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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

2020.07.26 公開 ポスト

<特別編>コロナ対策の今後#6

日本の死者数の少なさは、抗生物質の積極的使用のプラス効果か…?前田浩

日本人の新型コロナウイルスの感染者数と死亡数は、欧米に比べてなぜ少なかったのか。今後、「夜の街」問題はどうするのか。ファクターXは何なのか。予防に手落ちはないか? 抗がん剤の世界的権威にして細菌学・ウイルス学のエキスパートが、私見を含め、最新の疑問に答える。

*   *   *

日本では医師は様々な病気に対して抗生物質を過剰に処方しすぎだとよく言われます。これは、日本の医療現場における抗生物質使用のハードルの低さによるといえますが、今回のコロナでの死者数に対する好結果はこれに起因しているかもしれないと私は考えました。

 
(写真:iStock.com/okskaz)

コロナやインフルエンザ(単鎖RNAのエンベロープ型ウイルス)の正体はウイルスであり、細菌感染にのみ有効な抗生物質の使用は、教科書的には不適当といわれます(医師国家試験でも)。しかし、日本の老練な臨床医(とくに市中の医師ら)は、インフルエンザに対して、抗インフルエンザウイルス剤のみでは充分ではなく、高齢患者の重篤化時には細菌の複合感染がその次にくることを知っており、多くは抗生物質を処方しています。

我々はこのインフルエンザと細菌の複合感染モデルの実験も実際に行っています。その結果は、(1)抗ウイルス剤単独使用、(2)抗菌剤単独使用、(3)両薬剤併用 の3群を比べると、(1)(2)の各単独使用群ではそれぞれ同程度の治療効果であるのに対し、(3)の両薬剤の併用群では完全治癒となるのです。

薬剤が全くない状況では、マウスの大半(90%以上)は死亡します。ウイルス感染に加え、細菌(ブドウ球菌、溶連菌、肺炎桿菌、緑膿菌など)との複合感染になると、抗菌剤投与(=抗生物質投与)は非常に重要だといえるのではないでしょうか。

 

この問題と似た例として、新生児の死亡率の低さが挙げられます。英国人と日本人の比較の例で、帝王切開による出産時における新生児の死亡率は、日本は英国の1/5といわれています[ヤクルト主催『第28回腸内フローラシンポジウム』(2019/11/1)での日英両国の婦人科医の討論より]。

これについても前述の通り、日本では抗菌剤である抗生物質の予防的投与をしていることに意味があると私は考えます。英国流にいえば、妊婦は何ら細菌感染症を呈しない健康な妊婦なので抗生物質を使う必要はない。しかし、日本は、外科領域では術前に予防的に抗生物質を投与することはほぼ日常であります。多くの場合、その予防的使用が市中病院では日常的であり、安易に行われているともいえるのですが、その結果として、コロナの症例にもこれが幸いしているといえるのではないでしょうか。

(写真:iStock.com/margouillatphotos)

それから、米国の黒人や南部の高齢者の大半は、肥満で糖尿病や心臓病の人が多く、日本人と比べると肥満人口は遥かに多いです。さらに、多分に栄養のバランスも高脂肪食であり、血栓(心筋梗塞)も多発すると考えられます。それに加え、個人の経済的理由と保険の問題で、前述の抗生剤の予防的な投与や初期治療(化学療法)をやらないため重篤化し、死亡例が増えたと考えられます。我々はインフルエンザウイルス感染マウスに普通食と高脂肪食で実験し、後者のグループに心筋梗塞による死亡例が有意に多いことをみています(未発表)。

 

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〈ミニ知識〉
抗生物質(ここでは抗菌性の抗生物質)の語源は英語のAntibioticsからきている。生物(bio)に抗う(Anti)物質の意味。その由来はすべて生物起源であり、純然たる化学合成によるものは、原則としては、抗生物質には入れられない。抗生物質とは即ち、「微生物が産生し、他の微生物の発育を阻害する物質」と定義され、多くは放線菌(カビの一種)、カビ、細菌が産生する物質であり、細菌やカビ、ウイルス、がん、寄生虫などの増殖を抑える作用をもつ物質と定義されています。

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※記事初出時の本文の一部を、修正いたしました。

前田浩『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』

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〈参考文献〉
•W.F. Ganong, Review of Medical Physiology, pp. 1-774, Lange Medical Books., Network, CT, USA,とくにCh. 23, PP. 375-413.
•W. Regelson & C. Colman, The Super-hormone promise-Nature’s Antidote to Aging, pp.11- 346, Simon & Schuster, N.Y, 1996
•W. Pierpaoli, W. Regelson, C. Colman, The Melatonin Miracle: Nature's Age-Reversing, Disease-Fighting, Sex-Enhancing Hormone. Simon & Schuster, N.Y. London……
•堀江重郎「ヤル気が出る! 最強の男性医療」、文春新書、pp. 1-207(2013)
•堀江重郎「対談集 いのち 人はいかに生きるか」、かまくら春秋社(2018)
•産経新聞、読売新聞、中高年ひきこもり61万人、2019年3月30日
•厚生労働省「患者調査」、精神疾患を有する総患者数の推移、精神保健医療福祉のデータと政策(平成29年)http://www.mhlw-houkatsucare-ikou.jp/guide/h30-cccsguideline-p1.pdf
•平成30年中における自殺の状況、厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課、平成31年3月28日
• Rachel Carson, Silent Spring( 邦 題: 沈 黙 の 春 ), 1962, PP.1-317, Penguin/Geography/environment science, N.Y.
•有吉佐和子「複合汚染」新潮社、1975
• M.M. Bomgardner, How a new epoxy could boot BPA from cans, アメリカ化学会、Chem. Eng.News, 97, March 5, 2019.
•林国興、環境ホルモン再考、日本がん予防学会News Letter No. 73、2012年9月
•K. Hayashi et al., Contamination of rice by etofenprox, diethyl phthalate and alkylphenols: effects on first delivery and sperm count in mice, J. Toxicol. Sci, 35, 49-55, 2010.
•CB. Pedersen et al., A comprehensive nationwide study of the incidence rate and lifetime risk for treated mental disorders. JAMA Psychiatry, 71, 537-581, 2014.
•PJ. Snyder et al., Effects of testosterone treatment in older men. N. Engl. J. Med. 374, 611-624, 2016.
•Financial Times 8月8日(木)2019年、P.7;同New York Times, International Ed., The weedkiller that won’t be exterminated, p.10, Business, Sept., 27, 2019(ラウンドアップ)
•R. A. Weinberg. Cell, 157, 267(2014)
•前田 浩、化学と生物、vol.55, No.7501-509(2017)
•C. Leaf, The truth in small doses: Why we're losing the war on cancer-and how to win it. Simon & Schuster, New York(2013)
•H. Maeda and M. Khatami, Analyses of repeated failures in cancer therapy for solid tumors: poor tumor-selective drug delivery, low therapeutic efficacy and unsustainable costs. Clin.Trans. Med. https://doi.org/10.1186/s40169-018-0185-6 7:11, 1-20(2018)
• Laura Howes, How your gut might modify your mind, Chem. Eng. News 9(7 14)36-40(2019) •Science Oct. 23., 2019
• The Scientist 2019, Feb. 4., by Ashley Yeager
•半田 康、ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生との関連、日本がん予防学会ニュースレター p.1., No.66, Dec. 2010.
• Bruce Freeman et al., J. Biolo. Chem.(2013)
•Science 244, 974-976(1989)•J. Clin. Invest. 739-745(1990)
•Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2020 Mar 3;117(9):4642-4652. doi: 10.1073/pnas.1919563117.Epub 2020 Feb 18.
•奥野修司 2020年3月19日、3月26日号 週刊新潮 •『トマトとイタリア人』内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 文藝春秋

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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

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前田浩

1962年東北大学農学部卒業/1964年カリフォルニア大学 (Davis 校)大学院修了(フルブライト奨学生)/1968年東北大学大学 院博士課程修了(指導:医学部石田名香雄教授)、東北大学医学部細菌 学講座助手、ハーバード大学ダナ・ファーバーガン研究所主任研究員/1971年熊本大学医学部微生物学講座助教授/1981年同教授/ 2005年熊本大学名誉教授(医学)、同年崇城大学薬学部教授、2011年 同特任教授/2016年同栄誉教授、現在、(財)バイオダイナミックス研 究所理事長・所長/大阪大学招聘教授(医学)、東北大学特別招聘プロフェッサー

〈研究テーマと抱負〉高分子型抗癌剤、癌血管の透過性にかかわる現 象の EPR 効果、感染における生体内ラジカルの生成、炎症による生 体内活性酸素と抗酸化食品による癌予防、癌の蛍光ナノプローブに よる検出と光照射療法

〈受賞歴〉日本細菌学会浅川賞、高松宮妃癌研究基金学術賞、ドイツ生 化学会および国際 NO 学会の特別号発刊により顕彰、王立英薬学会 Life Time Achievement Award受賞、日本DDS学会 永井賞、日本癌 学会吉田富三賞、2016年トムソン・ロイター引用栄誉賞(化学部門)、 米国ミシガン州Wayne State Universityより2017 Roland T. Lakey 賞受賞、2018年瑞宝中綬章受章、西日本文化賞、米国サンアントニオ 市名誉市長、米国オクラホマ州名誉州民など多数

〈趣味〉ワイン

 

 

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