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英語で伝えるということ

2019.07.28 更新 ツイート

Searching for a welcome

ウェルカムを探して飯田まりえ

長年にわたって日本とアメリカを行き来していると、それぞれの国の空港の特徴というものが見えてくる。

たとえば、成田空港の入国審査官のネクタイにはよく、immigrationという英単語が、日本らしい細やかで美しい模様であしらわれている。ニューヨークのJFK国際空港では、数年前まで入国審査の列に並ぶと、必ず『Welcome: Portrait of America (ようこそ。アメリカのポートレート)』という題のショートビデオが流れていた。アメリカの広大な土地や自然、そして多様性を謳うこのビデオは、アメリカ合衆国国土安全保障省と ウォルト・ディズニー社の合作であり、なんともドラマチックで希望に満ちていた。しかし、最近はパタッと見ることがなくなってしまった。
 

 

そもそも旅行者にとっては、訪れた国の第一印象を決めるのが入国審査ではないだろうか。しかし残念なことに、アメリカの入国審査フロアというものは、とても殺伐とした雰囲気である。

 

審査官の元へたどり着くまでの長い列に並び、少しでも遅れをとれば、係りのスタッフにNext! と怒鳴られる。もちろんこのNext! は、どう大目に見ても「次の方、どうぞ」とは訳されない。その意味は間違いなく「次!」なのだ。フレンドリーとは程遠いムードだ。

しかし、私の経験では、たとえアメリカの永住権を取得していても、審査官の対応は大して変わらない。それどころか、今のトランプ大統領下のアメリカの政治情勢からして、永住権保持者であっても、どのような理由で、何のためにアメリカに住んでいるのか、執拗に質問されるのが現実である。
 


先日も日本からロサンゼルス国際空港に到着すると、無作為検査の対象に選ばれしまった。こういった場合のコミュニケーションを少しでも和らげるため、私はなるべく自分から友好的に接するようにしている。無言でパスポートを手渡すより、How are you? How’s it going? とちょっと勇気を出してこちらから話しかけてみるほうが、その後のやり取りがお互いにとって気持ちの良いものになるからだ。

もちろん、審査官はノリのいい人達ばかりではない。こちらがどんなに好意的に接しても、無視されたり、不本意な扱いを受けることだってある。でも、そういった懐疑心に満ちた目を前にした時ほど、私はどうしようもない使命感に突き動かされてしまう。確かに私たちは、人種も文化も違う。それでも共通する感情や、経験があることを、どうしても自分にも、相手の審査官にも、証明したくなってしまうのだ。

審査官の前に立つなり、What a long flight! (あー、長いフライトだった!) などと話してみると、時に、お疲れさま、How was the food on the plane? Bad? (機内食はどうだった? 不味かったか?) などとジョークを交えて答えてくれる人もいる。

当たり前のことだが、空港は様々な人種の人たちが、あらゆる国に向かって旅立つ場所だ。そこでふと出会う人と、少しでも打ち解ければ、笑い合う瞬間が持てれば、お互いの意識や考え方に小さな変化が起きるかもしれない。

ナイーブな願いかもしれないが、そう思わずにいられない。

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英語で伝えるということ

世界的ブームとなっている片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんのNetflix番組「KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~」の通訳として、そのプロフェッショナルな仕事ぶりが現地で称賛され、注目されている飯田氏。話者の魅力を最大限に引き出し、その人間性まで輝かせる英語表現の秘訣はどこに? 「英語で話す」ではなく「英語で伝える」ときに重要な視点を探るコミュニケーション・エッセイ。

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飯田まりえ

2006年ニューヨーク大学卒業。卒業後は東京都内の独立系映画製作会社に就職し、黒沢清、新藤兼人、鈴木清順、ミーラー・ナーイル、ジム・ジャームッシュを始めとした国際的な映画製作者の脚本の翻訳を担当する傍ら、通訳者としての実績を積む。2007年から米国の大手美術出版社 RIZZOLI NEW YORK の要請を受け編集、翻訳業務に携わり、建築、美術、映画、デザイン、写真、ファッションを含む多くの書籍を手掛ける。2011年コロンビア大学大学院卒業。卒業後はニューヨークにてフリーランスとして通訳、翻訳業を開始。現在は拠点をロサンゼルスに移し、映像作家の夫とともにテレビ番組等の脚本も執筆中。来年2020年には、共同で英訳している高村薫著作の『レディ・ジョーカー』がSOHO PRESSより出版予定。

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