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片想い探偵

2018.07.12 公開 ポスト

第1回

平成生まれ作家が3人集まると辻堂ゆめ(作家)

 辻堂ゆめさんの最新刊『片思い探偵 追掛日菜子』の刊行を記念して、普段から辻堂さんと仲の良い青崎有吾さん、武田綾乃さんをお招きし、「平成に生まれた作家鼎談」を開きました。
 作家さん同士ってどうやって仲良くなるの? 出版不況は実感する? 編集者のアドバイスって聞いてる? などなど、お三方にお聞きしました。さぞかし「本が売れない」という愚痴をお聞きできるかと思いきや、予想外にふわふわなお話(?)も……。
 仲良しだからこそ、平成生まれだからこその鼎談、スタートです!
(文:橘田佐樹/箕輪編集室)

意識高いとは言いがたい!? 平成生まれ作家3人組

進行 3人が出会った時のエピソードを教えてください。

青崎 僕達がデビューしたばかりの頃、作家の岡崎琢磨さんが関東近辺に住む若い作家さんたち集めて顔見せ会みたいなのを開いてくださって。その「ザキ会」と呼ばれる会で初めて出会ったんですよ。

武田 私とゆめちゃんが92年生まれ、青崎さんが91年生まれですごい年が近かったんです。そこで話が合って、「また会いましょうか」の流れから3人の会が開かれたんですよね。

青崎 多分「ザキ会」のなかで僕達が一番若かったぐらい。

辻堂 私が社会人一年目だったので、多分22歳と23歳でしたよ。

青崎 でも、普段は辻堂さんと武田さんの2人でよく会っているみたいで。

武田 あ、そうです。月に一回は会ってます。美味しいものを食べたり、映画見たり。ふわっとしてます(笑)。

辻堂 だいたいどっちかが「原稿やばい、終わらない」って10回ぐらい言ってます。余裕ある方が「頑張れ」って慰めるみたいな(笑)。

武田 そういう会です。私が全然外に出ない引きこもり生活をおくっているので、ゆめちゃんが連れ出してくれてる感じです。

青崎 基本2人が月一で会ってて。3、4ヶ月に一回ぐらいなぜか突発的に僕が誘われるんですよね。

武田 青崎さん呼ばなきゃみたいな(笑)。

青崎 なんかアクセントとしてね。

辻堂 この3人が母体で始まったんだけど、月一で青崎さんを呼び立てるのは忙しいかな、申し訳ないかなと。

青崎 たしかに毎月呼ばれてもちょっと……。

辻堂 なので、意味のない会話は2人で消化して。時々アクセントに青崎さん、って感じです(笑)。

進行 3人の新刊が出たらそれぞれ読まれてますか?

武田 読みますよ! 忙しくて読めない時はとりあえず「買ったよ」とだけ連絡しています。買ってはいるんですっていうアピールをしようと思って(笑)。

進行 3人で集まった時はそれぞれの作品について話しますか?

青崎 本の感想を伝えることはありますね。辻堂さんの『コーイチは、高く飛んだ』とか。めちゃくちゃ大興奮で話した気がする。

辻堂 『コーイチ〜』は、青崎さんが表紙のイラストについて解説をしてくれたんです。主人公がこういう位置に立ってるのはこういう意味があるんだ! みたいな。あ、そうだったんだ! って言ったら「知らなかったの!?」って半ば怒られた(笑)。

私は青崎さんの『体育館の殺人』『水族館の殺人』シリーズと、作品に出てくる柚乃(ゆの)ちゃんっていうキャラが大好きで。キャラの作り方が本当に好きって愛を語ったり。

あと、青崎さんは綾乃ちゃんの地の文がすごい好きって話をしててね。

進行 どう好きなんですか?

青崎 自然主義というか写実主義というか。目線の説明とか情景描写を心理描写の代わりにしているっていうのがすごい好きで。映像的と言うんですかね。

辻堂 極端に言えば、「悲しかった」とか、そういう直接的な表現はないんですよね。

武田 そういうのをすごく言ってくれるんですけど、恐縮ですって感じです。青崎さんとゆめちゃんは二人ともミステリ―作家さんなので、「なんか頭いいな~」って常々思っています。

辻堂 これ、綾乃ちゃんの口癖です。

青崎 この前も辻堂さんに「ゆめちゃんは頭が良い!」って壊れたテープレコーダーのように言ってた。馬鹿にしてるよね(笑)。

武田 いや、褒めてるんですよ!? ミステリー作家の人って筋道が見えた状態で話を書く人が多いので、「ひえぇーっ!」ってなります。

辻堂 日本語がおかしい(笑)。

進行 あまり本が売れないよっていう愚痴みたいな話はしないんですか?

辻堂 全然しない。それがゆとりなのかもしれない(笑)。

武田 頭悪い会話しかしてないですね(笑)。

青崎 意識が高いとは言い難い。

身内が著書を読んでくれない!?

進行 出版不況を実感することはありますか?

辻堂 昔の山手線の風景とかを見るとみんな本読んでるじゃないですか。そういうのが、今ではみんなスマホに代わって。そう考えると、みんなが本を読む時代じゃなくなってるなっていうのはありますね。

青崎 あと、最近雑誌の休刊が多くて。僕が短編を載せた2ヵ月後に休刊とか。そういう話を聞くと不況かなあと思います。漫画雑誌も休刊してWebに移行とかが増えてますし。

武田 まあ時代が変わってきたのかなって。

辻堂 私、弟が2人いて。下の弟は小説やライトノベルもよく読むんですけど、上の弟は文字が多い漫画さえ無理、と。映画とか、アニメとか、文字が少ないスポーツ漫画とか、映像的に見れるものがいっぱいあるからだそうです。

青崎 僕も一番下の弟が大学生ですけど、小説はまったく読まない。漫画も『HUNTER×HUNTER』と『進撃の巨人』ぐらいしか読まない。

進行 じゃあ、「お兄ちゃんの本読んだよ」とかもないんですか?

青崎 「お前の小説はどうせつまらんから読まない」って(笑)。

武田 私の弟も、私が書いた本はあんまり読みたがらないですね。「いや、いいわ」って言われます。

青崎 まあ兄弟なんてそんなもんですよ。

三者三様、ストーリーの作り方

進行 ストーリーはどれくらい編集者と相談しますか?

辻堂 『片思い探偵 追掛日菜子』の場合は、最初「ストーカーを追いかけていく探偵が実はストーカーだった」みたいな話を書いてよ、となぜか夫に言われて(笑)。それを聞いて、もしかしたらちょっと面白いかもなと思って編集者さんに相談したんです。「夫が無責任にこんなこと言い出したんですけど、けっこう面白くないですか?」って。

そしたら打ち合わせの中で、ストーカー気質の主人公は女子高生がいいとか、追いかける相手は力士や総理大臣だったら面白そうだとか、ぽんぽんアイディアが出てきたんです。「視点人物はノーマルなお兄ちゃんがいいんじゃないですか? 同じ部屋で、二段ベッドの上と下に寝てるとか」って編集者さんから提案をもらったりもして。そんな感じで打ち合わせの中でめちゃくちゃ盛り上がりました。

青崎 理想的なディスカッションじゃないですか。

辻堂 そうなんです。いつもはプロットをいくつか出して、その中から良さそうなものを教えてもらってから細かくしていって、ってやり方なんですけど。これはすごく面白い作り方をしたなって。そうだ、『響け! ユーフォニアム』ってどうだったの?

武田 それは「吹奏楽の話書きたいです! イェイ!」みたいな。

辻堂 絶対違うでしょ(笑)。

青崎 ノリが軽い(笑)。

武田 『響け! ユーフォニアム』シリーズの一冊目に関しては、「吹奏楽の話書きたいです」って言ったら企画が通って、そこから原稿を書いて渡したという流れでした。映像化に合わせて続編の刊行が決まったので、そこからはこのタイミングでこの本を出す……ってガチガチにスケジュールを固めて書いた感じですね。でも、普段はプロットを貯蓄して見せて、編集さんに選んでもらって、直して見せてを繰り返すってパターンがほとんどです。

青崎 一応アドバイスはなるべく聞こうっていうスタンスなんですね。

武田 そうですね。自分だと何回も読み返してて分からなくなってくるんで。何が面白いんだろうってなっちゃうんです。青崎さんは違うんですか?

青崎 僕はあまり人のアドバイスを聞けない。「こういう話を書きます」って編集さんに報告して、何か助言されたら「分かりました、考えます」とだけ言って……考えないことが多い。まあ最終的にOKが出たらいいのかなと。

辻堂 私は綾乃ちゃんと近いですね。言われたところは直します。でも、そのまま直すかどうかはもう一度考える。別の改善案を出すことも多いです。

武田 編集者さんと話し合う時は、「脳みそが二倍になるから二倍アイディアが出るのでは」という勝手な思い込みを持っています。人間の脳って一個だけだと限界があるので。刺激があると一気に可能性が広がるから、やりやすいなって思います。

青崎 編集者さんのアドバイスを素直に聞いたのは、一回だけかも。『水族館の殺人』を出した時なんですけど。高校生が夏休みの水族館に行く場面で、最初の原稿では普段着で行くと書いていて。そしたら、編集者さんに「青崎さん、僕は制服が好きなんで制服を着せてください」って言われて。「確かに俺も制服が好きだな……」って思って無理やり理由をつけて制服に変えた。

一同 (笑)。

辻堂 すごいなあ。そんなことある?(笑)

青崎 東京創元社の編集者さんは変な人ばっかりでね……。

関連書籍

辻堂ゆめ『片想い探偵 追掛日菜子』

追掛日菜子は舞台俳優・力士・総理大臣などを好きになっては、相手の情報を調べ上げ追っかけるストーキング体質。しかしなぜか好きになった相手は、殺人容疑をかけられたり脅迫されたりと、毎回事件に巻き込まれてしまう。今こそ、日菜子の本領発揮! 次々と事件解決の糸口を見つけ出すが――。前代未聞、法律ギリギリアウト(?)の女子高生探偵、降臨。

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辻堂ゆめ 作家

1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『あなたのいない記憶』(宝島社)、『悪女の品格』(東京創元社)、『僕と彼女の左手』(中央公論新社)がある。

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