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北極かえるのコモンロー日誌

2019.08.08 更新 ツイート

すっぽんぽんで見知らぬ人にこんにちは吉村静

先週の土曜日。バンクーバーのダウンダウンからほど近い「サンセットビーチ」を発着する裸の自転車ライド、「World Naked Bike Ride」に参加してきた。

先に断っておくが、わたしは特にヌーディストというわけではない。普段は服を着て過ごし、寝る時はパンツもパジャマも着用する。

しかし5年前の一つの体験がわたしを裸への道へと誘った。それはバンクーバーのヌーディストビーチで開催された裸のランニングレースに参加した時のこと。何も身にまとわず、裸で浜辺を走る爽快感。太陽の光が全身に当たるあたたかさを思い出したのだ。(ちなみに女子の部でわたくし優勝しております。笑)

 

ただ、この自転車イベントは「裸で自転車乗ってわーい!」というだけでなく、自動車優先の社会や、石油に頼った生活が引き起こす環境汚染へのプロテストでもある。

今回参加するにあたり、この2つの点、「車社会」と「裸」について考えた。

車社会に対しては普段から疑問を持っていて、というのも私が住む家の前は交通量が激しく、窓を開けるとビュンビュンうるさい。さらに道路って車が占領してるのが当たり前の光景みたいになってるけど、それもやっぱりおかしくない? と思うのだ。車を気にせずに、走ったり歩いたりしたい。特にバンクーバーは田舎みたいに車がないと生きて行けないような場所じゃなくて、バスも電車もめちゃめちゃ発展してるのに、それでも車に乗っている人は多い。

でも、トラックが食料を運んだり、そしてその食料が運ばれたスーパーで私も買い物をしているわけで、一概に「車反対!」とは思ってない。これは社会の仕組みの問題でもあるんだろうなぁ。

二つ目は裸、についてだ。裸で外に出るというと「ひゃ~!」という声が聞こえてきそうだが、周りをよく観察してみてほしい。動物も植物も、みんなすっぽんぽんである。まぁ毛や羽に覆われているかもしれないけれど、基本、生まれてきたそのままの状態で日々の暮らしを営んでいる。そう考えれば私もその一部と化すだけで、裸は何も驚くべきことではない。なんか「着る」ということにとらわれ過ぎてんじゃねぇか現代に生きる自分! と思い、参加を決めた。

せっかく参加するんならポジティブなメッセージを持って参加したいなぁと思い、アーティストの友人にボディペイントをしてもらった。

その後一緒に参加する友人から電話あり、「これスタート会場まで裸で行くん? それともスタート会場まで服着て、そこで脱ぐ?」という議論が始まったが、この友人の傑作が背中にあるだけで勇気が湧き、「もう家から裸で行こう」と返答した。

ダーリンのルイスももちろん参加。

てなわけでスタート会場までトップレスで出発(デリケートな日々が前後しており、ビキニの下だけは着用)。通り過ぎる多くの人が、私が裸で自転車漕いでるなんてアイデアが頭になさ過ぎて、あんまり気づいてない様子。全身肌色の服を着た人、くらいの感じなのか? それともやっぱり見ないふりなのかしら。でもそんなこともうどうでもよくなるくらい、軽い!! 軽いぞ自分! 服を着ないで、風や太陽が身体に直接当たるの、本当に最高。

会場に着くとすごい人! って参加者もそうだけど、写真を撮る人達がすごい。まぁ別に撮ってもいいけどさ……。

一応裸なんで、すんげー近くでがっつりおっぱい撮ろうとするおっちゃんとかには「一言言ってケロ~」と話しかけた!(望遠レンズで狙って撮るから怖いんだよ、おっちゃん……)。

このお兄さんはローラーブレードで参戦! 写真使用の許可とってます!笑

ちなみにバンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州では、トップレスは合法。以前男性はオッケーで女性はNGだったらしく、「いやそんなのおかしいやろ」という声が上がり、法律が見直されたんだとか。といっても普段から裸で街を歩いている女性はなかなかいない。でもふと考えてみると、スケボーしてる兄ちゃんとかっていつも上半身裸なのに、スケボー姉さんたちはTシャツ着用だよなぁ。なんかまぁそこに男女の何か差があるのか? まぁ胸の揺れを考えるとブラいるかぁって気はするけど。なんか裸になるだけでそんな風にいろんなことを考えさせられた。スケボー姉さんトップレス時代が来ることを願う!(?)

午後2時、まぶしい太陽のもと、海辺をスタート! ここですでに感動したことが一つ。このイベントは市がサポートしていることもあり、警察官が自転車で先陣を切って車道を封鎖、我々裸人たちの安全を守ってくれるのだ。なんかじんわり嬉しい。最初お巡りさんがチャリで近づいてきた時は「やっぱこれってまずいんか?」と思ったけど、普通にペダルこぎ出したもんだから「一緒に行くんかい! 笑」ってずっこけた(警察官はさすがに裸ではない)。

一緒に参加した友人はスタート前「やっぱ脱ぐの恥ずかしいわ」とか言ってたのに、スタートしたら脱いどる!!! 笑 なんやねん。

海辺の道を抜けてからはもうがっつりダウンタウンの街中、目抜き通りを通ります。みんな「ひゃーー!」とか「お前ら最高だぁあああ」とかいろんな雄叫びが聞こえてくる。子どもの目を塞ぐお母さん、嬉しそうにスマホで写真を撮る人々、一緒に参加しようとする人、いろんな人の様子がこちらから観察できて面白い。これは裸の人たちの前を裸で走るヌードランでは感じなかったことだ。

バーやレストランの中からも応援の声、止められている車の運転手たちも「勘弁してよ」じゃなくて、みんな笑って歓迎してくれた。あとなんかこのバイクのスピードがこの面白さを際立たせているんじゃないかとも思った。一瞬で通りすぎてゆく裸人御一行。その儚さというか、じっくり見る間もなく通り過ぎていく幻影団にみんな手を振り、声を出す。2時間程度の大盛況バイクライド、いやぁめちゃくちゃ楽しかった。

終わってから思ったのは、「裸」というだけでいろんなメッセージが自分自身、そして見ている側の両方に届いたんじゃないかな、ということ。すっぽんぽんのラブレター。それは車社会に対する批判以上に、「そうそう人間ってこうだったよな」とか、「変な人たちがこの地球にいてくれてよかった」とか、「みんな一緒に笑いあえるんだよなぁ」とかそういうこと。それを確かめるために、これをやってるんじゃないかと思った。裸になればみんなもっと仲良くなれるんじゃないかな。

日本だって銭湯と温泉は裸。あの極楽感はビキニ着用では絶対無理、全てのキーは裸にかかっているのだ。その極楽感を知っている日本人であれば、実はネイキッドバイクもランもすんなり受け入れられるんじゃないかという気がしないでもない。

「胸を公共の場で晒しちゃダメとか言ってるお偉いさんたちって、脱いだことないからそんなこと言ってるんだよ。一度でも彼らが脱げば、法律なんてすんなり変わるかもしれないよ。」参加した友人が終わった後に残した言葉。本当にそんな気がする。

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北極かえるのコモンロー日誌

移民大国カナダのユニークな制度「コモンロー」を利用し、2019年、永住権を取得したひとりの日本人女性がいます。「自然に囲まれた土地で、自分らしく生きたい」と日本を飛び出し世界中を旅したすえに、彼女はなぜカナダを選んだのか? カナダでの暮らし、コモンローって何? 生き方の選択肢を探る連載です。[アイコンデザイン / 永井あゆみ]

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吉村静

1987年、新潟県長岡市生まれのランナー。走歴25年。ランニング雑誌の出版社に勤めた後にカナダへ渡り、トレイルランニングやハイキング、日々のお散歩に没頭する。カナダで2年過ごしたのちに南米やニュージーランド、インドなど様々な国で写真を撮りながら旅をする。2019年からカナダの永住権を取得し、現在はバンクーバーで暮らす。トレイルランニング用品専門店Run Boys! Run girls!のウェブにてアウトドアスポーツのある生活を綴る「Tip of the iceberg Newspaper」という名のブログも更新中。バンクーバーのヌーディストビーチで開催される裸のランニング大会Bare Buns Run2014年大会女子の部優勝。

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