人生は地続きだ。
今まで生きてきた中で経験した良いことも、悪いことも、それぞれの事象が後の人生に大なり小なり影響を及ぼす。
あの時の何気ない親切が思わぬ形で返ってきたり、あの時の余計な一言が後に取り返しのつかないことになったり……。
今までの時間のどの地点も外すことの出来ない点として存在し、すべてが今に繋がる線となる。
誰しもがそんな地続きの人生の最新の点の上で、今この時間を生きているのだ。
「銀河の一票」(関西テレビ) 第7話でついに出馬表明をした月岡あかり(野呂佳代)の知られざる数奇な人生から、そんな“地続きな人生”の厄介で愛おしい希望を感じた。

グレーを犯しながら回る世界に迎合するには?
前回の第6話では来る都知事選に向けて、政治素人で無名のあかりの知名度をアップさせようと暴露系YouTuber:白樺透(渡邊圭祐)と共に「ぶつかりおじさんを成敗する」という“やらせ企画”の動画配信を行うことに。
結果、想定外に現れた本物のぶつかりおじさんをあかりが諭した動画がネット上で話題となり、「あれは誰だ?」と動画に映る元幹事長秘書:茉莉(黒木華)と共に話題となった。
あかりと茉莉の正体が明らかとなった時にマスコミが押しかける前に、想定問答の作成を行うこととなったガラさん(岩谷健司)、蛍(シシド・カフカ)を擁するチームあかり。
その中で焦点となったのが“物語の構築と共有”。
より有権者が惹かれるような物語にするために、あかりと茉莉の関係、出馬の動機は大きく再構築する必要があった。
母の形見の電球を探した時間を20分から4時間に盛ったのは流石にやりすぎかと思ったが、それぞれの時間を聞いて抱く印象の差は歴然だ。
透へのバズリ協力を依頼したことや、茉莉とあかりが不法侵入で屋上に登ったことなどの所謂“悪いこと”は勿論伏せておくことに。
このドラマの良い部分の一つに、こういったそれぞれのグレーなことを包み隠さずグレーだと言及してくれるところにある。
誰もが生きている中で少しは行っているであろう“人を傷つけない”グレーなことを肯定してくれているような……。誰しも清廉潔白では生きていないことを暗に提示してくれていると感じる。
例えば、有名なミュージシャンの中で許可取りをせず路上ライブ禁止の場所でライブをし、有名になった人たちがいる。
その人たちに対して「こいつらはルール違反で有名になった」と言う人は殆どいないだろう。
多少のグレーは目をつぶられ、美談の裏で影を潜める。
それが世の中の常なのではないだろうか。(良い悪いではなく)
ただ、そのグレー判定も所詮各々の線引きでしかない。
誰かがグレーと判断し行った裏で、その結果に不利益を被るものがいるかもしれない。
……そんな思考に永遠と悩まされている。
相変わらず答えは出ないが、茉莉やあかりすらもグレーを犯しているのだからそんな気にしないでいいのかな……と少し心が軽くなった。
養護教諭からスナックのママ、そして都知事に!?数奇なあかりの人生を支えるものは……。
話は戻るが、チームあかりが“物語の再構築”をする中、あかりは自身の隠していた過去についてついに話し始めた。
あかりが広げたのは、中学校の保健室の養護教諭が1人の生徒を自殺未遂に追い込んだという記事。
その養護教諭こそがあかりだというのだ。
あかりは鈴原ほのか(根本真陽)という保健室登校の生徒に寄り添い、特技である人形作りを応援していた。

しかし、鈴原ほのかの人形作りや保健室登校は母親の理解を得られなかった。
ほのかはあかりに救いを求めるも、あかりは彼女の繊細な心情を取り違えてしまった。
その日の夜、母親と口論の末にほのかはベランダから飛び降りてしまったのだ。
幸いほのかの命に別状はなかったもののこの件が週刊誌やネットで拡散され、あかりは出勤停止となった。
こうなってしまったのは決してあかりのせいでもほのかのせいでもないが、結果としてこの出来事はあかりの人生を大きく変えた。
それからあかりは死を選ぼうとし、とし子ママ(木野花)と出会い、養護教諭だったあかりはスナックのママとなった。
さらにはその先で茉莉と出会い、スナックのママだったあかりは都知事を目指すこととなった。
なんとも数奇な人生だ。
良くも悪くも、地続きの人生の中で転がった先には何かが待っているものだと思った。
そして、その先々で出会った人々が今でもあかりを支えてくれている。
スナック時代のお客さんだった人たちが、あかりの選挙写真の撮影を手伝ってくれたり、表情が作れないあかりの緊張をほぐそうと歌ってくれたり……。
養護教諭での経験を仮に悪い点と捉えたとしても、その悪い点があったからこそ辿り着いた“スナックのママ”という良い点。
良い点も悪い点も、どの地点も決して無駄ではなくどう転んでもとにかく地続きなのだ。
時には死にたくもなるだろう。
でもあかりが言っていた様に
「死ぬって言葉を取引に使ったら戻れなくなっちゃう。うまくいってもいかなくても、苦しくて……いつか本当に死ぬしかなくなっちゃう。なんとか大人に辿り着こう?」
そっくりそのまま、学生時代の私に投げかけたい言葉だ。
そんなあかりの言葉は鈴原ほのかにしっかり響いていたのか、彼女はちゃんと大人まで辿り着いていた。
そしてほのかから手紙と“あかりと茉莉を模した人形”が届いた。
ほのかの人生もまた、あの辛く死にたくなるほど苦しんだ地点から今まで繋がっていたのだ。
その苦しみの地点は決して無駄ではなく、今のあかりに繋がった。
辛くて苦しいことなんて、ない方が良いに決まっている。
でもそれが何かに繋がることもまた人生。
人生とは、なんて厄介で愛おしいのだろう。
打つはずではなかった点が多い私の人生の行末も、過去の辛い経験を乗り越え前に進むあかりを見て楽しみになってきた。
何かに苦しんでいるあなたの今が、過去の愛すべき点となって未来に辿り着くことを願って。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
関西テレビ『銀河の一票』( 毎週月曜夜10時~)
出演:黒木華、野呂佳代、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、松下洸平
脚本:蛭田直美
音楽:坂東祐大
主題歌:「おーへい」浜野謙太(在日ファンク)&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代(日本コロムビア)
プロデュース:佐野亜裕美
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク
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