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ハイブリッド巡礼記

2026.10.25 公開 ポスト

#8 大阪で酒をくらい、淡路島、西宮で神を詣でるささきかつお(作家)

7月某日

お遍路から帰京して二週間後、新幹線で大阪に向かっていた。
新刊『2つの意味の物語』3巻目の発売イベントとして、堺市で国語教室をやっている友人のところへ赴き、子供たちに「本の面白さ、日本語のふしぎさ」を伝えにいくのだ。集まってくれた小中学生に「黒くて長い髪のきれいな女の子って、どんな子だろ? 絵を描いてみよう」などと盛り上がる。ほかに「この本の登場人物には“ある仕掛け”があるんだけど、それを見つけた子には図書カードをプレゼント!」といった謎解き出題とか、「作家ってもうかるん?」の質問に印税の仕組みを教えるとか、なまぐさい話もしてしまう(反省)。でも楽しんでくれたようなので、なにより、なにより。

夜は馴染みの居酒屋さんへ。30年前、雑誌編集者で大阪にいた頃から通っていた店で、休業日だったけどマスターが臨時で営業(しかも貸切!)してくれた。当時の編集長、副編集長、同僚たちが集って楽しい酒をいただく。赤ワインをサワーで割るという飲みやすくベロベロになるオジリナルメニューを最初に注文したのが30年前の自分と同僚G君で、久々にそれ飲んで制御不能になる。

7月某日

酒を浴びるほど飲んだ翌日は腹がユルくなる。この年齢になって月に数回しか飲まなくなると、それをすっかり忘れておった。朝起きてトイレにこもり、すき家で朝定食を食ってからこもり、おおお、今日これから神戸三宮から淡路島まで1時間強のバスに乗るんだが大丈夫か? と不安になってくる。淡路島のどこに行くのかというと、伊弉諾神宮であった。日本の神様が登場する本を書いていて、3巻目に登場いただくのがイザナギ、イザナミ。ごあいさつと取材をかねて向かう。

淡路島は、四国への往来で通過はしてたけど、ちゃんと来たことがなかった。三宮を出たバスは高速に入り、明石海峡大橋を渡り、山につっこんでいく。イザナギ、イザナミがオノゴロ島に降りたって、本格的に作ったのが淡路島だと、うすーく理解していたけど、自分が神様の本を書くにあたってガッツリ調べて、意識し始めたのは最近のことだった。
バスは高速を降りて島西部の海岸沿いを走る。夏休みスタート時だったので、観光の車、人で思った以上に賑わっている。でも自分が向かう先は山の中だし、ゆったりと落ち着いて参拝ができるだろう……と思っていたらなかなかの混み具合で、駐車場に他県ナンバーの車がつぎつぎと吸い込まれ、平日の昼間なのに若い参拝客がザッザッザッと白砂利を踏んで行く。

ええ~、なんで~と思ったが、後日ほかの担当編集者さんに聞くと「若い人の中でスピ活が流行ってるんですよ」とのこと。「スピ活」──ググるに「神社などのパワースポットを巡って、ライブやイベントの当選祈願、推しの健康や活躍を祈る」とある。ほほぉ、であればイザナギ、イザナミはスピ活として最強だろうなあと納得する。

たしかに御利益ありそうだなと、拝殿、夫婦大楠などを見てヒシヒシと感じる。

樹齢約900年。元は二株で、合体して育った奇樹

さあて、ご挨拶もすんだし、パワーもいただけたし、バスで戻るか……グルルル……と腹が鳴り、帰りのバスが来る直前まで神社のトイレにこもる。(シャワー式だった。神様ありがとう)ここからまた明石海峡大橋を渡り、西宮の「えびすさま」に行こうと思った。高速舞子のバス停から山陽電鉄に乗り換え、阪神線直通の特急で西宮駅へ。昼食をすませて西宮神社へ向かう。ここ、テレビなどで毎年紹介される「福男」で有名なとこだけど、目的は自著で登場する「えびすさん」にご挨拶すること。10月発売の『半神さまは修行中』2巻に登場いただくのだ。

おお、福男を目指す男たちが駆け出す門がこれかぁと確認し、どのくらいの距離を走るのかと自分は歩いて拝殿に到着。朱塗りの、どおおおん、とした見事な構え。「商売繁盛でっせ、先生!」と声をかけていただいたような気持ちになって、御朱印をいただこうと社務所へ。時期的には一月の「十日えびす」の方が盛り上がるんだろうな。真夏の境内は自分ともう一人くらいでゆったり、御朱印も並ばずにすぐいただけたのだが、「ああっ」と筆を手にしていたお兄さんがアワアワしている。
「すんません。間違えて日付けを『令和九年』にしてしまいました……」
「(微笑)エエよエエよ。『福を先取り』っちゅうコトで」(オレなぜか関西弁)
彼の左脇に、おそらく来年の「十日えびす」で渡す御朱印のカードが積まれていた。ひまな時間に書きためていたのだろうが、いきおいで自分が渡した御朱印帳も「令和九年」になったようだ。えびすさまに来年を確約してもらえるなんて、エエやないかい。(次回、お遍路再開です)

左:西宮神社(令和九年)、右:伊弉諾神社

【追記】
本文でもふれましたが、『半神さまは修行中』2巻が発売になりました。(3巻は来年2月)
「えびすさま」「スサノオ」「貧乏神」「アマテラス」が登場するエンタメ本です!


 

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ハイブリッド巡礼記

アラ還作家が、自著に登場する八百万(やおよろず)の神々の神社詣でと、四国八十八カ所巡礼(お遍路さん)を足掛け二年で行うことにしました。須佐神社(スサノヲノミコト)などのパワースポットで力をいただき、四国に渡って札所を巡るという「ハイブリッド巡礼」。ご当地の見どころや、グルメ、ちょっと変わったスタイルのお遍路(大変だと思うのですが……)を紹介していければと思います。

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ささきかつお 作家

1967年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2005年頃よりフリー編集者、ライター、書評家として活動を始め、2016年より作家として活動。主な著作に『空き店舗 ( 幽霊つき ) あります』(幻冬舎文庫)、「2つの意味の物語」シリーズ(新星出版社)、『名探偵はナルシスト』(静山社)、『半神さまは修行中』(岩崎書店)。

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