記事のリンク)を読んでみてください。
そしてよかったら、コラム内で紹介している本を読んでみて下さい(太田啓子さん斉藤章佳さんの著書のリンク)」

私めっちゃ丁寧で優しいやんか。

と思っていたら、すぐに返事が返ってきた。

「はい、失礼しましたー。配慮に欠けました」

てめえナメてんじゃねえぞ?

とメロスならぬアルス(アヌスではない)はプンスコしたが、彼はべつに暴君ではないのだ。

普段は常識のある中年男性であり、二児の子を持つパパでもある。そんな普通の男性の感覚が麻痺している、それがヘルジャパンの現実なのだ。

もしこれが児童虐待や動物虐待のニュースだったら、絶対ネタにはしないだろう。彼は配慮に欠けていたわけでも、ついうっかり失言したわけでもない。

「性暴力は笑いのネタにしてもいい」と認知が歪んでいるため、Facebookに実名でこんな投稿をしてしまったのだ。

つまりディオニス王くん(仮名)は邪知暴虐ではなく、無知蒙昧なのである。

性暴力に遭って一生苦しむ女性がいることなど想像もできない、それは知識がないからだ。

先日、斉藤章佳さんと対談した時に「(性暴力)被害者の中には、何年経っても上から覆い被さられることが怖くて、歯医者に通えないという方もいる。天井を見て寝ることさえできない方も」とおっしゃっていた。

加害者プログラムの中には、こうした被害者の声を伝えて、被害者理解を促すトレーニングもあるそうだ。

こうした現実を加害者以外の男性にも知ってほしい、ディオニス王くん(仮名)にも是非。

と願うが、きっと私のコラムも読まないんだろうな。メッセージを見て「うるせえババアだな」と思っているんだろう。

ババアになって本当によかった。だって私が彼に注意できるのは、同世代のババアだから。

この件について年下のガールズに話したら、みんな地球の果てまでドン引きしつつ「呆れてモノも言えないけど、私だったら何も言えなかったです」と言っていた。

私も20代だったら、45歳のおじさんに注意なんてできなかった。また、彼と仕事のつながりがあっても言えなかった。

拙者が言いたいことを言えるのは、何のしがらみもないフリーランスの野良作家だからだ。

そう考えると、ディオニス王くん(仮名)が気の毒な気もする。周りの誰も注意してくれないから、彼は無自覚なまま裸の王様になってしまったのかもしれない。

なので「アップデートは大事やで」と、このコラムのリンクも送ってあげよう。それでナメた返事がきたら、またコラムに書こうと思う。

それにしても、アヌスは考えずにいられなかった。彼の妻があの投稿を見たら、どう思うのだろうかと。

性暴力を面白ネタ扱いする夫と子育てするのって、げっさキツいんじゃなかろうか?

彼ほど極端じゃないにせよ、夫婦間の意識のギャップに悩む子育てママは多い。「夫と男児を育てるのが無理ゲーすぎる(泣)」という嘆きもよく耳にする。

周りの子育てママたちは、子どもを被害者にも加害者にもしないため、日々心を砕いている。

小学生の息子を持つ女友達は、息子がアニメの女湯覗きシーンにニヤニヤしているのを見て、ショックを受けたそうだ。

彼女が息子に「これはいけないことなんだよ」と説明すると、「いちいち目くじら立てなくても」と夫に言われたという。

私だったらアルスからハルクに変身して「責任放棄やないかー!!!」と緑になってキレると思う。

だって「これはいけないことだ」とわからないまま、息子が「女湯覗こうぜ!」と友達に誘われたらどうする?

現実に女湯を覗いて退学になる男子学生もいるのだ。子どもたちを守ることは、一番身近な大人である親の責任じゃないか。

周りの子育てママたちは、子どもにジェンダーバイアスを刷り込まないことにも心を砕いている。

「女の子だから○○できない」「男の子だから○○しちゃダメ」といった呪いに苦しんでほしくない、自分らしく生きてほしいと願って。

にもかかわらず、一番身近にいる夫が呪いをかけるからマジ無理ゲー(泣)という嘆きをよく耳にする。

女友達の夫は、4歳の息子が泣くと「男の子だろ!」と言うらしい。

彼女が「そういう言い方はしないで」と注意すると、「男社会では強くないといじめられるんだ」「この子のために言ってるんだ」と反論して、聞く耳をもたないという。

この世界は地獄だ……とアルスからアルミンになりつつ、夫の気持ちもわからなくはない。彼も男社会で生き延びるため、必死に強がってきたんだろう。

そんな男性にこそ、ジェンダーについて学んでほしい。

『これからの男の子たちへ』の対談の中で、星野俊樹さんが以下のように語っている。

『(男の子が転んだ時に)「そうだよね、涙が出るよね、泣いていいよ、怖かったよねえ」と共感し、その不快な感情を言語化してあげることで、はじめて子どもは「これは恐怖なんだ」と感情を認識し、受け入れることができる』

『子どもが自分の負の感情を表出しても、他者が受け止めてくれると感じること。その積み重ねこそが、子どもの感情の健全な発達につながるのです』

『それなのに、言語化する前に「痛くない」とか「泣かないお前は偉い」と言われてしまうと、子どもは自分の負の感情は受け入れてもらえないことを体験的に学び、感情を抑え込んでしまいます』

そうした積み重ねによって『自分や他者の感情に触れることを恐れて、回避するような心理状態』になったり、『自分の感情を認識できない。同時に、他人の感情に共感する力も育っていない』状態になってしまうという。

という解説に「わかる!」と膝を連打しすぎて、おいらのヒザ大僧正は危機一髪。

私も「自分の感情がわからないと、他人の感情もわからない。自分の感情を言葉にできないと、他人と深いつながりを築くことも難しい」とコラムによく書いている。

また、うちの父親が自殺したのは、男らしさの呪いが原因だと思っている。

「男は稼いでナンボ」という呪いのせいで、父は事業に失敗した自分を認められず、人生に絶望したのだろう。
また「男は強くなければ」という呪いのせいで、他人に弱音を吐けず、助けを求められなかったのだろう。

男性の自殺者数は女性の2.2倍だそうだ。

というと「ほらみろ、男の方がつらい! 日本は女尊男卑だ!」とクソリプが飛んでくる。「アンダルシアのコラムは糞」とか、ろくに読まずにクソリプしてくる男性も多い。

さらに「男はつらい、つらいから女を殴る!」とDVや性暴力におよぶ男性もいる。男らしさの呪いが女性に対する加害へとつながるのだ。

そんな彼らに言いたい。つらいなら、つらいと言えよ。言えないなら、なぜ言えないか考えてみなよ。

星野俊樹さんは「過去の自分は男らしさの支配下にあって、全然幸せじゃなかった」「その呪いを解除できたのは、ジェンダーに関する学びを得たこと、そういうことを話せる人が増えたことが大きかった」と話している。

昨今「フェミニズムやジェンダーを学んで、男らしさの呪いが解けて楽になった」という男性の声を耳にするようになった。

一方で、多くの男性はフェミニズムやジェンダーの記事を読まない。「一番届いてほしい人たちに届かないんですよ」と編集さん達がよく嘆いている。

周りの女性陣からも、同じような嘆きが寄せられる。

「フェミニズムやジェンダーについて、夫に知ってほしい」
「性差別や性暴力について、夫婦で話し合いたい」
「でも、その願いはなかなか夫に届かない」

そんな夫たちにこそ『これからの男の子たちへ』を読んでほしい。

まず第一に、文章が超わかりやすくて読みやすいから。

「10歳の息子が読んで『最初から最後まで、もっともだなぁと思って良かったよ』と感想を教えてくれた」というツイートを見かけたが、なんと立派な息子さんじゃ。

10歳の息子さんが読めるんだから、おっさんに読めないはずがない。

またフェミニズムやジェンダーについて説明しようとしても「どこから説明していいのやら」状態になりがちだ。
かつ性暴力に関しては、自身のトラウマが刺激されてつらいし、うまく話せない女性が多いと思う。

それに妻の意見よりも、第三者の専門家の意見の方が、素直に耳を傾ける夫が多いと思う。

本音は「妻の話にも耳を傾けろや!!」と緑色になって大暴れしたい。ズボンだけは破れない仕組みなので、全裸は回避できるのだ。

何の話をしてたんやっけ。そうそう、女友達から「夫にこの本を読んでと渡したけど、無言でスルーされた」と聞いて「読めやーー!!!」と緑色になった私。

拙者の推しはハルクじゃなくピーター・クィルなのに。緑色ならガモーラちゃんになりてえわ。

何の話をしてたんやっけ。そうそう、妻が本気で言わないと、本気で耳を傾けない夫は多い
「もう離婚する!」と妻が家出して初めて、事の重大さに気づく夫などもあるあるだ。

「なんでいちいち本気出さなあかんねん」と、げっさ疲れる気持ちはむっさわかる。そこで以下のテンプレを考えたので、LINE等で送ってみてはどうだろうか?

『あなたにこの本を読んでほしいです。
この本に書かれていることは、私にとってすごく大切な問題だから。
あなたを責めたいわけでも、男性を批判したいわけでもありません。
ただ私自身、過去に性暴力や性差別を受けて、何度も傷ついてきました。
だからこそ、一番信頼するパートナーに理解してほしいのです。
それによって、2人の関係は今よりもっと良くなると思うから』

こんなふうに改まって文章で伝える方が、相手の心に響くだろう。それでもスルーする夫であれば、アルマゲドンになって破壊していいんじゃないかな。

そんなわけで「性差別や性暴力について、夫婦でどう話し合えばいいか」シリーズ、もうちょっとだけ続くんじゃ。でもドラゴンボールほどは続かないのでご安心を。

さて、ディオニス王くん(仮名)はこのコラムを読むだろうか。

ちゃんと読んだうえでの批判だったら歓迎するし、感想を聞かせてほしいなあ……と思うアナルテイシアなのだった。

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アルテイシアの59番目の結婚生活

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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