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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

2020.07.31 更新 ツイート

<特別編>コロナ対策の今後#13

スペイン風邪のような悪夢にはならない前田浩

日本人の新型コロナウイルスの感染者数と死亡数は、欧米に比べてなぜ少なかったのか。今後、「夜の街」問題はどうするのか。ファクターXは何なのか。予防に手落ちはないか? 抗がん剤の世界的権威にして細菌学・ウイルス学のエキスパートが、私見を含め、最新の疑問に答える。

*   *   *

メディアにおける疫学者の方たちのコメントで、気になることが一つあります。彼らの話の中で、例え話としてよく出てくるのですが、1918~1919年に世界的大流行(本当のパンデミック)になったスペイン風邪(インフルエンザウイルス)のことです。

第一次世界大戦のヨーロッパ戦線(ミニ知識参照)から、このインフルエンザのクラスターが始まり、前線の兵士から、次第に一般人、さらに世界中に広まり、死者は世界中2千万から4千万人、日本では39万人(第1波29万人、第2波・第3波を加えると42万人)といわれた大惨事で、当時はスペイン風邪と言われて恐れられました(文献18)。これを引き合いに出し、コロナのパンデミックもこれに準ずる結末をもたらす事態になるであろうとの仮説を唱える人がいます。

本当にそうでしょうか?

実は、インフルエンザウイルス感染の伝播の早さは、この時のサンフランシスコの事例が詳しく研究されています。

 

1919年9月23日にシカゴからその1人の患者がサンフランシスコに入り、一ヶ月後にはサンフランシスコ市内の複数の病院の看護師の75%が感染したというのです。また、市内の全病院はインフルエンザの患者で満床になり、まさに医療崩壊となりました(文献18)。

当時も、今のようにマスクの着用やステイホームが推奨され、「風邪気味、せき・鼻水・くしゃみのある人はこの劇場に入らないでください」と書かれたポスターなどもあったほど。しかも、サンフランシスコ市ではマスクを着用しない人は、罰金か刑務所送りになったそうです。

この研究では、既に、インフルエンザは細菌性の肺炎と混合感染になることにも触れられています。ところが、ここで、知っておいて欲しいのは、その時代(1918年頃)は抗生物質の使用はどこにもなく、日本などは1950年頃からでないと一般には使われていないということなのです。

(写真:iStock.com/fotocelia)

1918~1919年頃は抗生剤が無いだけでなく、点滴・補液による脱水対策や循環不全の対策もなく、しかも、戦争の最前線の塹壕で暖房もなく、食料の補給も乏しく栄養失調状態であれば、致死的になるわけです。

今日では、同じインフルエンザが来ても、それほど大規模な死亡者が出ることは考えられません。抗生剤や、点滴、補液(脱水予防)、酸素吸入、ましてやNO(一酸化窒素)付加の酸素吸入(2000年頃から)なども普及しているのです。人工心肺(ECMO)はほとんど不要なことが大半です。

(写真:iStock.com/sudok1)​​​​

奇蹟ともいえる抗生物質の出現に加え、点滴や酸素吸入などの全身状態の管理体制なども当時とは比較にならない程医学は進歩しています。今日の感染症における死亡者数を、その当時と並べて予測するのは、全くの見当違いというものです。

1918~1920年頃の世界の人口は約18億人(今日では77億人)、日本の人口は約5,500万人(今日では1億2,000万人)です。警鐘を鳴らすためには過去の大惨事の話が必要だったのかもしれませんが、この対策は、不安感だけを煽るのは止め、現状をよく見て、冷静に判断し、賢く対処することを勧めることが必要なのではないでしょうか。

 

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〈ミニ知識〉

1918年春、ドイツ軍百万人以上がフランス側の西部戦線に動員された。ドイツ軍は仏英連合軍より1,000倍の戦力で攻撃を続け、ドイツ側に勝算ありとの読みであったが、6月になってインフルエンザのクラスターがドイツ軍内で発生し、2千人が重症になり、補給が途絶え、食料不足で動けなくなり、ドイツ軍は侵攻を止めざるをえなかった。英仏連合軍も困窮状態となったが、アメリカからの強力な援軍の到着によって連合軍が押し返しに成功し、結局、ドイツ軍は敗れることになった。まさに歴史を変えたパンデミックである。

1918年~1919年のインフルエンザの死者数は2千万人とも4千万人ともいわれ、これは戦病死者数よりはるかに大規模な死者を出している。このとき、日本人のインフルエンザの死者数は25万7千人(第一波)で、死者の80%は70才以上であったといわれている。これも今日の新型コロナウイルスと同じである。また、心臓・肺・腎・肝などの慢性疾患の人は小児も含め、若くても致死的であったとの報告もある(文献18)。

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<引用文献>

18.    M. B. Oldstone: Virus, Plagues & History, Oxford Univ. Press,172-186 (1998)

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〈参考文献〉
•W.F. Ganong, Review of Medical Physiology, pp. 1-774, Lange Medical Books., Network, CT, USA,とくにCh. 23, PP. 375-413.
•W. Regelson & C. Colman, The Super-hormone promise-Nature’s Antidote to Aging, pp.11- 346, Simon & Schuster, N.Y, 1996
•W. Pierpaoli, W. Regelson, C. Colman, The Melatonin Miracle: Nature's Age-Reversing, Disease-Fighting, Sex-Enhancing Hormone. Simon & Schuster, N.Y. London……
•堀江重郎「ヤル気が出る! 最強の男性医療」、文春新書、pp. 1-207(2013)
•堀江重郎「対談集 いのち 人はいかに生きるか」、かまくら春秋社(2018)
•産経新聞、読売新聞、中高年ひきこもり61万人、2019年3月30日
•厚生労働省「患者調査」、精神疾患を有する総患者数の推移、精神保健医療福祉のデータと政策(平成29年)http://www.mhlw-houkatsucare-ikou.jp/guide/h30-cccsguideline-p1.pdf
•平成30年中における自殺の状況、厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課、平成31年3月28日
• Rachel Carson, Silent Spring( 邦 題: 沈 黙 の 春 ), 1962, PP.1-317, Penguin/Geography/environment science, N.Y.
•有吉佐和子「複合汚染」新潮社、1975
• M.M. Bomgardner, How a new epoxy could boot BPA from cans, アメリカ化学会、Chem. Eng.News, 97, March 5, 2019.
•林国興、環境ホルモン再考、日本がん予防学会News Letter No. 73、2012年9月
•K. Hayashi et al., Contamination of rice by etofenprox, diethyl phthalate and alkylphenols: effects on first delivery and sperm count in mice, J. Toxicol. Sci, 35, 49-55, 2010.
•CB. Pedersen et al., A comprehensive nationwide study of the incidence rate and lifetime risk for treated mental disorders. JAMA Psychiatry, 71, 537-581, 2014.
•PJ. Snyder et al., Effects of testosterone treatment in older men. N. Engl. J. Med. 374, 611-624, 2016.
•Financial Times 8月8日(木)2019年、P.7;同New York Times, International Ed., The weedkiller that won’t be exterminated, p.10, Business, Sept., 27, 2019(ラウンドアップ)
•R. A. Weinberg. Cell, 157, 267(2014)
•前田 浩、化学と生物、vol.55, No.7501-509(2017)
•C. Leaf, The truth in small doses: Why we're losing the war on cancer-and how to win it. Simon & Schuster, New York(2013)
•H. Maeda and M. Khatami, Analyses of repeated failures in cancer therapy for solid tumors: poor tumor-selective drug delivery, low therapeutic efficacy and unsustainable costs. Clin.Trans. Med. https://doi.org/10.1186/s40169-018-0185-6 7:11, 1-20(2018)
• Laura Howes, How your gut might modify your mind, Chem. Eng. News 9(7 14)36-40(2019) •Science Oct. 23., 2019
• The Scientist 2019, Feb. 4., by Ashley Yeager
•半田 康、ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生との関連、日本がん予防学会ニュースレター p.1., No.66, Dec. 2010.
• Bruce Freeman et al., J. Biolo. Chem.(2013)
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•Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2020 Mar 3;117(9):4642-4652. doi: 10.1073/pnas.1919563117.Epub 2020 Feb 18.
•奥野修司 2020年3月19日、3月26日号 週刊新潮 •『トマトとイタリア人』内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 文藝春秋

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病気予防に効果的な野菜スープ。そのレシピから、ウイルス・ガンはもちろん、現代社会が抱える問題まで徹底解説! 抗がん剤の世界的研究者による、健康になるための一冊。

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前田浩

1962年東北大学農学部卒業/1964年カリフォルニア大学 (Davis 校)大学院修了(フルブライト奨学生)/1968年東北大学大学 院博士課程修了(指導:医学部石田名香雄教授)、東北大学医学部細菌 学講座助手、ハーバード大学ダナ・ファーバーガン研究所主任研究員/1971年熊本大学医学部微生物学講座助教授/1981年同教授/ 2005年熊本大学名誉教授(医学)、同年崇城大学薬学部教授、2011年 同特任教授/2016年同栄誉教授、現在、(財)バイオダイナミックス研 究所理事長・所長/大阪大学招聘教授(医学)、東北大学特別招聘プロフェッサー

〈研究テーマと抱負〉高分子型抗癌剤、癌血管の透過性にかかわる現 象の EPR 効果、感染における生体内ラジカルの生成、炎症による生 体内活性酸素と抗酸化食品による癌予防、癌の蛍光ナノプローブに よる検出と光照射療法

〈受賞歴〉日本細菌学会浅川賞、高松宮妃癌研究基金学術賞、ドイツ生 化学会および国際 NO 学会の特別号発刊により顕彰、王立英薬学会 Life Time Achievement Award受賞、日本DDS学会 永井賞、日本癌 学会吉田富三賞、2016年トムソン・ロイター引用栄誉賞(化学部門)、 米国ミシガン州Wayne State Universityより2017 Roland T. Lakey 賞受賞、2018年瑞宝中綬章受章、西日本文化賞、米国サンアントニオ 市名誉市長、米国オクラホマ州名誉州民など多数

〈趣味〉ワイン

 

 

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