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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

2020.07.28 公開 ポスト

<特別編>コロナ対策の今後#8

ウイルスの感染力を高める「ダニの糞」には注意前田浩

日本人の新型コロナウイルスの感染者数と死亡数は、欧米に比べてなぜ少なかったのか。今後、「夜の街」問題はどうするのか。ファクターXは何なのか。予防に手落ちはないか? 抗がん剤の世界的権威にして細菌学・ウイルス学のエキスパートが、私見を含め、最新の疑問に答える。

*   *   *

一般的なインフルエンザウイルス感染の補助因子として考えられるものには、大気中や室内の温度と湿度(絶対湿度)[ウイルスは低温で乾燥状態でより安定](文献12,13) に加えて、各種プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が関係することがわかっています(文献14,15)。空気が乾燥すると家ダニの粉塵プロテアーゼも軽くなり、家中(空中)に浮遊し易くなるので、それが呼気中に入り易くなります。

インフルエンザやコロナウイルスの外膜上には、スパイク状のタンパク質があり、これがプロテアーゼにより特定のところで切断されると、ウイルスの外膜は標的の細胞膜に融合しやすくなり、そうなってウイルスの膜(エンベロープ)と宿主の細胞膜とが融合します。そうすると、ウイルス粒子の殻の中にあるその遺伝子(RNA)が細胞内に放出され、そのウイルス遺伝子はそこで複製・増殖し、感染が成立するのです(文献16,17)。

 

 

インフルエンザやコロナ(COVID-19)ウイルスを活性化(感染性を賦与)するプロテアーゼは、ヒトの体内の炎症部にもともとあるのですが、細菌感染(混合感染)によって感染の増悪とともに細菌のプロテアーゼが、この融合と感染のプロセスに大きな役割を占めています(文献14,15)。

そして驚いたことに、プロテアーゼと全く同じ作用が、家庭内の部屋にすんでいる目に見えないダニの糞便中にもあったのです(文献15)。それは本来、人間の居住環境に生息するダニの腸内の消化酵素として機能しています。その百万分の1グラム(1マイクログラム)が気道粘膜に付着すると、インフルエンザの感染性は百倍も強くなることを我々は動物実験で確認しました(文献15)。ヒトの一日の呼気中には数マイクログラムのプロテアーゼがあると云われています。

(写真:iStock.com/tommaso79)

このインフルエンザウイルスの細胞内侵入(つまり感染経路)のメカニズムは、いま問題となっているコロナウイルスCOVID-19でも同様のことが起こっていると想像されます(次頁表参照)(文献16,17)。

コロナウイルスCOVID-19の表面から突出しているスパイク状のタンパク質(Sタンパク)は、活性化したヒトの体内のフューリンというタンパク分解酵素により、その中程で切断されると細胞融合活性が強くなり、ウイルス粒子の膜と標的のヒトの細胞膜とが融合し、インフルエンザと同様に、コロナCOVID-19の遺伝子(RNA)が細胞内に侵入します(文献16,17)。ここでダニとか外来性の細菌由来のプロテアーゼがインフルエンザ感染と同じく、キーになっているのではと想像されるのです。ダニの駆除もコロナ対策の一つと考えて欲しいと思います。これは空気の清浄化で可能になります。このCOVID-19のSプロテインを分解するプロテアーゼの阻害剤がCOVID-19に対する抗ウイルス薬の候補として研究が進んでいます(文献16,17)。

これら各種のプロアテーゼの存在によりウイルスの感染と増殖が暴走すると考えられます(次の表を参照)。
 

 

 

 

 

<引用論文>

12.    庄司真, 気象と感染症流行の創刊に関する研究(第2報)インフルエンザ流行の拡大因子は気温か、湿度か、その他か, 抗酸菌病研究所雑誌(0910-6073)40巻2号, 95-106 (1988.10)

13.    庄司真, 気象と感染症流行の創刊に関する研究(第3報)平均気温による感染症流行予測―試案, 仙台市衛生試験所報(0387-9771)14号, 117-120 (1985.10)

14.    T. Akaike., A. Molla, M. Ando, S. Araki and H. Maeda: Molecular mechanism of complex infection by bacteria and virus analyzed by a model using serratial protease and influenza virus in mice. J. Virol., 63, 2252-2259 (1989)

15.    T. Akaike, H. Maeda, K. Maruo, Y. Sakata and K. Sato: Potentiation of infectivity and pathogenesis of influenza A virus by a house dust mite protease. J. Infect. Dis., 170, 1023-1026 (1994)

16.    A. Katsnelson, What we know about the novel coronavirus’s proteins, Chem. Eng. News(米化学会), 98 (15), pp19-21, April 20 (2020).

17.    L. K. Boerner, Protein mapping points to 69 potential COVID-19 treatments, Chem. Eng. News(米化学会), 98 (12), p.4, March 30 (2020).


 

<今後の公開予定記事>

第9回 やはり、うがいを軽くみてはいけない 
第10回 「夜の街」の感染防止に、飛行機の空気清浄機に使う「ヘパフィルター」の提案
第11回 収束が見えないなか、「抗体価検査」と「交差免疫」への期待
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第14回 ウイルス感染と発症:不顕性感染、潜伏感染とPCR検査

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〈参考文献〉
•W.F. Ganong, Review of Medical Physiology, pp. 1-774, Lange Medical Books., Network, CT, USA,とくにCh. 23, PP. 375-413.
•W. Regelson & C. Colman, The Super-hormone promise-Nature’s Antidote to Aging, pp.11- 346, Simon & Schuster, N.Y, 1996
•W. Pierpaoli, W. Regelson, C. Colman, The Melatonin Miracle: Nature's Age-Reversing, Disease-Fighting, Sex-Enhancing Hormone. Simon & Schuster, N.Y. London……
•堀江重郎「ヤル気が出る! 最強の男性医療」、文春新書、pp. 1-207(2013)
•堀江重郎「対談集 いのち 人はいかに生きるか」、かまくら春秋社(2018)
•産経新聞、読売新聞、中高年ひきこもり61万人、2019年3月30日
•厚生労働省「患者調査」、精神疾患を有する総患者数の推移、精神保健医療福祉のデータと政策(平成29年)http://www.mhlw-houkatsucare-ikou.jp/guide/h30-cccsguideline-p1.pdf
•平成30年中における自殺の状況、厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課、平成31年3月28日
• Rachel Carson, Silent Spring( 邦 題: 沈 黙 の 春 ), 1962, PP.1-317, Penguin/Geography/environment science, N.Y.
•有吉佐和子「複合汚染」新潮社、1975
• M.M. Bomgardner, How a new epoxy could boot BPA from cans, アメリカ化学会、Chem. Eng.News, 97, March 5, 2019.
•林国興、環境ホルモン再考、日本がん予防学会News Letter No. 73、2012年9月
•K. Hayashi et al., Contamination of rice by etofenprox, diethyl phthalate and alkylphenols: effects on first delivery and sperm count in mice, J. Toxicol. Sci, 35, 49-55, 2010.
•CB. Pedersen et al., A comprehensive nationwide study of the incidence rate and lifetime risk for treated mental disorders. JAMA Psychiatry, 71, 537-581, 2014.
•PJ. Snyder et al., Effects of testosterone treatment in older men. N. Engl. J. Med. 374, 611-624, 2016.
•Financial Times 8月8日(木)2019年、P.7;同New York Times, International Ed., The weedkiller that won’t be exterminated, p.10, Business, Sept., 27, 2019(ラウンドアップ)
•R. A. Weinberg. Cell, 157, 267(2014)
•前田 浩、化学と生物、vol.55, No.7501-509(2017)
•C. Leaf, The truth in small doses: Why we're losing the war on cancer-and how to win it. Simon & Schuster, New York(2013)
•H. Maeda and M. Khatami, Analyses of repeated failures in cancer therapy for solid tumors: poor tumor-selective drug delivery, low therapeutic efficacy and unsustainable costs. Clin.Trans. Med. https://doi.org/10.1186/s40169-018-0185-6 7:11, 1-20(2018)
• Laura Howes, How your gut might modify your mind, Chem. Eng. News 9(7 14)36-40(2019) •Science Oct. 23., 2019
• The Scientist 2019, Feb. 4., by Ashley Yeager
•半田 康、ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生との関連、日本がん予防学会ニュースレター p.1., No.66, Dec. 2010.
• Bruce Freeman et al., J. Biolo. Chem.(2013)
•Science 244, 974-976(1989)•J. Clin. Invest. 739-745(1990)
•Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2020 Mar 3;117(9):4642-4652. doi: 10.1073/pnas.1919563117.Epub 2020 Feb 18.
•奥野修司 2020年3月19日、3月26日号 週刊新潮 •『トマトとイタリア人』内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 文藝春秋

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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

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前田浩

1962年東北大学農学部卒業/1964年カリフォルニア大学 (Davis 校)大学院修了(フルブライト奨学生)/1968年東北大学大学 院博士課程修了(指導:医学部石田名香雄教授)、東北大学医学部細菌 学講座助手、ハーバード大学ダナ・ファーバーガン研究所主任研究員/1971年熊本大学医学部微生物学講座助教授/1981年同教授/ 2005年熊本大学名誉教授(医学)、同年崇城大学薬学部教授、2011年 同特任教授/2016年同栄誉教授、現在、(財)バイオダイナミックス研 究所理事長・所長/大阪大学招聘教授(医学)、東北大学特別招聘プロフェッサー

〈研究テーマと抱負〉高分子型抗癌剤、癌血管の透過性にかかわる現 象の EPR 効果、感染における生体内ラジカルの生成、炎症による生 体内活性酸素と抗酸化食品による癌予防、癌の蛍光ナノプローブに よる検出と光照射療法

〈受賞歴〉日本細菌学会浅川賞、高松宮妃癌研究基金学術賞、ドイツ生 化学会および国際 NO 学会の特別号発刊により顕彰、王立英薬学会 Life Time Achievement Award受賞、日本DDS学会 永井賞、日本癌 学会吉田富三賞、2016年トムソン・ロイター引用栄誉賞(化学部門)、 米国ミシガン州Wayne State Universityより2017 Roland T. Lakey 賞受賞、2018年瑞宝中綬章受章、西日本文化賞、米国サンアントニオ 市名誉市長、米国オクラホマ州名誉州民など多数

〈趣味〉ワイン

 

 

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