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人形怪談

2021.01.13 更新 ツイート

関西弁を話すアイヌ人形 田辺青蛙

去年の春先に、某放送局に勤めているIさんからこんなメールが届いた。

「私の夫は神戸出身なのですが、小さい頃、怒られて泣いて拗ねて押入れに閉じこもっていたら、アイヌ人形に関西弁で、泣いてたらあかんで~と喋りかけられた体験があるそうです。

本人曰く、恐怖体験ではないそうですけど……ね。関西弁で! というところに私は可笑しみを感じてしまうのです」

 

気になったので、詳細について尋ねてみるとこんなお返事が来た。

「たしか、昭和47~8年、夫が5歳くらいのころみたいで、神戸市北区にあった団地の2DKの部屋に住んでいたんですけど、その北側の部屋の押し入れの下段に、怒られてすねたりすると夫は自分からよくこもっていたんです。

押し入れには、ガラスケースに入った人形や掃除機など雑多なものが詰まっていて、その関西弁で喋ったアイヌ人形というのは、沖縄に住む親せきの叔父さんの北海道旅行のお土産だったんです。

その人形は木彫りではなく、布製のもので、青い衣装を身にまとい、口の周りに青い入れ墨がしてある美人さんだったそうです。明かりのない真っ暗な中なのに、その人形がはっきり見えて話したことを覚えているみたいで、一度ではなく何度か話をした記憶があると聞きました。その中で、夫が唯一今も覚えている会話がこちらです。

 

人形「男の子やのに、泣いてばっかりいたらあかんやん」

俺「お姉ちゃんは泣いたりせーへんの?」

人形「お侍さんに見つかったら殺されるから泣かへん」

 

当時は、その人形がアイヌの人形であることも、アイヌの歴史や背景ももちろん夫は知らなくって、この記憶は小5のころに不意に思い出し、それ以来ずっと覚えているみたいです。

ちなみに、その人形はこんな感じだったみたいです。

手か足元にスズランがあったらしいです。

ということで似た人形の画像をIさんが送ってくださった。

そういえば、私の妹も昔、家にあった起き上がりこぼしを足で蹴ったら、「やめてんか」と言われて怖かったと泣いていたことがあった。

関西弁で喋る人形はあちこちにあるのかも知れない。

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田辺青蛙

1982年大阪府生まれ。オークランド工科大学卒業。
2006年、第4回ビーケーワン怪談大賞で佳作となり、『てのひら怪談』に短編が収録される。2008年、『生き屏風』で、第15回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。
現在大阪に作家の夫と在住。そんな夫とのアメリカ旅行記&エッセイ集の『モルテンおいしいです^q^』(廣済堂出版)『読書で離婚を考えた。』(幻冬舎)発売中。
怪談と妖怪ネタを常時募集中。

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