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恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる

2018.07.26 更新 ツイート

前編

恋人の「元カノ」はブスでもかわいくても嫌。納得できる「元カノ」とは?夏生さえり/林伸次

いつかは消えてしまう恋。誰かを思った強い気持ちは、どんなふうに残るのでしょうか? カウンターで語られた忘れられない恋のエピソードをバーテンダーが書き留めた恋愛小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』の発売を記念して、作者で現役バー店主の林伸次さんと、連載「揺れる心の真ん中で」でさまざまな恋の思い出を綴る夏生さえりさんが「恋愛」を語り合います。
(構成:アケミン 撮影:牧野智晃)

幸せな恋の思い出は、他人には話せない

夏生さえり(以下、さえり) 『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』さっそく拝読しました。素敵な恋のお話がたくさんあって、とてもおもしろかったです! なにより自分の恋の思い出を聞いてくれるバーテンダーがいて、そしてそれを文章に残してもらえるなんて、すごく素敵だなぁと思いました。

林伸次 (以下、林) ありがとうございます。

さえり 自分の恋の思い出ってあとから振り返ると、「本当にそんなこと現実に起こったかな?」と自分でもわからなくなることもあるんです。綺麗であればあるほど、あれって夢だったのかも?って。そういう恋の話って、なかなか他の人に話す機会がないものですよね。

林 女友達同士で恋の話はしませんか?

さえり 今、付き合っている彼とどうなった、みたいな現在進行形の話はしますし、過去の不幸話をネタっぽく話すことはできるけど、キレイな思い出はなかなか他人に話す機会がないですね。

 なるほど。本の中で、さえりさんが一番、印象的だったエピソードはどれでしたか?

さえり 高校生の男の子が憧れの女の子とディズニーランドへデートに行こうと約束をしていたのに、前日にキャンセルしてしまう話です。特にドタキャンされた女の子の気持ちに共感しました。「ディズニーランドは二人で行こうと決めていたから、その後もずっと行かずにいた」というくだりが特に。

 「この場所に彼と一緒に来たかった」とか「あの人にこの場所を見せたかった」みたいな感情って女性特有ですよね。経験と感情の「はじめて」を好きな人と共有したい、という感覚でしょうか。

さえり そうかもしれません。そしてその場所が思い出深くなると「もう他の人とは行かないようにしよう」ってなりますね。逆に男の人の場合、同じお店に違う女性を連れて何度も行く、なんてこともありますよね。せっかくの二人の思い出の場所なのに…。でもきっと、深い意味なんてないんですよね。

 男性は相手の女性が変わっても一度、自分のテリトリーを作ってしまったらそこは気にならないのでしょうね。たとえば女性の場合、同棲していた彼氏と別れた後に、同じ家に違う男性と住む話ってあまり聞きません。でも男性は付き合っていた女性が出て行っても、また同じ空間に違う女性とあらたに一緒に住む話はよく聞きますよね。

さえり 男の人のほうが思い出を思い出のままでとっておけるのかな。現在とあまりリンクしないというか。この本でも、思い出の話を語るのは男性のほうが多くて、女性はリアルタイムの恋の話をしているのが多かった気がします。

 確かに男性は思い出を大切に心にしまっておくのかもしれませんね。そしていつまで経っても「あの子はまだ俺のことを好きなんだ」って思いがちだったりする。

さえり この本にもそんな男性が登場しますね。

 さえりさんは、昔の彼から連絡がきて「まだ彼は私のことが好きなんだな」と感じた経験はありますか?

さえり たまにありますね。そういう時って相手も「さえりはまだ俺のことが好き」と勘違いしているような節もある気がします。でも別に、勘違いしてくれてもいいかなと思っています。

 特にそこは否定しない?

さえり 好きにしてって思っています。否定もしないけど肯定もしない。ただ久々に連絡をもらっても、会うことは絶対にないですね。

 なるほど(笑)。「うわ〜あいつ、気持ち悪いなぁ」とは思わない?

さえり 気持ち悪いというより、「かわいいなぁ」と思いますね。以前、別れてから何年も連絡を取ってなかったのにある日、突然電話をかけてきた元カレがいました。懐かしい名前だから電話に出ると「なんか思い出しちゃって……」って話していました。

 えー! そんな人いるんだ(笑)。

さえり あまりに懐かしかったので何事か!?と思って出ちゃいましたね。でも私の中でその人に対して、未練がないから電話に出られるんだと思います。

 でも向こうはロマンティックなことを期待して連絡してきているんでしょうね。そういう人は、こっそりSNSもフォローしていそう(笑)。さえりさんは、気になる男性のSNSを見ますか?

さえり 見ます。私、むしろネットストーカーなんで(笑)。もし素敵だなと思った男性と知り合ったら、家に帰ってからアカウントを検索して「あーこの人、結婚してるんだ〜」「子どもは、こんなに大きいんだなー」とか探ってしまいますね。SNSは公開されているから見てもいいものでしょう? 遠慮なくまじまじと見ちゃいますね。

 その辺りの感覚は、今の20代の女の子にとっては普通なのかな?

さえり 基本かもしれません。逆に付き合っている彼が、私の投稿を見てないと「この人は私に興味ないのかな?」と思ってしまうくらいです。極端かもしれませんが、「簡単に見られるものなのに、なんで見てないの?」と思ってしまいますね。もちろんそれで怒ったり文句を言ったりすることはないんですが……。

 私のことをどれだけ知ってるかをSNSを通じて測れるんですね。

さえり 男の人のほうがその点に関しては疎いとは思いますが、まったく見てもらえていないと知ると少しさみしい気持ちになりますね。

永遠に解決しない「元カノ問題」

 そうやってSNSを見ているうちに、恋人が元カノと一緒に写っている写真を見つけたらさえりさんは、嫉妬します?

さえり 絶対いやです!(即答)私は過去に対してあんまり寛容になれないので……。しかも元カノは、自分よりかわいくても、ブスでもどっちでもイヤです。かわいかったら単純に嫉妬をするし、個性的な子だったら敵わないと思う、そしてブスなら「ものすごく素敵な人だったのでは」と思ってしまう。そして自分に似たタイプだったら「あ〜元カノと同じ感じだから私のこと好きなのかな〜」となるし、正反対のタイプなら「あーこういうのが好きなんだー」ってなるし。

「理想の元カノ問題」、つまりどういう女の子が元カノだったら果たしていちばんしっくりくるのか、これについてはいろいろと考えてしまうんですよね。

 最終的にどんな人だったら納得できる?

さえり 正直、どんなタイプの女の子でもいい気はしないんですが(笑)、強いて言えば、外見は「自分よりちょっとだけかわいくない子」が一番いいかな……(笑)。「私の方がかわいいもんね」と言い聞かせることができるので。あとは私が怒らないタイプなら「元カノがすぐに怒る子でさぁ。それが嫌だったんだよねぇ」なんて、少しの愚痴を言ってくれると安心できる。

 元カノの話は、してもいいんですか? 世の中の女性は「僕には目の前のあなたしかいないんだ!」というフリをするのがてっきりマナーだと思っていました。

さえり 逆に一切しゃべってくれないと、「彼の中には、私に言えない元カノとの素敵な思い出がたくさんあるんだ」って思っちゃうかも。よく「付き合った人の悪口を言う人はダメ」という話を聞きますが、私は「昔より今の方が幸せだ」っていう話なら、少しは聞きたい。あんまり過度な愚痴は嫌ですけどね。

 もしかしてさえりさんは、あまり自分に自信がないタイプなのでしょうか?

さえり わからないです(苦笑)。見捨てられ不安とかはあんまりないと思うんですけど、単純に嫉妬深いタイプだとは自負しています。もしも私が平安時代に生まれていたら「源氏物語」の六条御息所(主人公・光源氏の愛人で、生霊になって人を殺すエピソードを持つ未亡人)みたいになっていると思う。嫉妬で悶々とする日は結構ありますから。

 ええー、そうなんですね。

さえり 世の中の男性全員にやみくもにモテたいとは思わないけど、好きな人の中では、いつも一番の存在でありたいと思ってしまうんです。

絶対にバレる男の浮気、絶対にバレない女の浮気

 でも男性って絶対浮気するじゃないですか。「自分の恋人は絶対に浮気しない」という自信はある?

さえり 絶対に浮気しないとは断言できませんが、浮気が発覚したらお付き合いを続けるのはムリと思ってしまうはず。どーんと構えていられる女性に憧れますが、私は「私を大事にしてくれる人」と一緒にいたいと思ってしまいます。

 「浮気」ってどこから浮気? 手をつないだら浮気? それともふたりきりでゴハンに行ったらアウト?

さえり 私が聞いても、答えられないことを彼がしていたら、その時点でそれが浮気ですね。「これを言ったら、さえりは悲しむだろうからあえて言わない」っていう気遣いはつまり、「私が悲しむだろうけど、結局してしまった」ということなので。厳しいかもしれませんが、自分の欲をとったっていうことになりますよね。そうなったら関係を続けていくのは難しいかなと思います。

 彼がうまく嘘をついてくれたらOK?

さえり 絶対にバレなければ…(笑)。でも浮気は絶対にバレると思うんです。

 しかしどうして女性だけが男性の浮気を見抜くんですかね。男性は彼女や妻が浮気してもいっこうに気づかない、というパターンが多いのに。

さえり よく「女のカン」と言われますが、相手の細かなところまで常に観察している積み重ねだと思うんですよね。相手に対して夢中になればなるほど、細かな変化にも気づく。そして夢中になるから、生き霊にまでなってしまう(笑)。元カノ問題に振り回されたり、浮気の心配をすることなく、心穏やかに過ごせるようになるのも憧れますが、きっといろいろ考えてしまっている自分がそれはそれで楽しいのかもしれない。恋愛のための脳のメモリは多い方だなぁと思いますね。

 逆にさえりさん自身に恋人がいるとき、他の男性から食事に誘われたらどうします?

さえり もしも自分の中にその人に対して恋愛感情が1ミリでもあったら行かないですね。私、第一印象で『恋愛になりうるボックス』と『恋愛になりえないボックス』があって、お仕事でお会いする人だとすぐに『なりえないボックス』に入ってしまう。

 でもたいがいみんな仕事のフリをして誘ってきませんか?(笑)

さえり すでに『なりえないボックス』に入っていて、自分に断る自信があるなら行きますね。でももしも少しでも『恋愛になりうるボックス』に入ってしまっていた場合、面倒くさいことになりたくないので最初から断ります。

 美人に聞くとみんな絶対にそう言いますね。でも男性は興味ない女性からアプローチされても面倒くさいとは思わずに「やった、モテてる!」と単純に喜びますよ。

さえり 好きな人に好かれたらハッピーですけど、自分がまったく思っていない人からアプローチされても、面倒なことになったらいやだなあと思ってしまう。そして万一、恋人がそのことを知って「なんで食事に行ったんだ!」と責められても面倒ですし。彼氏に興味があるうちは、他の男性への興味をいったんしまう感じですね。

 もし彼氏がいない状況で、好きな男性が現れたら? 自分からアプローチしますか?

さえり 自分から行きますね!

 これもかわいい女の子の特徴なんですよ。これ、もしかわいくない子だったら自分からアプローチしても撃沈したり、セフレで終わってしまうこともある。でもかわいい子からアプローチされたら男性は嬉しいから、浮き足立ちながらちゃんと付き合おうとしますよね。ほとんどの女性は自分からはいかないで、こっそり近づいて、思わせぶりな行動をするぐらいがいいと思います。

さえり それで世の男性は女性の好意に気づくものでしょうか?

 さりげないボディタッチをされたり、「〜〜さんって恋人いるんですか〜?」「この間、おもしろいツイートしていましたよね」なんて言われると、「あれ、興味あるのかな」なんてソノ気になる。

さえり かわいいですね(笑)。ただそれで本当に好きになるところまでいくものですか? 「ちょっと気になる」程度で終わりませんか?

 そのあとに有効なのは「二人きりになる作戦」ですね。人間って不思議なもので、二人きりの空気を共有してしまうと、なぜか相手のことを好きになってしまうらしいんです。ただこれは厳密に言うと男性が「ヤレるかもしれない」って思っていて、性欲と恋心の区別がついていない状態とも言えますが。「ヤレるかな〜」と思っても、一線を越えない関係が続くとさらに相手を好きになっていく気がします。

(後編に続く。7月30日公開予定です)

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関連書籍

林伸次『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』

人はなぜバーテンダーに恋の話をするのだろう? cakesスタート以来、常に人気ナンバー1の恋愛エッセイの名手にして、渋谷のバー店主が綴るカウンターの向こうのラブストーリー 恋はいつか消えてしまう。ならば、せめて私が書き留めて、世界に残しておこう――。 スタンダードナンバーの音楽とお酒のエピソードとともに綴られるのは、 燃え上がる恋が次第に冷め、恋の秋がやってきたと嘆く女性。 1年間だけと決めた不倫の恋。 女優の卵を好きになった高校時代の初恋。 かつての彼女とよく通ったパン屋さんを訪ねた男性。 学生時代はモテた女性の後悔。 などなど、世界の片隅に存在した恋のカケラたち。 誰かを強く思った気持ちは、あのとき、たしかに存在したのだ。切なさの記憶溢れる恋愛小説。

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夏生さえり

山口県生まれ。フリーライター。大学卒業後、出版社に入社。その後はWeb編集者として勤務し、2016年4月に独立。Twitterの恋愛妄想ツイートが話題となり、フォロワー数は合計15万人を突破(月間閲覧数1500万回以上)。難しいことをやわらかくすること、人の心の動きを描きだすこと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。著書に『今日は、自分を甘やかす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『口説き文句は決めている』(クラーケン)、共著に『今年の春は、とびきり素敵な春にするってさっき決めた』(PHP研究所)がある。Twitter @N908Sa

林伸次

1969年徳島県生まれ。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年にbar bossaをオープンする。2001年、ネット上でBOSSA RECORDをオープン。選曲CD、CDライナー執筆多数。『カフェ&レストラン』(旭屋出版)、『cakes』で連載中。著書に『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか』『バーのマスターは、「おかわり」をすすめない』(ともにDU BOOKS)、『ちょっと困っている貴女へ バーのマスターからの47の返信』(アスペクト)、『ワイングラスの向こう側』(KADOKAWA)、『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)がある。

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