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メイキング・オブ・『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』

2026.07.01 公開 ポスト

ビジネスパーソンこそ、自分の「芸風」を持つべき理由 なぜ深夜の怒りの長文メールは上司に読まれたのか?レジー(批評家・会社員)

7/29発売の文章にまつわる本の内容についてセルフライナーノーツ的に語っていくこの連載だが、当該の書籍について正式な発売情報が開示された。タイトルは『ビジネスパーソンのための 「芸風」で書く技術』(リンク先はAmazonに遷移します)である。

文章を書くために必要なテクニックや心構えをまとめた書籍は枚挙にいとまがない。有名なもので言えば本多勝一『日本語の作文技術』はこの領域のクラシックであり、折に触れて読みなおしても新たな発見がある。谷崎潤一郎や三島由紀夫のような文豪が『文章読本』というど真ん中のタイトルで文章について語るケースもあるし、自分の音楽ライターとしての出自に近いもので言えば唐木元『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』も話題を呼んだ。狭義の文章術の本ではないが、最近で言えば三宅香帆『好きを言語化する技術』ももちろんはずせないだろう。

 

需要があるから市場として大きいとも言えるし、競合が乱立するレッドオーシャンとも言える文章本シーン。ここに向けて自分が書く意味のあることとは何だろうか?

自分と文章の関係。これを考えるにあたって、忘れられない体験がある。

「お前のメール、長いのになぜか最後まで読んじゃうんだよな」

これは20年ほど前、当時勤めていた会社で隣りの部門の上長から言われた言葉である。社内の組織変更に伴うちょっとしたトラブルに巻き込まれて、血気盛んな若者だった自分が深夜のテンションで一心不乱に書きあげた怒りのメールに対する翌朝のリアクションがこれだった。

厳密な内容までは覚えていないが、このメールは
・簡潔でなく長い
・結論から書いていない
・事実と感情を分けていない
など、いわゆるビジネス文書のセオリーを無視したものだったことは覚えている。一方で、このメールの後にトラブルのもととなった業務が正常化されたことも記憶に残っている。

細々したテクニックではなく気持ちをほとばしらせた文章が結果的に仕事を前に動かした。この体験は、はっきり意識してきたわけではないものの自分の行動のベースになっているように思う。

考えてみれば、社外での文章を書く活動においても、賛否両論含めて大きく反響を呼ぶアウトプットの根底には何かしらの怒りや違和感があることが多い。『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』はその典型である。ちなみにわたしの妻は「優しそうな旦那さんですね」と言われるたびに「いや、あの人は怒りをエネルギー源にして生きている」とその評価を打ち消しているらしい(冷静に考えればこの2つは両立する可能性もありそうだが)。

自分は「怒り」が何かを発信する際の原動力になっていることが多いが、おそらくこれは万人に当てはまる話でもないだろう。もっと慈愛に満ちた人もいれば、何となくのもの悲しさと共に生きている人もいるはずである。

いい文章というのが誰かの心を動かし、思考を揺さぶり、さらには行動を促したりするものだとすると、それを達成するには「結論から簡潔に書く」などというテクニックの前に、その人の性質がちゃんと伝わる文章を書くための姿勢や手法を学ぶべきではないか?

この考え方は連載1回目で触れた自分の中の大きな問い、【「自己責任で稼ぐが勝ち」の社会において、単に競争から降りようでもなく、感覚を麻痺させて競争に勝とうでもなく、人間らしさを保ちながらファイティングポーズをとり続けるために必要なことは何なのか。】ともつながっている。「感覚を麻痺」させるしかない状況は、自分の性質ではなく社会的な評価基準に合わせることばかりが「競争に勝つ」ための手法になっていることによって生まれていると言える。だからこそ、外部から持ち込まれたものではない自分の中の物差しを定義することが、今のビジネスパーソンを覆う呪縛を解く第一歩になるはずである。

自分の性質を文章に生かす。今度の新刊では、そのための技術を「芸風」という言葉で表現している。お笑い芸人の特徴を示す際に使われる、あの芸風である。

もちろんこの本は「みんなお笑い芸人のようなビジネスパーソンになろう」といったことを主張しているわけではない。ただ、たとえば会議での議論やプレゼンテーションなど、仕事において何かしら「芸」の側面が求められることは決して少なくない。そういった「芸」に関する自分なりのスタイルを各自が見つけてそれを文章にも生かす、という考え方を提唱するにあたって「芸風」という言葉を使うことにした。

この言葉も、先ほどのメールの話と同じく若いころの職場での出来事が関係している(40代半ばになって「三つ子の魂百まで」という言葉の意味をかみしめている)。若手として先輩のプレゼンに同行している際に、かっちりしたプレゼン、双方向のやり取りを大事にするプレゼン、雑談のようなプレゼンなど人によってやり方が違うのを感想として上司に述べたことに対して「まあこの辺は芸風によるから」と言われた経験が、自分にとって「ビジネスシーンにおける芸風」というものを意識するようになったきっかけである。

なお、ここで言う「芸風」というのは、いわゆる「自分らしさ」とは似て非なるものでもある。自分の持ち味や心の中が対象になっている点において両者は重なっている部分も大きいが、「芸風」については「芸」である以上それをどうやってアウトプットするかにより重きを置いている。単に「自分らしく仕事をしましょう」ではなく(もちろんそれはそれで大事だが)、自分のあり方を表現できる型をどうやって見つけるか、そしてそれを実際にどう行うかがこの本の主題である。

というわけで、今回の本ではそれぞれがそれぞれの芸風をいかに見つけていかに文章に落とし込むかのプロセスについて、順を追って説明しているのでお楽しみに! 良ければこちら(リンク先はAmazonに遷移します)から予約よろしくお願いします。

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メイキング・オブ・『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』

7/29発売の批評家・会社員のレジーさんによる新刊『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』にまつわる新連載です。連載単体だけでなく、書籍の番外編としても楽しめる内容になっています。

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レジー 批評家・会社員

1981年生まれ。一般企業で経営戦略およびマーケティング関連のキャリアを積みながら、日本のポップカルチャーについての論考を各種媒体で発信。著書に新書大賞2023入賞作『ファスト教養10分で答えが欲しい人たち』(集英社新書)のほか、『増補版夏フェス革命―音楽が変わる、社会が変わる―』(blueprint)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア、宇野維正との共著)、『東大生はなぜコンサルを目指すのか』(集英社新書)。

X(旧Twitter) : @regista13。

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