
『闇金ウシジマくん』が15年かけて全46巻で完結しました。
平成日本という社会の病理をこの上なく興味深い人間悲喜劇として描いた大傑作ですが、それはもはやいうまでもないでしょう。初めの30巻ほどは、社会の底辺でのた打ちまわる人間たちの常軌を逸した運命を徹底的に追究する群像ドラマでした。
ただし、この5年ほどは、さまざまな人間模様をモザイクのようにちりばめる基本的な作風を離れて、ようやく主人公・丑嶋馨に物語の焦点を絞り、ウシジマと暴力団組織の抗争、とくに滑皮というヤクザとの対決を追う、ごく普通の犯罪映画のような作りになっていました。
そして最後は、『太陽にほえろ!』における萩原健一や松田優作の刑事殉職を思わせる趣向に収束します。もちろん、きわめて上出来のスリリングな物語展開とアクションの連続なのですが、この作品本来の独創性はなくなっています。でも、それはないものねだりというもので、作者・真鍋昌平はきっちりと丑嶋馨の物語にオトシマエをつけました。
さて、今回ご紹介する『アガペー』は、真鍋昌平がこの8年ほどに描いた4つの短編マンガを集めた作品集です。
といっても、ここに登場するのは、丑嶋馨のようなスーパーヒーローとはまったく異なり、また、『闇金ウシジマくん』に出てくる狂気や病気とすれすれの人間たちとも違う、もっと私たちの現実に近い人々です。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
マンガ停留所

- バックナンバー
-
- 少し欠けた、心やさしき家族のお母さんはグ...
- 読みごたえ抜群!過酷な英会話教室勧誘の営...
- 言語と人間の不思議さをめぐる心やさしいエ...
- 家族をめぐる、2つの「赦(ゆる)し」 ...
- 「しょうがないなあ」と微苦笑させる絶妙の...
- マンガ家マンガの好著 松苗あけみ『松苗あ...
- 「サザエさん」は日本の「ナンシー」だった...
- ああ、続きが読みたい……スケールの大きな...
- マニアックかつ精巧。でも、これは欲しい!...
- 秀逸な手塚マンガの最新アンソロジー『手塚...
- 「ニャオコという仕事」(笑)の衝撃!作者...
- 〈老い〉を強調することでデュラスの原作を...
- 「ポーの一族」再び!エドガーとアランの新...
- 40歳女性の微妙な変化を掬い取った驚くべ...
- こんな続編もある!30数年後、人生への不...
- 魅せられる、谷口ジローの誠実な人間性 『...
- ドラマティックな盛りあげなくとも深い感動...
- 不器用だけれど、かけがえのない父の死 松...
- 愚かな者たちの生きる姿を少しだけ肯定する...
- 〈生命の神秘〉手塚の異色作をオリジナル原...
- もっと見る