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アルテイシアの59番目の結婚生活

2020.11.18 更新 ツイート

15周年に振り返る「夫婦のなれそめと結婚を決めた理由」 アルテイシア

デビュー作『59番目のプロポーズ キャリアとオタクの恋』を出版する前、帯のコピーを考えていた時のこと。

「何かいいアイデアはないかね?」と夫に聞くと「キャリアとオタク、どちらが勝っても人類に未来は無い」と返ってきて「ダメだこりゃ」と思った。

 

幸い人類が滅亡することもなく、来月、結婚15周年を迎える。

この機会に改めて、夫婦のなれそめについて書こうと思ったのは、友人のシオリーヌちゃんのコラムを読んだからだ。

助産師で性教育youtuberのシオリーヌちゃんは、看護師である夫のつくし君とのなれそめについて、次のように書いている。

「結婚生活A面/B面」より~

「私は多分デミセクシュアルというセクシュアリティをもっていて、よっぽど相手への信頼感や親密感を感じないと性的欲求が生まれないのです。(なので初対面の人とワンナイト、的なのとは程遠い人生を歩んできました)

そうした事情もあって“たしかに好意はあるけどまだ境界線を引きたい”という気持ちがあったのだと思います。

つくしにその話をした時、彼は「実は今性感染症の検査を受けていて結果待ち中なんです。少なくとも結果が出るまでは誘う気はないし、そんな軽く捉えていないです」というような話をしてくれて、私はこれがすごくすごく嬉しかった」

尊い(尊い)

尊いエピソードに魂が浄化されつつ、夫に出会った29歳の冬を思い出した。

初対面の人とワンナイト的な人生を歩んできた拙者は、近所のバーで出会った夫と試しに付き合うことにした。

その後、セックスのセの字もないまま半年経過。私から「そろそろやろうや」と迫ったら「早すぎない?」と夫に渋られたので、「大切にするから」と説得してやらせてもらった。

尊さは微塵もないが、性的同意は一応とっている。

もともと性欲の薄い夫は「寝技をかける時に邪魔だから、チンポなどとってしまいたい」と言っている。

そんな性欲薄夫なので「もし夫が浮気したら?」と聞かれても、正直想像がつかない。
「うっかり転んだら穴があって偶然入った」と言われた方が「そういうこともあるかいな」と納得するんじゃないか。

拙者はビッチで御座ったが、夫に対して股間のセンサーは微動だにしなかった。それでも出会って1年で自分からプロポーズして結婚を決めた。

結婚はタイミング、という言葉は一理ある。もっと若い頃に夫に出会っていたら、結婚していなかっただろう。

29歳の私は「惚れたハレたはもういい、家族がほしい」と切実に思っていた。過去の恋愛でさんざん傷ついて、全身に矢が刺さった弁慶状態だったからだ。

かつ、20代は広告会社でセクハラされまくっていた。当時は「セクハラを笑顔でかわすのが賢い女」と洗脳されて、自分が傷ついていることにも気づけないまま、自尊心を削られていた。

おまけに毒親問題も抱えていて、自尊心が息してない状態だった。

そんな状態で自傷のようにセックスしては「私なんてセックス以外に価値がない」と思いつめる、メンヘラ弁慶と化していた。

だからこそ、セックスを求めてこない夫に安心したのだと思う。

我々の交際はロマンチック要素も皆無だった。出会った瞬間から「貴様と俺」みたいな関係で、男としてじゃなく人として、夫のことが好きだった。

もっと若い頃はロマンチックに憧れがあったため、夫に出会ってもアウトオブ眼中(JJ古語)だっただろう。
そこから恋愛経験を重ねる中で「俺にロマンチックは必要ない」と発見したのだ。

何度か書いたが、私はサプライズデートが苦手だった。

たとえば夜景の見えるレストランで「ハッピバ~スデ~♪」とピアノの生演奏が始まり、ロウソクのついたケーキが運ばれてきて、周りのお客さんから拍手が上がる……

みたいな場面で「ザ・ワールド! 時よ止まれ!」と逃げ出したい気分でいっぱいだった。

また、屋外のジャグジーでシャンパンを開けて「今日は二人が出会った記念日だね」と囁かれる……みたいな場面で「勘弁してくれ」と溺死しそうになった。

「俺はそういうのは二次元でCV子安武人にやってほしいんだ」と思いつつ、湯船に浮いた虫の死骸をすくっていた。そして、素直に感動できない自分を申し訳なく感じていた。

某恋愛リアリティ番組で、参加者の男性が自作の歌を熱唱して、それを聞いた女性が感動して涙ぐむ……という場面を見て「私だったら爆笑してるな」と思った。

現実に爆笑すると失礼すぎるので、推しが死んだ場面とか想像して、神妙な顔をするだろう。

断っておくが、ロマンチックな男が悪いわけじゃない。

けれども彼らは二次元ではスパダリだが、三次元では自己愛の強いナルシストだったりする。かつ、落とすまでが楽しい肉食系だったりもする。

彼らは「君は運命の女性だよ」みたいなセリフを連発しといて、飽きたらポイっと女を捨てる。

捨てられた方は「私、ゴミじゃないのに人なのに……いや、ひょっとしてゴミだった? 人がゴミのようだ??」とメガネが割れるぐらい混乱するのだ。

以上は個人の体験だが、かつての私は振られた理由がわからなくて「私の何がダメなんだろう?」「前世で墓に放火とかしたのか?」と悩んでいた。

そんな過去の自分に言いたい。

彼らは自分が悪者になりたくなくて「飽きた」「他に好きな女ができた」と本当の理由を言わず、「俺は君を幸せにできない」だの「君にはもっとふさわしい人がいる」だのテキトーなことを抜かすのだと。

20代後半、思考が迷子になっていた私は、縁結び神社や占いに課金していた。そうやってスピ方面にハマったのは「もう自力では無理! 誰か正解をくれ!」と他力本願になっていたから。

でも結局はバチボコに傷つきながら、自分で発見するしかなかったのだ。

「惚れたハレたはもういらない」「俺にロマンチックは必要ない」……そうした数々の発見があったから、夫との結婚を決められたのだと思う。

人生は発見の連続、しゃかりきコロンブスである。

若い人は光GENJIなんて知らないだろう。若い頃の私はロマンチック・ラブ・イデオロギーの呪いにもかかっていた。

運命の人と出会って大恋愛の末に結ばれて、末永く幸せに暮らしましたとさ……というおとぎ話に憧れる、乙女な時代が拙者にもあった。

でも結婚はおとぎ話じゃないし、拙者はプリンセスじゃない。なぜなら、プリンセスはウンコを漏らさないから。

私が腸炎でウンコを漏らした時、夫に「ウンコを漏らしてこそ一人前だ」と言われて「この人と結婚して正解だった」と思った。

インスタに「記念日に思い出のレストランでデートしました」と書いても「その後、牡蠣にあたってウンコを漏らしました」とは書かないだろう。

でも、後者のウンコの部分が真実なのだ。

たとえ今漏らさなくても老後に漏らす可能性は高いし、「夫婦は下痢嘔吐している時に看病し合う関係」と思った方がいい。そして「こいつ私が下痢嘔吐キメたらどんな顔するだろう?」と想像してほしい。

という意見に「わかる!!」と既婚の友人たちは膝パーカッションする。

女友達は酔っ払って玄関でおしっこを漏らした時、同棲中だった夫が「大丈夫」と掃除してくれて「この人と結婚しよう」と決めたという。

彼女は酔っ払ってオナニーしながら寝落ちした時、夫に「大丈夫?!」と揺り起こされたそうだ。夫は妻がローターで感電死したと思ったという。

ちなみに別の友人はオナニーしながら寝落ちした翌朝、首からローターがぶら下がった状態で、宅急便を受け取ったそうだ。

もし窒息して遺体で発見されていたら「新人デカが爆笑する現場」になっただろう。

ローターの話はもういい。自分でも忘れているが、拙者は一応恋愛コラムニストなのでござるよ。

婚活女子から「結婚には妥協が必要ですか?」と聞かれるたび「何は譲れて、何は譲れないか? と優先順位を整理するのが大事」と答える私。

結婚は単なる箱で、中身は50年の共同生活。50年をリアルに想像して、自分が本当に求めるものを見つけてほしい。
あれもこれも全てを満たすパーフェクト超人は、三次元には存在しないから。

私の場合は毒親由来の見捨てられ不安が強すぎて、「この人も離れていくんじゃないか?」と疑心暗鬼の塊だった。

ゆえに「この人の愛情は揺らがない、私を見捨てたりしない」という安心感を求めていた。夫と出会ってそれを得たことで、ようやく精神が安定したのだ。

とはいえ、結婚当初は「本当に大丈夫?」とビクビクしていたし、メンヘラ弁慶が復活して、お試し行動をしてしまうこともあった。

そこから月日を重ねて、ケンカ&仲直りを繰り返して、「まあ大丈夫だろう」と思えるようになった。病める時ベースで支えてくれた夫に対して、愛情はますます増えていった。

結婚15年目にして思うのは「あの時、付き合ってみなきゃわからなかったし、結婚してみなきゃわからなかったな」ということだ。

「この人だったら50年暮らせそう、かも?」と思って結婚を決めたけど「絶対別れない、永遠にともに」と確信があったわけじゃない。

『永遠にともに』が結婚式で二度と歌われなくなるなど予想できなかったように、未来は誰にもわからない。

だから覚悟をもって飛び込むしかないし、もしダメだったら離婚すればいいのだ。

「何がなんでも別れない」より「いつでも別れられるけど、一緒にいたいからいる」というスタンスの方が、夫婦の関係を大切にできると思う。

とはいえ、結婚式のスピーチで「ダメだったら離婚すればいいよ」と言うのは、不謹慎すぎるだろうか。

私は根がふざけた人間なので、両親が遺体で発見された時も不謹慎さを見せつけた。

母の葬儀の時は火葬場で「焼き上がりはいつですか?」と質問して、父の葬儀の後は担当者に「また死人が出たらお願いします」と挨拶した。

私は神妙な場面で笑ってしまう人間で、夫は神妙な場面で笑わせてくれる人間である。

離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』に書いたように、親が死んだ時も夫は奇天烈な発言で笑わせてくれて、「この人と結婚してよかったな」と救われた。

そんなふざけたカップリングで、今後もやっていけたらいいなと思う。永遠にともにかは知らんけど。

関連書籍

アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

生涯のパートナーを求めて七転八倒しオタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

アルテイシア『アルテイシアの夜の女子会』

「愛液が出なければローションを使えばいいのに」「朝からフェラしてランチで口から陰毛が現れた!」とヤリたい放題だった20代。「男なら黙ってトイレットペーパーを食え!」「ヤリチンほどセックス下手」と男に活を入れていた30代。子宮全摘をしてセックスがどう変わるのか克明にレポートした40代。10年に及ぶエロ遍歴を綴った爆笑コラム集。

アルテイシア『オクテ女子のための恋愛基礎講座』

小悪魔テクは不要! 「モテないと言わない」「エロい妄想をする」など、「挙動不審なブス」だった著者も結婚できた恋愛指南本。

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アルテイシアの59番目の結婚生活

大人気コラムニスト・アルテイシアの結婚と人生にまつわる大爆笑エッセイ。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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