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アルテイシアの59番目の結婚生活

2020.08.18 更新 ツイート

性差別や性暴力の話になるとケンカになる問題アルテイシア

普段は仲良しな夫婦やカップルだけど、性差別や性暴力の話になるとケンカになる。

という話を女子会ですると「わかる!」「うちもそう!」と膝パーカッションで地面が揺れる。

性差別や性暴力の話になると、なぜすれ違ってしまうのか? それは男女間で意識のギャップがあるからだ。そのギャップの大きさゆえに、別れに至るケースもある。

今回のコラムは男性にぜひ読んでほしい。男性が意識をアップデートさせることが、問題解決の鍵になるから。

 

新刊『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』に『もう離婚する!! 夫婦ゲンカをして決意したこと』というコラムを書いた。

我々はめったにケンカをしない夫婦である。が、その時はあることがキッカケで、私のトラウマが爆発してしまった。

「なぜ女というだけで、性差別や性暴力に傷つかなきゃいけないの?」「なぜ傷ついた側が、傷ついてない側に丁寧に説明しなきゃいけないの?」「そんなの理不尽すぎるじゃないか! キエエエエーッ!!」

という怒りを目の前の夫にぶつけてしまったのだ。

私を傷つけたのは夫じゃないのに、彼にぶつけるのは理不尽だ。そんなことは百も承知だが、男に傷つけられてきた過去の自分が叫ぶのだ。

私の初めての性被害は4歳の時だった。子どもの頃から痴漢に遭いまくり、大人になっても性差別やセクハラに遭いまくる。
仕事帰りに痴漢に遭って警察に行ったら「こんな夜遅くに歩いてるから」と警官に責められたこともある。

そんな数えきれないほどの傷が、まだ癒えていないのだ。

自分が受けた傷だけじゃなく、女友達が彼氏に殴られたり、ストーカーに狙われたり、レイプ被害に遭ったりと、もう本当に数えきれない。

その時々に感じた怒りや悲しみがマグマのように溜まっていて、ふとした拍子に爆発してしまう。

これはトラウマ反応だから、自分ではコントロールできない。災害や事件の被害者が、過去の記憶がフラッシュバックするのと同じである。

みたいなことを普段なら説明できるが、その瞬間はトラウマ反応によるパニック状態なので、キエエエーッ!! とモンキー化するしかない。

その時は、夫の神対応に救われた。こんなブッダみのある夫と暮らす我は幸せだ、なんてことは百も承知だが、今が幸せだからといって過去の傷が消えるわけじゃない。

以上のことを、男性にぜひ理解してほしい。理不尽に感情をぶつけられたら、困惑するし腹も立つだろう。
その時は相手のことを「自分を責めて攻撃してくる人」じゃなく「トラウマに苦しんでいる人」だと思ってほしい。

そして「自分が強盗に襲われて大ケガしたら?」と想像してほしい。その記憶は一生忘れられないだろう。

「つらい過去は忘れて前を向こう」と言われても「忘れられないからつらいのに」と思うし、「悪い人ばかりじゃない、森を見て木を見ずはダメだよ」と言われても「誰も自分の苦しみを理解してくれない」と絶望するだけだろう。

心の傷の回復には時間がかかる。信頼できる相手に気持ちを吐き出して、受け止めてもらうことで、少しずつ癒されていく。それを理解していれば、男女は歩み寄れるんじゃないか。

男女がさらに歩み寄るために、以下を男性にぜひ読んでほしい(2回目)

ジェンダーギャップ指数121位のヘルジャパンで、男と女では見えている世界が違う。

「今はもう差別なんてないでしょ?」「いちいち気にしすぎじゃない?」と本気で言う男性がいるが、気にせずにいられることが特権なのだ。

政界や財界の「女性活躍(キラキラ)」系のポスターに並んでいるのは、おじさんとおじいさんばかり、という絵面が男性には見えないのかな? と思う。

ジェンダーギャップ調査の中身を見ると、「健康」「教育」の分野は高スコアで、男女格差はほとんどない。一方「経済」「政治」のスコアが著しく低いため、この結果になっている。

経済の分野では、男女間の賃金格差が大きく、女性の管理職がむっさ少ない。政治の分野では、女性議員や女性閣僚がげっさ少ない。

つまり社会の仕組みを作る側、意思決定する場に女性がバチクソ少ないのだ。そんな男性リーダーばかりの国では、男性優位の社会になるのは当然だろう。

おじいさんが統治するこの国では、男性も奴隷のように働かされる。そこで「男はつらいよ」「女はずるいよ」「女のせいだ」と逆恨みするメンズもいるが、何に対して怒るべきか? を冷静に考えてほしい。

この社会の仕組みを作ったのは女じゃない。かつ女性は男性より悪条件の下、奴隷のように働かされているのだ。

男性優位の社会とは、男にとって都合のいい社会である。それがもっとも顕著に表れているのが、性暴力についてだろう。

性犯罪が起こると「男には性欲があるから」と加害者が擁護されて、「女にスキがあった」「ハニトラじゃないか」と被害者が責められる。「痴漢したぐらいで人生台無しになるなんて」と性犯罪を軽視する空気が、性犯罪しやすい社会を作っている。

「自分は性犯罪なんかしてない(自分は加害者じゃない)」とムッとする男性は多いが、ほとんどの男性は加害者じゃないし、かつ被害者でもない。

一方で、ほとんどの女性は被害者なのだ。私の周りで痴漢・露出狂・盗撮などの性被害に遭ったことのない女性はいない。レイプ被害を打ち明けられたことも一度ではない。

性犯罪の加害者の95%以上が男性、被害者の90%以上が女性である。この非対称性が、男女の意識のギャップの原因だろう。

弁護士の太田啓子さんの著書『これからの男の子たちへ「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(8/24発売)を一足先に読ませてもらった。

そこには以下のエピソードが載っていた。

『司法修習生のとき、同期の男性が「性犯罪被害者の調書は最高のポルノだよな」と、おもしろい冗談を言っているかのような口調で話していて、ぎょっとしたことがありました』

『また学生時代、男性の同級生と性暴力の話をしていて『「男性の性被害だってある」と言ったら、彼は「え、いいじゃん」とニヤニヤしていました(略)

私が「男性の性被害は、加害者は女性のこともあるけれど、男性のことがほとんどで、力で押さえつけられたり、集団で性的嫌がらせを受けるとか、そういうことだよ」と言ったら、彼は途端に「そういうのは嫌だな……」と苦い顔になりました』

これを読んで、膝パーカッションしすぎて膝が抜けそうになった。

男性にとっての性被害は「セクシーな女性が迫ってくる」的なファンタジーで、「屈強な男に無理やり襲われる」的な事態は想像すらしないのだろう。

また、太田さんの『彼は普段から性差別的な言動をするような人ではなく、仲も良かったので「この人でもこんなこと言っちゃうんだ」とショックを受けた』という言葉にも、膝パーカッションが止まらなかった。

普通の男性の感覚が麻痺している、それがヘルジャパンの現実なのだ。

普段は常識のある普通の男性が「学生時代に女湯を覗いた」と笑い話のように語ったり、痴漢された女性に「感じた? (笑)」と冗談のように言ったりする。

現実の性暴力をエロネタ扱いして、一生苦しむ女性がいるなんて想像すらしない。それは性暴力を娯楽として消費する文化が、日常の中に溶け込んでいるからだ。

子どもが一番初めに目にするエロがコンビニのエロ本で、表紙には「痴漢・レイプ・盗撮」といった文字が並んでいる。少年誌では女湯覗きやスカートめくりが、ギャグとして描かれている。そして日本はご存知の通り、世界一のAV大国である。

性加害者の再犯防止プログラムに携わる斉藤章佳氏は、著書『男が痴漢になる理由』で以下のように書いている。

『ほぼすべての痴漢が“痴漢モノ”といわれるAVを見ている』
『現実の性犯罪者の多くはこうしたコンテンツからの影響を確実に受けています』
『(それらを繰り返し視聴することで)その人の内面で認知の歪みが形成され、ゆくゆくは性犯罪の引き金になる』

オーストラリア人の男友達は「日本のAVを見てショックを受けた」と話していた。「日本の男はレイプに興奮するのか?」「オーストラリアにもAVはあるけど、女性が嫌がってる表情だけでもNGだよ」と。

こうした文章を書くと「フェミがエロを規制する」だの「オタクを迫害する」だのキャンキャンやかましい勢が湧いてくるが、子どもを加害者にも被害者にもしないことは、大人の責任だろう。

そのためには作り手が意識をアップデートさせて、表現についてしっかり考えるべきだ。

その中でも特に性暴力や性的嫌がらせをエロやギャグ扱いするのはやめて、「絶対許せないもの」として描くべきだ。

それが共通認識になれば、痴漢の話になった時「絶対許せないよね」と男性も言うだろう。

現実では「夫に痴漢の話をしたら『でも冤罪もあるよね』と返されて、ぶっ殺しそうになった」が膝パーカッション案件である。

強盗に襲われた被害者に「でも強盗は冤罪もあるよね」とは言わないはずだ。冤罪ガー返しをするメンズは「俺は痴漢なんかしないのに、加害者扱いされたら困る」と思っているのだろう。

でも女は今この瞬間、困っているのだ。電車すら安心して乗れないし、駅のホームで女性がレイプされた事件に怯えているのだ。

その現状を変えたいと思うなら、性暴力に本気で怒ってくれ、男性たちよ。

痴漢がいなければ痴漢冤罪はないし、女性専用車両だっていらない。加害者がいなければ、性犯罪はなくなるのだ。これはあなたたちの問題なのだよ。

私は男性から過去の性被害を打ち明けられたことがある。彼もネタ扱いされそうで人に言えなかったそうだが、「性暴力に本気で怒ってるアルさんには話せると思った」と言っていた。

私は性暴力を絶対に許さない。あなたはどうする?
あなたが加害者じゃないことはわかった。だったら、あなたは何をする?

『これからの男の子たちへ』では、性暴力をなくそうというキャンペーンのために、カナダのオンタリオ州が発信した動画「Who will you help?(あなたは誰を助ける?)」が紹介されている。

『パーティーのような場所で、泥酔した女性に性的嫌がらせをしている男性がいて、その加害男性が突然カメラを向いて「黙っててくれてありがとう」と言うのです。

他にもいくつかの性的嫌がらせの場面で同様に、加害男性が行為の最中、突然カメラを向いて「無視してくれてありがとう(おかげで続けられるよ)」というメッセージを発します。

最後に流れる字幕には「何もしないなら、彼(加害者)を助けたことになる。でも、何かしたら、彼女(被害者)を助けられる。あなたは誰を助ける?」という言葉が流れます』

日本の鉄道会社や警察はこういうのを作らんかい。なんなら私が脚本を書いてやる、ギャラは千円でいい。

我が夫(マ・ドンソク似の格闘家)は、痴漢をタックルで仕留めたりしている。そんなこと普通はできないし、もちろん私もできない。
でも怪しいなと感じた時、被害に遭ってそうな女性に「ひさしぶり!」と声をかけることはできる。

そして、誰にでもできるのは「性暴力を許さない」と声を上げることだ。みんなが一斉に声を上げれば、加害者が性犯罪しにくい社会に変えていける。

かつ意識をアップデートするためにできるのは、知識を学ぶことだ。『これからの男の子たちへ』『男が痴漢になる理由』を男性にぜひ読んでほしい(3回目)

これらを読んで「わかる!」「ヘルジャパンを変えないと!」と男女が膝パーカッションでライブする世界になってほしい。

ちなみに私の膝はしわしわで、「ひざ小僧」じゃなく「ひざ大僧正」と呼びたい迫力だ(ひざ自慢)

「性差別や性暴力について、夫婦でどう話し合えばいいか?」についても書きたかったが、尺が全然足りなかったので、次回に持ち越したいと思う。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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