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北極かえるのコモンロー日誌

2020.09.17 更新 ツイート

0になる勇気 #海外移住入門の秋 吉村静

「日本を出て海外で生活してみたい」そんな夢を持ったこと、一度はあるのではないでしょうか。カナダのユニークな制度「コモンロー」で永住権を取得してバンクーバーで生活する吉村静さん(a.k.a. 北極かえる)による、リアルな海外移住話をお届けします。

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カナダに住んでもうすぐ4年。永住権を取ってからは約2年の月日が流れた(このあたりの詳しい経緯はバックナンバーでぜひ)。

海外に移住するなんて10年前には1mmも考えてなかったから、人生あんまり将来の不安をしても意味ないかもなぁと最近思うようになった。

 
森にて休憩中の北極かえる

カナダに住んで以来、何度も「0になる体験」をした。言葉もわからない、文化もわからない、友達はもちろん、知っている人すらいない、カナダでの就労経験も全て「ゼロ」。

でも初めの2年と、永住権を取ってからの2年間はまた違う意味で0でのスタートだった。

ワーキング・ホリデーの時は「まぁ1年っていう限りがあるし、なんでもやってみるか!」ってな感じで気楽に仕事を探したり、色んなところに出かけてたけど、永住権を取ってからの2年はワーホリと違って期限はないし(5年に一度の更新はあるけれども)、永久的に住める権利があるから、生きていく土台の構築を始めなければならない。ずっと住めるのは最高だけど、1からやり直しか~! という現実は意外とキツい。

準備体操をする私と友人。

まずはやっぱり言語。でも英語はこの4年でだいぶマシにはなってきた。

英語がよくわからなかった頃は会話が続かないからパーティに行ってもその家の犬と戯れることがしょっちゅうあった(笑)。けれど会話が聞き取れるようになってからは、他の国からやってきて英語勉強しているブラジル人とかがガンガン間違いなんか気にせず喋りまくってのを見て「自分ってプライド高いんだな」と逆に恥ずかしくなり、間違って結構! と言わんばかりにどんどん話すようにしている。

個人的な練習方法は自転車通勤時に、自分自身に英語で「日本のものでよく恋しくなるものとその理由は?」とかランダムにインタビューして、英語で「それっぽく」答える独り言。これは自分の伝えたいことをまとめるのにもいいし、もちろん英語の練習にもなって楽しい。

最近ルームメイトが迷子犬を拾ってきた。シャワーしてその後アニマルシェルターへ。

あとはやっぱりカナダでの就労経験ゼロ問題。これもなかなかつらい。日本だとトレーニングとか研修期間を用意してくれるところがあるから経験不問で雇ってくれるところって結構あったけど、個人的な経験でいくと、カナダは経験がないと雇ってくれないところが多い。

カナダに来た当初まずはお金を稼がねば! ということで色んな職種に応募したけれど、全然返事がなかった。一度図書館のヘルプ? みたいな職種に応募して面接に行ったけど、私に経験がないことがわかると「え、何で応募したん?」という超がっかりした目で面接官が私の顔をのぞいてきて、あ~あの面接はほんまにいやだったなぁ。(笑)

自然は傷ついた心を癒してくれる~。

現在「就労経験のある」アウトドアのお店で雇ってもらって、さらに日本語で文章を書くお仕事をしたり、自分で作ったZineを売ったりしながら生計を立てている。

カナダ人でさえ同じ状況で、私の友人はカナダの芸大を卒業して工業デザイナーとして働きたかったけれど、経験がないから仕事がなかなか見つからなかった。でもその後インターンシップに応募して、そこから現在デザイナーのアシスタントとして活躍している。

経験がないからって諦めるんじゃなくて、インターンやボランティアで経験を積めばチャンスはもちろんある。

ちなみに私はワーホリ時代、仕事が見つからなくて、家の近くのコーヒー屋に毎日通ってたら(暇人)、その店のオーナーが、「何で毎日ここにおるん? もしや仕事ないんか?」と心配してくれ、「わかった。俺が探したる!」っていって、店に来るお客さんに「なんか仕事ない?」って本当に毎日聞いてくれたのだ。

結果お客さんの中から、ファーマーズマーケットでソーセージを売るパートタイムの仕事が見つかった!

その時思ったのは、図々しいけど、「助けて~! 涙」って言ってもいいんだな、ということ。0から再スタートなんだから、うまくいかなくて当たり前なのだ!

6年前に働いていたシリアス・ソーセージ。

ほんで最後に、友達いない問題(笑)。私は正直友達を作るのに時間がかかっているな~と思う。心から「親友」と呼べる人は4年住んでてもまだそうそういるわけじゃない。大切な友達の多くは日本に住んでるし、特にコロナ禍での友達に会えない辛さっていうのはかなりきつかった。

でも親友って幼少期から高校まで一緒に通った地元の友人だったり、大学で一緒に色んなことを乗り越えた仲間だったり、よく考えてみれば「親友」になるまで時間がかかってる。だから、今まだ2年弱なんだから友達いなくて当然か! とたまにふと思うし、それだけ日本の親友の存在は大きいんだなぁと思う。

今年は家族でお盆Zoom帰省。実家の画面が仏壇(笑)。画面越しにお参り。

ってな感じで色んな場面で、0からスタートしなければならない局面がある。追い込まれてくると、「もし日本に住んでたら……」という幻想も始まってしまう。だから自分にあまり期待しすぎずに、できなくて当然か~! くらいに捉えて、それよりも「新しいこと学べる~!」っていうテンションで生きている。

でも0になると言っても、一人で移住したわけではなく、コモンロー(カナダの事実婚制度)・パートナーのルイスと一緒に移民したし、彼にかなり助けられてもらっているというのが本音。なんかあっても「大丈夫、心配しないで」と言ってくれる人がいるのはほんまにありがたいことだ。

彼はアメリカ出身で、私より長くカナダに住んでいるし、もちろん英語も話せてカルチャーも私より理解しているから、彼のサポートがなかったらもっと大変だったはず。ルイスは週に3日難民に英語を教える仕事をしながら、その他の時間は畑をしたり、来年大学に入り直すための勉強をしている。

そんな彼の生活スタイルを尊敬するし、私も仕事や趣味のバランスを既成概念に囚われるとこなく保つことができている。

いつも笑わせてくれる、ルイス。

最後に、この文章を書くきっかけになったのに、語学学校で出会った中国人のクラスメイトの言葉がある。彼女は中国では研究者(何の研究者か忘れた。笑)で、

「何年も大学で教鞭をとっていたのに、カナダに移民した途端、語学の壁で仕事が見つからず、でも家族を支えるためにはやりたくない仕事もたくさんやった。キャリアを0からスタートしなきゃならなかったのは本当に辛かった」

と言っていて、クラスメイト(みんな移民)の多くが賛同していた。さらに彼女は、

「でも人生はLifelong Learning (生涯を通して学び続けること)なんだ。いろいろあったけど、学ぶことを忘れちゃいけない。スコアなんて気にしない、学び続けることが大事だと思うんだ」

って言ってて、ちょっと泣いてしまった。積み上げてきたものを手放すのって怖いけど、でも彼女のいうとおり、学ぶのが楽しくてカナダにいるのかもしれない。振り出しに戻れるから、また学び直すことができる。

家族が恋しくて、お母さんが毎年育てている朝顔をカナダでも育てている。

だから「移住したいなぁ」と考えている人がいるとしたら、0になることでがっかりしないで、いくつになってもそれを学びに変えていくユーモアを持って日本を飛び出て欲しいと思う。

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コメント

吉村静/Shizuka Yoshinura/ケロズ  〇〇入門の秋で海外移住入門を担当しました!カナダに来てトータルでもうすぐ4年目かぁ。早いなぁ。 0になる勇気 #海外移住入門の秋|北極かえるのコモンロー日誌 |吉村静 - 幻冬舎plus https://t.co/fmylWKcmIn 7日前 replyretweetfavorite

北極かえるのコモンロー日誌

移民大国カナダのユニークな制度「コモンロー」を利用し、2019年、永住権を取得したひとりの日本人女性がいます。「自然に囲まれた土地で、自分らしく生きたい」と日本を飛び出し世界中を旅したすえに、彼女はなぜカナダを選んだのか? カナダでの暮らし、コモンローって何? 生き方の選択肢を探る連載です。[アイコンデザイン / 永井あゆみ]

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吉村静

1987年、新潟県長岡市生まれのランナー。走歴25年。ランニング雑誌の出版社に勤めた後にカナダへ渡り、トレイルランニングやハイキング、日々のお散歩に没頭する。カナダで2年過ごしたのちに南米やニュージーランド、インドなど様々な国で写真を撮りながら旅をする。2019年からカナダの永住権を取得し、現在はバンクーバーで暮らす。トレイルランニング用品専門店Run Boys! Run girls!のウェブにてアウトドアスポーツのある生活を綴る「Tip of the iceberg Newspaper」という名のブログも更新中。バンクーバーのヌーディストビーチで開催される裸のランニング大会Bare Buns Run2014年大会女子の部優勝。

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