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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

2020.07.21 公開 ポスト

<特別編>コロナ対策の今後#2

重症化は、ウイルス感染後の「活性酸素」と「細菌」との混合感染が原因か前田浩

日本人の新型コロナウイルスの感染者数と死亡数は、欧米に比べてなぜ少なかったのか。今後、「夜の街」問題はどうするのか。ファクターXは何なのか。予防に手落ちはないか? 抗がん剤の世界的権威にして細菌学・ウイルス学のエキスパートが、私見を含め、最新の疑問に答える。

*   *   *

活性酸素の爆発的生成

インフルエンザウイルス感染症の重症化からわかったことを念頭に新型コロナウイルスCOVID-19に罹患して亡くなったと聞くと、我々の31年前の実験データを思い出します。それは、ウイルスが人を攻撃して死に至らしめたと思いがちですが、ウイルスはきっかけに過ぎない可能性があります。実は、我々はマウスを使ったインフルエンザウイルスの感染実験で、ずいぶん前にこれを明らかにしています。

 

マウスにインフルエンザウイルスを感染させ、重症化するとそのマウスは死に至りますが、マウスの死骸からはウイルスが全く見つからなかったのです。これに疑問を持った我々はさらに研究を進め、ついに、マウスはウイルスによって殺されたのではなく、ウイルスに感染した後の急激な炎症反応によって死んだことがわかったのです。

つまり、ウイルスが体内に侵入してくると、それを排除しようとマウスの持つ防御反応として炎症を起こすのですが、それが過剰となるとマウス自身が傷つき、その結果死に至るということを発見したのです。我々はこれを「ウイルスなきウイルス病」と呼び、1989年に科学雑誌『サイエンス』に発表し、当時の科学界では大きな話題となりました(文献1)。また、より詳細は別のジャーナルに報じています(文献2)。

(写真:iStock.com/ttsz)

マウスがインフルエンザに感染すると、免疫を司る白血球からウイルスを殺すための「活性酸素」が猛烈に放出され(非感染時のマウスの200~600倍)、この活性酸素のお陰でウイルスは全滅します。ところが急激に増えた活性酸素が暴走して肺の細胞や組織まで傷つけてしまっていたのです。その結果、マウスは肺炎を引き起こし死に至ったのです。

(写真:iStock.com/DancingMan)

つまり「活性酸素」が死亡の直接の原因分子であったわけで、「活性酸素」はまさに両刃の剣といえるのです。実はこのとき、活性酸素(スーパーオキサイド)に加え、一酸化窒素(NO)の爆発的生成も同時に誘発されていることも明らかにしました(後述)。

活性酸素がマウスのインフルエンザの死因であることの証明のために、我々はまず以下の3つの事実によってその根拠を明らかにしました。

(1)    活性酸素を中和・消去する薬物を合成し、病気のマウスに投与することにより、ほぼ全例が治癒し生存したこと。

(2)    活性酸素を合成する酵素を阻害するとマウスは治癒したこと。

(3)    (2)の酵素の基質(活性酸素を作るための原料:アデノシン)の供給を止めることによって、何れも治癒に成功したこと。この3つの実験で活性酸素が真の病気の原因であることを世界で初めて明らかにしました(文献1,2)。これは30年以上も前のことです。

 

【引用文献】

1.    T. Oda, T. Akaike, T. Hamamoto, F. Suzuki, T. Hirano and H. Maeda: Oxygen radicals in influenza-induced pathogenesis and treatment with pyran polymer-conjugated SOD. Science, 244, 974-976 (1989)

2.    T. Akaike, M. Ando, T. Oda, T. Doi, S. Ijiri, S. Araki and H. Maeda: Dependence on O2- generation by xanthine oxidase of pathogenesis of influenza virus infection in mice. J. Clin. Invest., 85, 739-745 (1990)

前田浩『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』

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〈参考文献〉
•W.F. Ganong, Review of Medical Physiology, pp. 1-774, Lange Medical Books., Network, CT, USA,とくにCh. 23, PP. 375-413.
•W. Regelson & C. Colman, The Super-hormone promise-Nature’s Antidote to Aging, pp.11- 346, Simon & Schuster, N.Y, 1996
•W. Pierpaoli, W. Regelson, C. Colman, The Melatonin Miracle: Nature's Age-Reversing, Disease-Fighting, Sex-Enhancing Hormone. Simon & Schuster, N.Y. London……
•堀江重郎「ヤル気が出る! 最強の男性医療」、文春新書、pp. 1-207(2013)
•堀江重郎「対談集 いのち 人はいかに生きるか」、かまくら春秋社(2018)
•産経新聞、読売新聞、中高年ひきこもり61万人、2019年3月30日
•厚生労働省「患者調査」、精神疾患を有する総患者数の推移、精神保健医療福祉のデータと政策(平成29年)http://www.mhlw-houkatsucare-ikou.jp/guide/h30-cccsguideline-p1.pdf
•平成30年中における自殺の状況、厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課、平成31年3月28日
• Rachel Carson, Silent Spring( 邦 題: 沈 黙 の 春 ), 1962, PP.1-317, Penguin/Geography/environment science, N.Y.
•有吉佐和子「複合汚染」新潮社、1975
• M.M. Bomgardner, How a new epoxy could boot BPA from cans, アメリカ化学会、Chem. Eng.News, 97, March 5, 2019.
•林国興、環境ホルモン再考、日本がん予防学会News Letter No. 73、2012年9月
•K. Hayashi et al., Contamination of rice by etofenprox, diethyl phthalate and alkylphenols: effects on first delivery and sperm count in mice, J. Toxicol. Sci, 35, 49-55, 2010.
•CB. Pedersen et al., A comprehensive nationwide study of the incidence rate and lifetime risk for treated mental disorders. JAMA Psychiatry, 71, 537-581, 2014.
•PJ. Snyder et al., Effects of testosterone treatment in older men. N. Engl. J. Med. 374, 611-624, 2016.
•Financial Times 8月8日(木)2019年、P.7;同New York Times, International Ed., The weedkiller that won’t be exterminated, p.10, Business, Sept., 27, 2019(ラウンドアップ)
•R. A. Weinberg. Cell, 157, 267(2014)
•前田 浩、化学と生物、vol.55, No.7501-509(2017)
•C. Leaf, The truth in small doses: Why we're losing the war on cancer-and how to win it. Simon & Schuster, New York(2013)
•H. Maeda and M. Khatami, Analyses of repeated failures in cancer therapy for solid tumors: poor tumor-selective drug delivery, low therapeutic efficacy and unsustainable costs. Clin.Trans. Med. https://doi.org/10.1186/s40169-018-0185-6 7:11, 1-20(2018)
• Laura Howes, How your gut might modify your mind, Chem. Eng. News 9(7 14)36-40(2019) •Science Oct. 23., 2019
• The Scientist 2019, Feb. 4., by Ashley Yeager
•半田 康、ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生との関連、日本がん予防学会ニュースレター p.1., No.66, Dec. 2010.
• Bruce Freeman et al., J. Biolo. Chem.(2013)
•Science 244, 974-976(1989)•J. Clin. Invest. 739-745(1990)
•Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2020 Mar 3;117(9):4642-4652. doi: 10.1073/pnas.1919563117.Epub 2020 Feb 18.
•奥野修司 2020年3月19日、3月26日号 週刊新潮 •『トマトとイタリア人』内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 文藝春秋

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ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

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前田浩

1962年東北大学農学部卒業/1964年カリフォルニア大学 (Davis 校)大学院修了(フルブライト奨学生)/1968年東北大学大学 院博士課程修了(指導:医学部石田名香雄教授)、東北大学医学部細菌 学講座助手、ハーバード大学ダナ・ファーバーガン研究所主任研究員/1971年熊本大学医学部微生物学講座助教授/1981年同教授/ 2005年熊本大学名誉教授(医学)、同年崇城大学薬学部教授、2011年 同特任教授/2016年同栄誉教授、現在、(財)バイオダイナミックス研 究所理事長・所長/大阪大学招聘教授(医学)、東北大学特別招聘プロフェッサー

〈研究テーマと抱負〉高分子型抗癌剤、癌血管の透過性にかかわる現 象の EPR 効果、感染における生体内ラジカルの生成、炎症による生 体内活性酸素と抗酸化食品による癌予防、癌の蛍光ナノプローブに よる検出と光照射療法

〈受賞歴〉日本細菌学会浅川賞、高松宮妃癌研究基金学術賞、ドイツ生 化学会および国際 NO 学会の特別号発刊により顕彰、王立英薬学会 Life Time Achievement Award受賞、日本DDS学会 永井賞、日本癌 学会吉田富三賞、2016年トムソン・ロイター引用栄誉賞(化学部門)、 米国ミシガン州Wayne State Universityより2017 Roland T. Lakey 賞受賞、2018年瑞宝中綬章受章、西日本文化賞、米国サンアントニオ 市名誉市長、米国オクラホマ州名誉州民など多数

〈趣味〉ワイン

 

 

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