
今月ご紹介するのは、マルグリット・デュラスの小説『愛人 ラマン』の高浜寛によるマンガ化作品です。
原作の『愛人 ラマン』は1984年に発表されました。当時70歳の大作家デュラスがフランスの植民地ベトナムで暮らした少女時代を回想し、15歳で中国人富豪の息子の愛人になった事実を記した自伝的小説としてセンセーションを巻きおこしました。そして、ベストセラーになり、権威あるゴンクール文学賞まで受賞したのです。難解な純文学作家として知られるデュラスに、降ってわいたように訪れた、突然の世俗的な成功でした。
翌1985年には日本語訳が刊行されました。デュラスの小説としては例外的に分かりやすい文章で書かれ、また、清水徹の名訳のおかげもあって、かなり評判になりました。
しかし、この小説が日本で大いに売れたのは、1992年にフランス映画『愛人 ラマン』が公開され、大ヒットしたからです。とくに、まだ10代だったヒロイン、ジェーン・マーチと、中国人男優レオン・カーフェイの演じる性行為が激しく美しいというので話題となりました。一時的に人気女優となったジェーン・マーチはその後、泣かず飛ばずでしたが。
原作はデュラス独特の「流れる文体」で書かれていて、物語の起伏もあまり感じられず、さほど明確なイメージも浮かんできません。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
マンガ停留所

- バックナンバー
-
- 読みごたえ抜群!過酷な英会話教室勧誘の営...
- 言語と人間の不思議さをめぐる心やさしいエ...
- 家族をめぐる、2つの「赦(ゆる)し」 ...
- 「しょうがないなあ」と微苦笑させる絶妙の...
- マンガ家マンガの好著 松苗あけみ『松苗あ...
- 「サザエさん」は日本の「ナンシー」だった...
- ああ、続きが読みたい……スケールの大きな...
- マニアックかつ精巧。でも、これは欲しい!...
- 秀逸な手塚マンガの最新アンソロジー『手塚...
- 「ニャオコという仕事」(笑)の衝撃!作者...
- 〈老い〉を強調することでデュラスの原作を...
- 「ポーの一族」再び!エドガーとアランの新...
- 40歳女性の微妙な変化を掬い取った驚くべ...
- こんな続編もある!30数年後、人生への不...
- 魅せられる、谷口ジローの誠実な人間性 『...
- ドラマティックな盛りあげなくとも深い感動...
- 不器用だけれど、かけがえのない父の死 松...
- 愚かな者たちの生きる姿を少しだけ肯定する...
- 〈生命の神秘〉手塚の異色作をオリジナル原...
- 北野武!?タランティーノ!?人生の不条理...
- もっと見る