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アルテイシアの59番目の結婚生活

2019.12.18 更新 ツイート

「離婚、おめでとうございます!」アルテイシア

先日、30歳女子からこんな話を聞いた。

「うちの夫はリベラルだし、家事もちゃんとするし、子どもができたら育休をとると言ってるんですよ。でも私の方が年収が高いことは、ちょっと気にしてるみたいで。たまに『○○ちゃんは俺より稼いでるもんね』とか言われて、イラッとするんですよね」

その夫氏は彼女と同じ30歳である。43歳の私が30歳だった頃は「自分より稼ぐ女はイヤ」という男子が多数派だったと思う。

 

「男に年収を言うと引かれる」とか「どうせ俺は稼ぎが少ないよ! と彼氏に拗ねられた」みたいな話は、ハイスペ女子あるあるだった。

また「家に帰って電気がついてないと寂しい」だの「温かい手料理を食べたい」だの無邪気に言う男がわんさかいて「てめえが電気をつけて飯を作れや」と煮えていた私。

自分より稼ぐ女がイヤなのも「男のプライド云々」と言うけれど、単に自分が上に立ちたいだけじゃねえか、女を見下して優越感を満たしたいだけじゃねえか、「オッス! オラ男尊女卑」と名乗りやがれ、なにが男のプライドだ冗談はよし子さん!!

とぐつぐつ煮えていたのだが、若い世代はどうなんだろう?
「男の沽券」「男は稼いでナンボ」「男は外で働き、女は家を守る」的なジェンダー意識は薄まっているんじゃないか。

平均年収が下がって、夫1人で家計を支えるのは厳しいし、リスクも高すぎる。アラサー世代は夫婦共稼ぎがデフォルトで、「妻の年収が高いのは嬉しい」という男子も増えているのでは?

とアラサー女子たちにヒアリングすると「そういう男子も多少は増えてますね。とはいえ『妻には働いてほしいけど、自分より稼ぐのは複雑』みたいな男子がまだまだ多いと思いますよ」とのこと。

なるほどね、やっぱ自分の方が稼ぎたい男は多いのか、面倒くせえなあ……と思いつつ、うちの夫にその話をすると

「へ~偉いなあ。俺は自分の年収がいくらか全然知らない」

多少は知っとけよと思うが、こんな夫だから私は楽なのだ。「そもそもキミは金を稼ぎたいと思ってないもんね」と言うと「俺は生きていければいい」とキッパリ。それから突然、CV子安武人で囁いた。

「エンヤ婆……ひとつ尋ねるが、生きるとは何だ?」
「ほ、欲するものを手に入れること、ただそれだけじゃ……ヒヒヒ」
「俺は恐怖を克服することが、生きることだと思う」

夫はディオ様のモノマネに凝っていて、私もモノマネで返している。

要するに彼はリベラルというより変人で、世間のモノサシや評価などに興味がない。金や出世にも興味がない。ちなみに妻の書くコラムを読んだこともない。そういうパートナーが私には合っていたのだろう。

以前、夫に老後資金の話をしたら「いずれ文明は破たんして紙幣は紙クズになるぞ」と言われたので「じゃあ私は破たんしないバージョンを考えるから、キミは破たんしたバージョンを考えてくれ」と返した。

すると夫が「ボーガンを買おうかしら」とわくわくしていたので、アマゾンで調べたら1万円程度だった。法螺貝の方が断然高いやないか。

ボーガンが欲しい夫と、法螺貝が欲しい妻。こんなスカタンな初老の夫婦でも、まあなんとかなっている。なぜなら、我には頼れる友がいるからだ。

FP資格をもつ金融系女子に「資産運用とか考えた方がいいのかな?」と相談して「今は銀行の普通口座に入れっ放しなんだけど」と話すと「正気ですか?」と正気を疑いつつ、証券会社の窓口について来てくれた。

彼女と担当者が電卓片手にやりとりする間、上の空でよそ見していた私。

すると「大丈夫ですか?」と担当者に不安げに聞かれたので「ハイ!」と元気よく返事をした。木の葉とか出すんじゃないかと心配したのだろう。

結局、低リスクの外債みたいなやつを購入したみたいだけど、詳しいことはよくわからない。

「アルさんってぼんやりしてるんだな」と皆様ご心配くださるかもしれないが、彼女にも「アルさんみたいにぼんやりした人は営業されがちだから、ホイホイ買っちゃダメですよ!」と言われて「ハイ!」と元気よく返事をした。

うちはこんなテキトー夫婦なので、家計も超テキトーでゆるゆるだ。家のローンと光熱費は夫が出して、その他の生活費は私が出して、それ以外は別財布。と大ざっぱすぎるやり方だが、それでなんとかなっている。

昔「夫の給料明細を見たことがない」とコラムに書いたら「家計管理は妻の役目ですよ、奥さん失格ですね」とクソリプがきて、「うるせえな、てめえの合格なんかいらねえ」と無視した。

「ちゃんと家計管理しろ」と押しつけられたら、私はストレスで狂を発しただろう。うちは双方テキトーでゆるゆるだからストレスがなく、夫婦円満だと言える。

夫婦の形は人それぞれで、2人に合うやり方でやっていけばいいのだ。

友人夫婦は妻の方がバリバリ働いて稼ぐのが得意で、夫は仕事よりも家事育児が得意。なので夫が子育てをメインで担当して、「うちはこの形がベストみたい」と仲良くやっている。

日本は「人数が多い方が正しい」「みんなと同じであれ」という同調圧力が強いが、「べつに多数派にならなくていいや」「自分に合った生き方をしよう」と思うことが、幸せになる鍵なんじゃないか。

「『みんなしてるから自分も結婚しなきゃ』と焦ってたけど、アルさんのコラムを読んで『べつに結婚しなくていいや、結婚=幸せじゃないし』と思ったら、生きるのが楽になりました」と感想をくれる読者は多い。

私は「結婚=幸せじゃない」と除夜の鐘のように繰り返しているが、先日もそれを実感する出来事があった。

私にはめったに会わない親せきのお姉さんがいる。彼女は医者で同僚の医者と結婚して、子どもはおらず共稼ぎだと聞いていた。

10年ほど前に会った時、お姉さんの印象が昔とはまるで違っていた。

私が女友達と旅行した話をすると「旦那さんは許してくれるの?」と聞かれて「ゆ、許す?」と戸惑った。
「その間、旦那さんのごはんは?」と聞かれて「夫は4歳児じゃないんで」と思いつつ「うちはテキトーなんで」と答えた。

後から別の親せきに聞いた話によると、夫は「仕事を続けてもいいけど、俺より目立つな」とか言う人なのだという。

10代の頃、私は彼女に憧れていた。当時の彼女は独身で、バンバン働いてバンバン稼ぎ、かっこいい服を着てかっこいい外車を運転する姿はめちゃめちゃかっこよかった。
語彙力がアレだが、少女の私にとって「自立した女性」の象徴だったのだ。

そのお姉さんにひさしぶりに会って、「小さくなったな」と思った。それはホルマジオのスタンドで縮んだわけじゃなく、彼女が「自分を小さく見せなきゃ」と思っていたからだろう。

その数年後、お姉さんが離婚したと聞いた。そして先日ひさしぶりに会ったら、昔のパワフルな彼女に戻っていた。

バンバン働いてバンバン稼ぎ、女友達と海外旅行したり、ダンスのレッスンに通ったりと、プライベートも満喫。

「この前、トシちゃんのディナーショーに行ったの!」と聞いて「昔からトシちゃん好きだったよな、こういう根強いファンが支えてるんだな」と思いつつ、嬉しくなった。ちなみにX JAPANのトシちゃんじゃなく、田原俊彦のことである。

「離婚、おめでとうございます!」とお姉さんに言うと「いや~人生で今が一番楽しくて幸せだわ」とにっこり。それは出所した人のような、晴れやかな笑顔だった。

「夫と別れて幸せ」もあるが「夫が死んで幸せ」もあるあるである。

「父が死んだ後、母がめっちゃ楽しそう」と語るJJ(熟女)は多い。
「うちの母、60過ぎてバイクの免許をとったのよ」とか「高校の同級生としょっちゅう集まって、ビバリーヒルズ老人白書みたいになってる」など、夫の死後に第二の青春を謳歌するRJ(老女)たち。

また「父が死んだ後、母と仲良くなった」と語るJJも多い。

「いつも不機嫌でイライラをぶつけてくる母を好きじゃなかったけど、それって父からのストレスが原因だったみたい」
「今の母は別人みたいにのびのびと楽しそうだから、私も一緒にいて楽なんだよね」

「誰が食わせてやってるんだ!」と怒鳴るのは昭和の父親仕草だが、専業主婦は離婚すると食っていけないから、耐えるしかない。
夫は妻にあたることでストレス発散して、妻のストレスは一番弱い存在である子どもにぶつけられる。

「今の母を見て『本来はこういう人だったのかも』と思うと可哀想になる」とJJたちは語る。

「毎日ため息をつきながら洗い物をする母を見て、こんな人生は絶対イヤだと思ってた。でも生まれる時代が違ったら、母は全然違う人生を生きられたのかなって」

ため息の数だけ束ねたブーケをこさえていた母親が、夫の死後にレリゴーと解放される。それまでの彼女らは何十年も「結婚」という檻の中で生きていたのだ。

かつてのお姉さんも檻の中で小さくなっていた。あんなに努力して医者になったのに「俺より目立つな」と力を抑えられて、どんなに悔しかっただろう。

ていうか「俺より目立つな」って、どんだけアナルちっさいねん。やっぱり男はアナル、ボロは着てても心はアナル、アナルと雪の女王である。

俺も何を言ってるかわからないポルナレフ状態だが、夫は変人だけどアナルガバ夫でよかった。

私は夫に束縛されたことはないし、仕事に口出しされたこともない。私のコラムを読まないのは「俺に気をつかって自由に書けなくなると困るから」だと言っていた。

ちなみに「アルテイシアの大人の女子校」を始めた時、夫に報告したら「そうか、じゃあキミは江田島平八みたいな校長になるのか」と言われて「いやならねえし」と返した。

「ていうか江田島平八みたいな妻ってイヤじゃない?」
「全然イヤじゃない、むしろ嬉しい、見た目もあんな感じにしたら?」

江田島平八みたいな妻を求める男性は少数派だろう。でも、そんな夫だから私は楽なんだな……と思いつつ「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」とモノマネしていたら喉を痛めた。

こんなスカタンな夫婦だが、「頭からっぽの方が夢つめこめる」と偉い人も言っている。なので超テキトーでゆるゆるのまま、レリゴーで行こうと思う。

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関連書籍

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

アルテイシア『アルテイシアの夜の女子会』

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アルテイシア『オクテ女子のための恋愛基礎講座』

小悪魔テクは不要! 「モテないと言わない」「エロい妄想をする」など、「挙動不審なブス」だった著者も結婚できた恋愛指南本。

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コメント

ミギ@時短勤務  “『妻には働いてほしいけど、自分より稼ぐのは複雑』みたいな男子がまだまだ多いと思いますよ」とのこと。” 年収より、どんなことがあっても食いっぱぐれないスキルとメンタルを持つほうがつよつよ https://t.co/BdlZDCjLZL 2日前 replyretweetfavorite

ほうじ  「離婚、おめでとうございます!」|アルテイシアの59番目の結婚生活|アルテイシア - 幻冬舎plus https://t.co/9imz78MF6j 母が適宜家事やったりやらなかったりしているの見ると先に死んだのが父で良かったな… https://t.co/JjgxsV1quj 4日前 replyretweetfavorite

アルテイシアの59番目の結婚生活

大人気コラムニスト・アルテイシアの結婚と人生にまつわる大爆笑エッセイ。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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