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メイキング・オブ・『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』

2026.07.29 公開 ポスト

あなたにしか書けない文章はどう生まれる? 文章術の本を書いてたどり着いた「それでも人間に残るもの」レジー(批評家・会社員)

いよいよ本日7/29発売の『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』(リンク先はAmazonに遷移します)。当連載はこの本をより楽しむべく、完成までの裏側や本文の内容について著者の視点でセルフライナーノーツ的に語っていくものである。

いよいよ本書も発売ということで、そこにあわせて今回が最終回となる。書籍と合わせてこれまでの5回分の連載も一緒に楽しんでいただきたい。

この本はタイトルの通り文章をいかに書くかの「技術」について述べた本であり、会社や仕事の場面において、こういった技術は「スキル」という言葉で言い表される。そして、保有しているスキルの幅の広さ、あるいは深さによって、その人の「市場価値」が測られるのが常である。

仕事をしている中で、文章を介したコミュニケーションはほぼ100%に近い水準で発生すると言ってよい。その質を高められれば、当然仕事の質そのものが高まる。そんな角度から考えると、文章を書くスキルというのは究極の「ポータブルスキル」だろう。

 

 

そう考えると、今回の本は「ポータブルスキルを身につけて市場価値を高める」ために活用することも可能と言える。そのような動機で新書判型の本を手にとる方がどのくらいいるかはわからないが、仕事において文章をどのように書くか悩んでいる「ビジネスパーソン」がこの本を読んで何かしら発見があったのであれば著者としてとてもうれしい。

一方で、『ファスト教養』『東大生はなぜコンサルを目指すのか』の著者としては、その「何かしらの発見」の中に「そもそも巷で必要と言われているポータブルスキルを絶対視することにどこまで価値があるのか?」という気づきもあってほしいと思っている。本書においてもこのあたりの主題を前掲書に続いて改めて述べている部分もある。

過去の2冊であまり触れられていなかった(正確に言えばそこまで触れる必要がなかった)テーマがAIについてである。

ロジカルで要点が整理された文章はAIを使えば一瞬で書けるようになる時代において、わざわざ文章を書く技術を学ぶ意味とは何なのか? 「端的にわかりやすく」以上に大事になるのは、その人が書いた証のようなものではないか?

そんな考え方を「芸風」というコンセプトでまとめたのが本書である。今回の本は決して「アンチAI」を掲げているわけではないが、文章を書く行為について考えることで「それでも人間に残るものとは何なのか」を掘り下げる内容になっている。

執筆を進めていた2025年から2026年にかけて、AIでできることは大げさでなく日々更新されていった。前述の「ポータブルスキル」のあり方もそれによって今後大きく変わっていくはずであり、おそらくAIの使い方そのものがポータブルスキルの一部に組み込まれていくだろう。今日大事だと思っていることが明日には陳腐化する時代を我々は生きていることを理解しなければならないし、その中でも変わらないことは何なのかに目を向ける必要がある。

文章を書くことに隣接するスキルとしての「言語化」についても、ここまでの話と同様のことが言える。何かを言葉にできることはもちろん素晴らしい。だが、何かうまいことを言うのがそこまで重要なのか? 中身のない言葉を吐き続けていないか? 事象の解釈を捻じ曲げることで自分にとって都合の良いことを大きな声で言っているだけになっていないか? そういった心の揺れがないままに「言語化はビジネスパーソンの必須スキル」というようなメッセージを発信しているコンテンツに対しては適切な警戒心を持っておきたい。

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先ほど紹介した『瞬時に「言語化できる」人が、うまくいく。』における「ビジネスパーソン必須の能力」「社会人としてのレベル」ともつながりますが、どうしても言語化というテーマはビジネスの世界でマウントをとるための「道具」、もしくは周りから一目置かれるための「武器」として扱われがちです。本書の議論に引きつけると、他人の設定した物差しで高得点をとるために必要なものが言語化、という話が大手を振って流通しています。

三浦が持つ視座で世の中を見渡し、そこから新しい企画を生み出して人々に驚きやインパクトを与えるのはきっと楽しいことなのではないかと想像します。ですが、『言語化力』にはそういった内面から湧き出る気持ちよさのような話はあまり出てきません。ビジネス書の性質上やむを得ないことかもしれませんが、言葉を紡ぐ鮮やかなスキルが処世術に回収され続けていきます。わたしとしてはこういった本を読むと、言語化というものの価値が矮小化されているとどうしても思ってしまいます。

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ここで出てくる固有名詞については本書でより具体的に検証している。功罪の「罪」の部分についても厚めに述べているので、ぜひご自身の意見と照らし合わせていただきたい。

本書の執筆にあたって改めて調べてみたが、「言語化」はある場所では唯一無二のスキルかのように持て囃(はや)され、一方ではその反動かのようにビジネス書特有の必要以上に不安を煽る文体の餌食になっている。この状況は、まがりなりにも文章を書く(つまり「言語化」する)ことを仕事にしている自分としては看過できるレベルを越えているように感じる。

「言語化」ブームを的確に解体したうえで、本当に重要なことは何なのかを改めて考える——そんなトライを本書では行っている。言葉を生み出すこと自体はAIで無限にできるようになった時代だからこそ、このテーマについて考える重要性は今後も増していくのではないだろうか。

表層的なスキルは世の中の変化とともに無用の長物になっていく。今回の本は、そのレイヤーでの文章の書き方については最低限の記述にとどめたうえで、より普遍的なコンセプトについてまとめたつもりである。時代の移り変わりにどう対していくか、読者の皆さまとともに考えていければ幸いである。


というわけで、改めて『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』(リンク先はAmazonに遷移します)、よろしくお願いします。感想もどんどんシェアしてください!

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メイキング・オブ・『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』

7/29発売の批評家・会社員のレジーさんによる新刊『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』にまつわる新連載です。連載単体だけでなく、書籍の番外編としても楽しめる内容になっています。

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レジー 批評家・会社員

1981年生まれ。一般企業で経営戦略およびマーケティング関連のキャリアを積みながら、日本のポップカルチャーについての論考を各種媒体で発信。著書に新書大賞2023入賞作『ファスト教養10分で答えが欲しい人たち』(集英社新書)のほか、『増補版夏フェス革命―音楽が変わる、社会が変わる―』(blueprint)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア、宇野維正との共著)、『東大生はなぜコンサルを目指すのか』(集英社新書)。

X(旧Twitter) : @regista13。

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