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ハイブリッド巡礼記

2026.09.10 公開 ポスト

#5 徳島の遍路ころがし②と「沖縄そば」お接待ささきかつお(作家)

「遍路ころがし」といえば、筆頭は12番焼山寺(しょうざんじ)までの長くて険しい山道。字のごとく「お遍路さんが転がり落ちてしまう」難所だ。台風接近中の雨の日にトライ!

6月某日~某日

 

と思ったけど「ムリしない」のがmyお遍路なのでAIに訊くと「正規ルートの反対側にあるルート→神山高校前までバスで行って、2時間半登れば着きますよ」のチート提案をいただく。往復で5時間、バス往復2時間なので、この日は焼山寺だけで終わるなと。(正規ルートは片道でも5時間以上)

朝7時のバスに乗ると、車内は高校生で溢れ返っていた。徳島市内のどこかで一斉に降りていくのだろうと思っていたら終点の神山高校前まで1時間ずーっと一緒に乗っていた。お遍路のオッサンは奇異な存在だろうなと思いながらバスを降り、ゆっくりと歩きはじめる。

アスファルトのゆるやかな道をしばらく行くとやや急な、それでも舗装された道が山へ向かっている。まだ一時間しか歩いていないな。てことは半分も歩いてないってことかぁ……とか心の中でぼやきながら、ひたすらに、ひたすらに。自分と道と木々と雨。けっこう降っているのだが、道をおおう木々がアーケードのようになっていて山に深く入るほどに雨を感じない。長い距離を感じるのはつづら折りの山道のためであった。折り返し折り返し登っていくと、さっき歩いていた道が眼下に見える。帰りはこれを下るのか……と疲れが増してくる。でもこれがお遍路。(正規ルートじゃないけど)

歩いても歩いてもこの景色

12番焼山寺に到着したのは11時を過ぎていたから、自分の足では3時間近くかかっていた。参拝をすませ、さあてバス停のところまで3時間……と道を下っていたら、上から降りてきた軽ワゴン車が、脇にピッと停まる。「下まで乗ってきませんか?」「よ、よろしいんですか?」「どうぞどうぞ。昼メシ食べに麓に行こうと思ってるんですよ。よかったら一緒に昼どうですか?」と車お接待をいただいたのは、すだち農家のお兄さんだった。

乗りながらいろいろ聞く。「ボクもお遍路やったんやけど、すだち農家のじいさんの民宿に泊まって気に入られて、ちょっと手伝ってくれへんかって言われて手伝ってたら、じいさん死んでもうて、それから8年、すだち作ってますわ。ハハハ」「すだちって、ラーメン、味噌汁とかに入れても美味しいんですよ」3時間かけて登った道を20分で下山。徳島の山奥になぜか沖縄そばの店があって、「お接待しますわ」とゴチになる。ありがとう、お兄さん。「神山町すだち」見つけたら絶対に買います。夕方に宿に戻る予定だったけど、一本前のバスで14時に宿着。三日歩いて疲れていた身体を休めることができた。

お接待ありがとうございました

翌日も雨。台風が徐々に近づいている。徳島の「遍路ころがし」はクリアしたので、あとは6~11番、13~19番、最南端23番を参拝すれば徳島エリアは踏破となる。4日目となるこの日は路線バスで6番安楽寺(あんらくじ)へ。そのあと12キロを歩いて10番切幡寺(きりはたじ)まで。11番の藤井寺(ふじいでら)までは距離があるのでタクシーを使うことにした。

お遍路あるある:みな同じ方向に進んでいるので一日に何回もほかのお遍路さんに会うことになって、「あ、またお会いしましたね」になる。この日は70代のオバ様方三人とよく会った。徳島空港から車レンタルして23番まで数日かけて巡られるとのこと。あちらは車、こっちは歩きなんだけど、昼食を摂るタイミングとかで時間がズレて、「あらあ」「また会ったわね」みたいなことになる。2日後23番でも再会することになり、楽しくなってくる。

こちらのオバ様方と再会めぐり会い

徳島5日目は13番大日寺(だいにちじ)~17番井戸寺(いどじ)。この五つの札所はまとまったところにあり、徳島駅からさほど遠くないので「チャリ遍路」をやってみることにした。朝8時すぎに徳島駅地下駐輪場で電動アシスト自転車(400円)を借りて出発。台風は夕方から夜にかけて最接近で風雨とも大荒れの予報だが、それまでに参拝はできそうだ。晴れたり豪雨になったりの天気のなかキコキコと漕いでいく。チャリ遍路って悪くないなと思った。自分の足で進んでいくし、歩きよりもサクサク巡礼ができる。高知中心部の30番台でも札所がまとまっているのでチャリ遍路してみようと思った。5時間程度でミッションクリア。夜は徳島ラーメン、再食。

明日は徳島最終日。18番恩山寺(おんざんじ)、19番立江寺(たつえじ)と巡って、牟岐線で日和佐駅(23番薬王寺やくおうじ)まで。台風は今晩中に四国を離れていくから大丈夫だろう。JR四国のHPを見ると、明日は夕方まで運転見合わせ……ど、どうなる?(続く)

【余談】
某納経所の呼び出しチャイムが「ファミマのアレ」で思わず吹いてしまった。

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ハイブリッド巡礼記

アラ還作家が、自著に登場する八百万(やおよろず)の神々の神社詣でと、四国八十八カ所巡礼(お遍路さん)を足掛け二年で行うことにしました。須佐神社(スサノヲノミコト)などのパワースポットで力をいただき、四国に渡って札所を巡るという「ハイブリッド巡礼」。ご当地の見どころや、グルメ、ちょっと変わったスタイルのお遍路(大変だと思うのですが……)を紹介していければと思います。

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ささきかつお 作家

1967年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2005年頃よりフリー編集者、ライター、書評家として活動を始め、2016年より作家として活動。主な著作に『空き店舗 ( 幽霊つき ) あります』(幻冬舎文庫)、「2つの意味の物語」シリーズ(新星出版社)、『名探偵はナルシスト』(静山社)、『半神さまは修行中』(岩崎書店)。

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