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2021.06.16 更新 ツイート

「血だるま剣法」「始末妻」——三島由紀夫が激賞した絵師を、いままたリバイバルせよ!「キッチュ第三号 究極の劇画家・巨匠  平田弘史特集!!!」(ワイズ出版) 中条省平

今回ご紹介するのは、ちょっとマニアックな雑誌です。不定期刊行の「総合マンガ誌」と銘打った「キッチュ」という雑誌です。

 

版元は、あのワイズ出版。「あの」といったのは、ワイズ出版は映画関係の書物をたくさん刊行していることで、映画ファンには有名な出版社だからです。

しかし、そんなファンでもワイズ出版がマンガの分野に力を入れて、「キッチュ」というマンガ誌を出していることは知らない人が多いのではないかと思います。

かくいう私が、「キッチュ」を買ったのはこの第三号が初めてだったのです。なぜなら、今回は「究極の劇画家・巨匠 平田弘史特集!!!」だったからです。

私が平田弘史の名前を意識したのは、三島由紀夫が書いた「劇画における若者論」という評論ででした。三島の割腹自殺のすこし前(1970年)に書かれた文章で、三島は劇画がブームになるずっと前から劇画好きで、貸本専門の劇画をわざわざ上野のアメ横の卸店まで行って手に入れて愛読していたのです。

「それはまだ『悪書』に属しており、私はとりわけ平田弘史の時代物劇画などに、そのあくまで真摯でシリアスなタッチに、古い紙芝居のノスタルジャと、『絵金』的幕末趣味を発見していたのである」

私は早速、平田弘史のマンガを古本屋で探しましたが、ようやく見つかった1冊が、芳文社の『武士道無惨伝』(1968年)でした。

そこに入った8編はいずれもすごい傑作でしたが、なかでも「おのれらに告ぐ」の復讐譚には戦慄させられました。しかも、このマンガは元々「血だるま剣法」という作品だったのですが、部落差別で禁書となり、作者はそのまま埋もれることを恐れて、わざわざ設定を変えて描き直したものなのです。オリジナルの「血だるま剣法」は、「おのれらに告ぐ」をはるかに凌ぐ大傑作ですが、当時は読むことができませんでした。

「キッチュ」の平田弘史特集を読むと、現在でも三島由紀夫のような熱烈な平田ファンがけっこういて、寄ってたかって平田作品の途方もない面白さ、異常さを絶賛しています。

今年の初めに出た『妖怪少年の日々 アラマタ自伝』でも荒俣宏が、小学生の頃から平田劇画に熱中して模写し、マンガ家を志したと書いています。もちろん、オリジナルの「血だるま剣法」にも熱狂したのです。

荒俣宏は石ノ森章太郎ばりの絵を描ける、一流のマンガ家にもなれたはずの才能の持ち主ですが、平田弘史を60年間尊敬しつづけ、ついに伊豆の平田邸を訪問してインタビューに成功したのです。

「キッチュ」では、竹熊健太郎が「始末妻」を絶賛しています。私は高校生のとき青林堂から出た『始末妻』(1972年)を古本屋で見つけて買い、表題作の凄まじさにちょっと辟易してしまいました。だってこれ、わきがが強すぎて起こる一大悲劇なのですよ。ともかく、平田劇画、一度お試しください。

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中条省平

1954年神奈川県生まれ。学習院大学フランス語圏文化学科教授。東大大学院博士課程修了。パリ大学文学博士。著書『中条省平は二度死ぬ!』『文章読本』など。翻訳書最新刊はロブ=グリエ『消しゴム』。

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