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このコラムを書いているのは、4月11日の日曜日、40代最後の日だ。翌日の12日が誕生日で、木曜日にUPされる頃には、50歳になっている。

ちなみに40代最後の日は何をしているのかというと、締め切りがあるからずっと家にいて仕事しかしていない。

やっと! 50歳!

強がりではなく、ホッとしている。

そして生理は、まだ終わらない。

 

あー面倒くさかった

不規則だし、二日ほどで終わってしまうので、閉経の気配を濃厚に漂わせているけれど、毎月来ている。

本音をいうと、めんどくさいから、とっとと終わって欲しい。

ネットで、月経カップや、ミレーナ、ものすごい性能のいいサニタリーショーツなどの情報を見るたびに、あと5年早ければひと通り試してみただろうなと考えている。

初めて生理になってから40年、あの頃はタンポンだって抵抗があったし、PMSなんて言葉も知らず、生理はひたすら鬱陶しいものでしかなかったのを考えると、今はどれだけ楽になったか。

さらに昔は、女性は毎月血を流すから不浄だと、行けない場所だってたくさんあったのだ。

閉経が近づき、しみじみと40年間の生理のめんどくささを思い出し、やっと解放されるという喜びをかみしめている。

ちゃんと老いている

そして50歳の私は、ちゃんと老いている。

顔にはシミは増えたし、白髪は頭のほうは少なめだが下はかなりグレーヘアだ。

目は老眼がすすんだし、とにかく疲れやすい。

やたらと乾燥するので、ハンドクリームやオイルが欠かせない。

髪の毛もコシがなく、もうロングヘアは無理で、薄毛に脅えている。

食べられないものも、増えた。冷たいものと油ものは、少しだけしか入らない。お酒だって、ずいぶんと弱くなった。

そしてやっぱり疲れやすいし、特に生理前はあちこち痛い。

老化は外見だけではなく、忘れっぽくもなったし、集中力がない。

だから仕事だって、昔みたいに睡眠時間を削ってたくさんはできない。

徹夜なんて、絶対に無理だ。

それらも含めてすべて、「おばちゃんだから、仕方ない」とは思う。

下手すりゃ、孫もいる年齢なのだ。

死はもうそこまで

50歳という年齢を、まだ若いという人もいるけれど、昔、「自分には未来なんてないから、早く死にたい。30歳が限界だ」なんて思っていた私からしたら、長く生きたなという感覚だ。

20代で、こんなに人生がしんどいのならば、30代、40代になったら、もっとつらくなるだろう。50代なんて、考えられない。だから生きていたくない。自分で自分を殺す勇気はないから、誰か殺してくれないかと、ずっと考えていた。そんな最悪の20代だったせいか、30代、40代と、私はだんだんと楽になっていった。

老いてはいるけれど、今がいちばん幸せだとは、心の底から思っている。でも、そう感じられるのは仕事もあり、そこそこ健康であるからで、それらを失うと、また違ってくるのだろう。これからどうなるかは、全くわからない。

そしてときどき、若くで亡くなった人たちのことを思い出しもする。もっと生きたかった人もいれば、自ら生きるのをやめてしまった人たちもいる。

昔の自分のように早く死にたい人たちに「生きていれば必ずいいことがある」なんて、言う自信はない。

今の世の中で、明るい未来や希望を持つほうが難しいと、特にコロナ禍の中で考えることが増えた。

私だとて、昔より今のほうが楽にはなったけれど、生きるのがしんどいなぁと思うことは、しょっちゅうで、去年は仕事の上で激しく落ち込む出来事もあり、もういいんじゃないかなんて考えもした。

これから先、絶望と孤独に苛まれず強く前向きに生き続けようなんて、絶対に言えない。

いつも目の前に、死は存在している。
それが早いか遅いか、自ら選ぶか運命に身を委ねるかは、わからないけれど。

パズルのピースを拾って

50歳が近づき、これからどうやって生きていくかというのは、この一年でずっと考えていた。

何か新しいことをしよう! 自分を変えよう! とは思わない。

そんな元気は、私にはない。

ただ、もう「いつ死ぬかわからない」年齢になったと思うからこそ、今までの人生でやり残したことを思い返してみた。

これからはパズルの残されたピースを埋めていく時間だ。

私の人生で欠けているものを拾い集めていく。

それは死の準備でもある。これから何十年生きるかわからないし、もしかしたら100歳まで生きてしまうかもしれないけれど、身の回りを整理し、世界を恨み不満を叫びながら人に迷惑をかけて死んでいくことがないように、幸せに生涯を閉じたい。

私の願う「幸せ」は、人とは違うものかもしれないけれど、誰かに合わせようなんて思わない。つまり私は、これからなお一層、わがままになる。

そう考えているのは、今、ものすごく生きることに執着があるということだ。

そして私は

わがままで身勝手で、年甲斐もなく、悟りも開かず、落ち着きがない。

「いい年をして」と非難されることも増えるだろう。

朽ちていこうとする肉体に鞭を打ち、諦めきれない醜悪なほどの欲望を抱き続けながら老いて、死の準備をはじめよう。

そんな50歳の幕があけた。

(京都国立博物館にて、鑑真和上)
(花と野草のフレンチ)
(ふきのクリームブリュレ)

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ヘイケイ日記~女たちのカウントダウン

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花房観音

2010年「花祀り」にて第一回団鬼六賞大賞を受賞しデビュー。京都を舞台にした圧倒的な官能世界が話題に。京都市在住。京都に暮らす女たちの生と性を描いた小説『女の庭』が話題に。その他著書に『偽りの森』『楽園』『情人』『色仏』『うかれ女島』など多数。

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