会社員と並行して批評家・ライターとしても活躍するレジーさん。10年以上の、ものを書くキャリアをもつ筆者による「書く」ことをテーマにした完全書き下ろしの連載が始まります。本連載は、7/29発売の新刊のセルフライナーノーツとしても楽しめる内容となっています。初回の今回は、文章をテーマにした本を執筆することになった経緯についてです。
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「自己責任で稼ぐが勝ち」の社会において、単に競争から降りようでもなく、感覚を麻痺させて競争に勝とうでもなく、人間らしさを保ちながらファイティングポーズをとり続けるために必要なことは何なのか。
この文章は、拙著『東大生はなぜコンサルを目指すのか』の「あとがき」冒頭に書いたものである。
『東大生は~』およびその前に発表した『ファスト教養』の2冊は、この問題意識を起点にまとめられている点で共通している。「感覚を麻痺」させる材料が世の中に様々な形で広まっていて、その影響はビジネスとカルチャーをまたがって波及しており、一方で「競争から降りよう」では解決にならない構造的な問題が今の社会には潜んでいて、そんな時代をどうせ生きていくならちゃんと「ファイティングポーズ」をとりたいよね、という思いは今も変わっていない。いや、日に日に強くなっていると言う方が正確だろう。
『ファスト教養』を刊行したのは2022年9月だが、振り返ってみれば冒頭の問いかけはその時に生まれたものではない。
前述した2冊の新書の前に発表した2017年の『夏フェス革命』も、2018年の『日本代表とMr.Children』も、大きな時代の流れの中でビジネスとカルチャーのせめぎ合いがどのように表出しているかを描いた本だと言える。そしてこの視点は、会社員をしながら文化に関する文章を書く生活を続ける中で養われてきたものでもある(気づいたらこのスタイルも会社員人生の半分以上を占めるようになっていた)。
複数のフィールドを行き来しながら、それぞれで得られる知見や体験をミックスして、その内容を実感とともに言葉にする。おそらくこの先も、自分はこういったことをやり続けていくのだと思う。
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「レジーさまのブロガー・ライターとしてのスキルを、1つの体系立ったライティングスキル本としてまとめていただきたいと考えた次第です」
昨年の夏、こんなメッセージが幻冬舎の編集の方から送られてきたときに、最初は頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ。
確かに以前「文章の書き方についてちゃんとまとめたい」という旨の話をしたことがあり、この方は目ざとくそれを見つけたうえでの連絡だったようだが、正直なところその「ちゃんとまとめたい」には深い意味も具体的なイメージもなかった。
「文章術」という言葉もあるが、自分の中にはどうしてもこの手のハウツー的なもの、そのなかでも「ビジネスシーンで役に立つ」といった文脈が付与されやすいものに対する形容し難い違和感がある。こういったコンテンツの氾濫こそが、冒頭の問いを自分が持つことになる大きな要因だと思っている。
であれば、自分がこのテーマについて書くことは美学に反するのでやめた方がよい。当初はそう思った。
一方で、こういう考え方もできるかもしれないというのも頭をよぎった。「"まともな"ハウツーを作ることができれば、単なる問題提起とは違う形で自分にとっての重要な問いと向き合えるのではないか?」
かつて思想家の千葉雅也は自身の著作である『勉強の哲学』について「この本は一見、自己啓発本めいた体裁をしていますが、これは一種の擬態です。実は、自己啓発本をハッキングするようなパロディを試している」という発言をしている(『メイキング・オブ・勉強の哲学』)。その取り組みは大いに成功していて、勉強という行為を問い直すのみならず、実際に何をすればよいかがわかりやすく伝わってくる構成になっている。
自分はこれまでハウツーではなく批評に類するものをやってきたつもりだが、(千葉と並べるのもおこがましいが)今回の企画を通じて自分にとっての『勉強の哲学』を書くとしたら?
実はこれまでにも似たような取り組みをしていないわけではない。『ファスト教養』『東大生はなぜコンサルを目指すのか』の最終章は、いずれも「ではどうするか」について書いたものである。その中で提示した「"好き"を見つける」「ジョブクラフティングの視点を持ち込む」という話は自分も常に実践していることでもあり、また読者の方からも一定の反応があった。
この辺の話を「ライティングスキル」といういただいたお題で膨らませてみるとどうなるだろうか。
おそらく単に「文章をどううまく書くか」だけでは不十分で、「そもそも何を書くか」「何を書く時に自分の筆が乗るか」を意識する必要があるだろう。そうなってくると、そこにはいかに批評的な視点を盛り込むかも重要になってくる。
ではそのような考え方は会社における文章でも使えるのか? ここについては、自分の経歴があるからこそ見解を提示できる話になるかもしれない。会社の仕事で書く文章と社外の活動で書く文章を並べた場合、共通する部分と異なる部分がそれぞれ存在する。
ただ、その比率は半々ではない。自分の中では共通する部分の方が多く、感覚としては同じ思考プロセスをベースにその出力を調整しているイメージが自分の中にはある。ではその調整方法はというと…
今まで筋道を立てて考えたことはあまりなかったが、何かしら自分の中にある「ライティングスキル」を「複数のフィールドの行き来を通じて培われたもの」として定義することで、ユニークな文章術の本を書けるかもしれない。そしてそれは、自分が今後も向き合い続ける問いにを今までとは異なる角度から掘り下げるものになるのではないか。
そんなことを考えながら執筆したのが、7/29に刊行される文章にまつわる本である。発売まで続くこの連載では、次の本がどんな内容なのか、その内容が固まるまでにどんなプロセスを経てきたかについて、完成した原稿も適宜引用しながらまとめていきたいと思う。
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7/29発売の批評家・会社員のレジーさんによる新刊書籍にまつわる新連載です。連載単体だけでなく、書籍の番外編としても楽しめる内容になっています。
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