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美しい暮らし

2020.07.28 更新 ツイート

共振する人生相談 〜ぼくはアンプリファイア〜

「亡くなった夫の他の女性への熱烈なメール」を発見し、傷つく42歳の女性へ矢吹透

このご相談コーナーへ皆様からたくさんのお悩みを頂いております。
少しでも多くの方のお悩みに、お答えして行きたいと考えておりますが、なかなか追いつかない状況があります。ごめんなさい。
頂いたご相談にはすべて、ぼく自身で目を通させて頂いております。それぞれに大変な思いを抱えていらっしゃるということは、受け止めております。
出来る限り頑張って、お答えをお戻し出来るよう、努めて行きますので、何卒ご理解のほど、お願い申し上げます。

それでは、今回のご相談です。

 

*   *   *

先日、交際8年、結婚12年と連れ添った夫を病気で1年介護した末、亡くしました。

自他共に認めるラブラブ夫婦で、周囲からも憧れの夫婦だと言われていました。夫はとても真面目でマメで、記念日や誕生日など欠かしたことはありませんし、家にいるのが好きだ、君といるのが好きだと言って、寄り道もせず職場から帰宅。毎日の出来事を楽しそうに話してくれて、帰宅前には必ずメールをしてくる人でした。私が1日何をして過ごしていたのか、お昼には何を食べたのか知りたがり、帰宅すれば毎日抱きしめてくれて、私の姿が見えないと家の中を探し回ったり、私が小一時間でも出かけると早く帰ってきてとメールしてきたり、とても愛されていると思っていました。

しかし、夫の遺品を整理していたら、仕事の取引先の若い女性に対し「好きだ」「君は大切な女性だ」「君に会いたくて近くまで来た。会える?」「君に会えて僕の人生は華やいだものになった」というメールがでてきました。相手もまんざらではないようで数ヶ月に1回は会っているようでした。そして2人で会っているのは、いつも私が外泊している日。体の関係があったのかは不明ですが、そのやりとりは夫が亡くなる半年前までの7年間続いており、数ヶ月先まで会う約束がされていて、愕然としました。

夫が病気にならなければ夫の気持ちは永遠と彼女に注がれていたのかと思うと、裏切られたと腹立たしく思う気持ちと、私はすでに愛されていなかったのかと虚しく思う気持ちとで、毎日眠れません。亡くなるまでの半年間、夫は私の名前を呼んで「好きだよ。愛してるよ。ずっとそばにいて離れないで。ずっと一緒に生きていたい」と毎日言ってくれた言葉さえ今は白々しく感じます。

夫を忘れようと思い、お誘いくださる様々な男性と食事やデートをしてみるのですが、素敵な人だなと思っても、どうしても夫と比べてしまい、また会いたいとか好きという気持ちになれません。私はこのまま、これから1人で生きていくのかと思うと辛いです。私は夫の何を信じたらいいのでしょうか。どうしたら前向きな気持ちになれるのでしょうか。
(無職・42歳・女性)

*   *   *

ご主人は、あなたを愛していた、と思います。

あなたのことをこの世で一番愛し、大切に想っていた、とぼくは確信します。

それでも、他の女性とのやり取りや逢瀬があった。

それは確かに、あなたへの裏切りです。

 

こんなふうに考えてみることは出来ないでしょうか。

美術館に行き、ミケランジェロの作品に胸を打たれるのと同時に、ダ・ヴィンチの作品にも心を動かされることがある。

花屋の店先で、薔薇の花を美しいと思う同じ心で、百合の花の美しさにも心揺れる時がある。

ご主人は、そんな心で、あなたと、そのもう一人の女性を愛したのではないか、とぼくは思います。

しかし、ご主人の心の中の、あなたともう一人の女性への思いには、きっと優劣があったと僕は思うのです。

あなたが一番だったのです。

だから、彼は、あなたと別れて、もう一人の女性を選ぶことは、生涯なかった。

最終的に、あなたに看取られて、逝った。

 

男はずるい生き物です。

目の前に、自分が惹かれる、魅力的な女性が二人いたとしたら、その両方とおつき合いをしてみたい、と望むものです。

そして、その両方との関係の中で、常に二人を比較します。

こちらのここがいい。あちらのあそこがいい。こちらのここは自分とは相容れない。あちらのあそこは自分と合っている。

そんなことを意識・無意識はともかくとして、頭と心の中で比較検討し、最終的に、プライオリティの選択をします。

その勝負に、あなたは勝っていたのです。

繰り返して言いますが、ご主人はあなたを愛していたのです。

もう一人の女性にも、惹かれていたでしょう。やりとりや逢瀬に心躍らせるところもあったでしょう。

けれど、そのことで、あなたへの思いが揺らぐことは、一瞬たりともなかった、とぼくは思います。

ご主人があなたにかけた愛の言葉や行動には、ひとつの嘘もなかったとぼくは思います。

 

更には、こんな考え方も出来るのではないか、とぼくは思うのです。

あなたとご主人は、交際期間を含めて、20年間を共に生きた。自他ともに認めるラブラブ夫婦だった。

しかし、いろいろなお相手とさまざまな交際をしてきた経験から、ぼくは思うのです。

1日24時間、1年365日、かける、つき合った年数、のすべての瞬間にラブラブであり続けるというのは、けっして易しいことではないのではないか、と。

あなたにも、ご主人にも、気持ちや体調などのアップダウンもあれば、心や考え方に揺れや動きが生じることもあるでしょう。

ご主人が、20年間コンスタントに、あなたに愛を語り続けた、ということは驚異に近い、とぼくは思うのです。

ご主人が、あなたの声や姿や匂いに包まれて、毎日を幸せに過ごす中でも、時には、違う空気を吸いたくなったとしても、不思議ではないとぼくは思います。

そうして、ご主人は時折り、その別の女性と束の間、やりとりや逢瀬を楽しんだ。

あなたから、心や体が離れて過ごすひととき、があった。

ご主人と彼女との間に正確に何があったのかは、わかりません。そこを突き詰める必要はないのではないかと思います。

あなたには辛いことだと思いますが、おそらくご主人は、その彼女とのおつき合いを楽しんだ。

あなたから解放され、自由なひとりの男として生きるひとときが、ご主人にはあった。(それはもちろん、あなたへの裏切りの時間なのですが。)

でも、そのひとときは、彼にとって、あなたへの愛を再確認するために必要な時間であったのではないか、とぼくは思うのです。

息抜き、と言ってしまうと、相手の方に対しても失礼かもしれませんが、そんな時間があったからこそ、ご主人はあなたの元へ戻り、また変わらぬ愛を示し続けることができたのではないでしょうか。

その彼女の存在がなかったら、ご主人のあなたへの思いはどこかで煮詰まり、二人の関係が変化して行っていた可能性すらあるかもしれない、とまで、ぼくは考えたりします。

いい夫であることから自由になり、ただの男として、無責任に振る舞うひとときが、ご主人が、またあなたを全身全霊で愛する活力の源となっていたというところだってあるかもしれない、とぼくは思ったりするのです。

 

すみません。なんだか、ご主人を擁護するような文章になってしまいました。

けれど、ぼくがあなたに伝えたいことは、ひとつだけです。

ご主人は、あなたを心から愛し、慈しみ、共に過ごす人生を幸せに生きた、ということをしっかりと受け止めてください。

確かに、そこに、彼の裏切りは存在した。

その裏切りを赦せ、とは、ぼくは申しません。

けれども、その裏切りをも凌駕する、彼のあなたに対する大きな愛がそこにはあった、そこには決して嘘はなかった、ということだけは、どうか信じてください。

大変僭越ですが、ぼくの文章を借りて、天国の彼があなたにそう伝えようとしている、と受け取って頂ければ、と思うのです。

*   *   *

ぼくに共振して欲しいという方は、ご相談応募フォーム(googleフォームを利用しています)からご応募ください。

LGBTQ+の悩み、青少年の悩み、仕事やキャリアの悩み、恋愛やセックスの悩み、パートナーや夫婦の悩みなど、あなたのどんなお悩みにも、共振いたします。

我が家には折々、いろいろな方が訪れ、さまざまな相談事が持ち込まれます。ぼくはいつも、キッチンのカウンター越しに、こんなふうにして、皆さんからのご相談を伺うのです(いつもこんな格好をしているわけではありません。これは、たまたま、去年の近所の神社の祭礼の折の1枚です)

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美しい暮らし

 日々を丁寧に慈しみながら暮らすこと。食事がおいしくいただけること、友人と楽しく語らうこと、その貴重さ、ありがたさを見つめ直すために。

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矢吹透

東京生まれ。 慶應義塾大学在学中に第47回小説現代新人賞(講談社主催)を受賞。 大学を卒業後、テレビ局に勤務するが、早期退職制度に応募し、退社。 第二の人生を模索する日々。

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