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2020.01.14 更新 ツイート

「ポーの一族」再び!エドガーとアランの新しい運命の扉『ユニコーン』中条省平

萩尾望都の『ポーの一族』が始まったのは、1972年でした。

私は高校3年で、当時は少女マンガなどまったく読みませんでしたが、一部のマンガ好きの同級生から、『ポーの一族』は凄い、男でも読んでおくべきだ、という話が伝わってきて、生れて初めて少女マンガ誌(「別冊少女コミック」)を学校のそばの本屋で手に取ったことを、つい昨日のことのように憶えています。

 

不死の吸血鬼となって永遠の時空を彷徨する、兄弟か同性愛のパートナーのようなふたりの美少年、エドガーとアラン。

彼らの漂泊に終止符が打たれたのは、1976年の中編「エディス」においてでした。

アランは、愛する少女エディスを火災から救おうとして死んでしまい、同じ場所にいたエドガーは消息不明になってしまうからです。

あれから40年以上経って、「エディス」の後の物語が描かれるとは!

『ポーの一族』の最新刊『ユニコーン』のなかの1編は、2016年のミュンヘンを舞台にしています。そこに、「エディス」で消息不明になったエドガーが姿を現すのです。

エドガーと再会した吸血鬼仲間のファルカが、そのことを貴族で画家のアーサーにスマホで連絡すると、エドガーはこういいます。

「その電話機 今 みんな使ってるんだね」

孤高の美少年吸血鬼のアナクロニズムがさらりと描きだされていて、ちょっと笑ってしまいます。モトさまの読者サービス精神が発揮されていて、さすがです。

しかし、内容は悪魔的な方向に進みます。

エドガーは、火災のなかでアランが焼け死んだとき、アランの死骸を抱いて時空を移動して、生まれ故郷の廃墟にある地下の洞窟墓地に入りこみ、それから何十年も眠っていたのです。そして、目覚めてみると、変わり果てたグール(怪物)の姿になっていたというのです。

それから画家のアーサーのことを思いだして訪ねていき、アーサーの介護で元の自分の姿に回復したので、ミュンヘンにいる仲間のファルカに会いに来たのでした。

エドガーの鞄のなかには、ほとんど炭となったアランの死骸が入っており、その焼けた藁のような炭の塊からアランの軋んだ囁き声が聞こえてくるので、アランを再生させてやりたいと思うようになったのです。エドガーは自分の望みをアランにこう説明します。

「無垢(イノセント)なものがほしい」

しかし、エドガーはアランを再生できるなら、「悪魔とだって契約する」とも断言します。その矛盾した心情につけこんでくるのが、新たな登場人物バリーです。

バリーはかつてポーの一族の村のバラをすべて枯らして逃亡した異端の吸血鬼で、アランに誘惑の手を伸ばしたこともありました…。

『ユニコーン』は、ふたたびエドガーとアランの新たな運命の扉を開く、不気味な序章といえるでしょう。

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中条省平

1954年神奈川県生まれ。学習院大学フランス語圏文化学科教授。東大大学院博士課程修了。パリ大学文学博士。著書『中条省平は二度死ぬ!』『文章読本』など。翻訳書最新刊はロブ=グリエ『消しゴム』。

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