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知られざる北斎

2018.01.23 公開 ポスト

「考える人」のロダンは春画の大ファンだった!神山典士

葛飾北斎はなぜ「世界の北斎」になったのか?
国内と世界各地を回って取材しているノンフィクション作家、神山典士です。
今春書き下ろす「知られざる北斎」(仮題)一部抜粋してご紹介させてください。

知られざる北斎』の製作に参加できる!クラウドファンディング企画も進行中です。

 

彫刻・工芸・音楽の世界へも広がっていくジャポニズム・ムーブメント

絵画だけではない。彫刻家や工芸家、音楽家もこのムーブメントに巻き込まれた。
日本を「菊の国」と呼んでいたガラス工芸作家のエミール・ガレは、北斎の「南瓜花群虫図」や「北斎漫画」に描かれたバッタや鯉、南瓜の花や葉を意匠に取り入れた作品をつくった。のちにそれは20世紀初頭にかけて花開いた、アールヌーボーという新美術潮流を生んでいく。

日本ではつい最近まで展覧会のテーマにはなりえないとされていた「春画」も、当時の美術界の巨匠に大きな影響を与えている。
代表格は、「考える人」のロダンだ。ロダンは常日頃から「エロチック・ジャポネ」の無類の愛好家だった。
長年モデルを務めた花子は、「ロダンが『笑い絵』を見せるので困った」と述べたという。笑い絵とは春画のことだ。

1980年代になって、美術史家の池上忠治はロダン美術館で彼が所有した浮世絵を調べたことがある。
「出てきたのは和紙に達者な墨線で描かれた、いわばアクロバチックな体位のものだった。この種のものがどれだけあるのか、私はまだ確認するに至っていない」(「ゴッホから世紀末へ」)
ロダンの秘書だったジュディト・クラデルの書によれば「1908年にロダンは自分のデッサンを次々とめくってみながら、「これは西洋人の手法による日本美術だね」と述懐した」という。
ロダンの弟子で愛人でもあったカミーユ・クローデルも、北斎作品の愛好家だった。
「神奈川沖波裏」にそっくりの大波と、それに飲み込まれそうな女性の姿を描いた作品をつくり、ロダンに翻弄された彼女自身の儚い「運命」を示したと言われる。続く

関連書籍

神山典士『知られざる北斎』

モネ、ゴッホはなぜ北斎に魅せられたのか? いまなぜ、北斎なのか? 天才画商・林忠正と、小布施の豪商・高井鴻山から日本人だけが知らない真実を解く、圧巻のノンフィクション! 葛飾北斎(1760〜1849)。西洋ではダ・ヴィンチと並び称される19世紀最大の画家であり、モネ・ゴッホなど芸術家へ与えた影響も大きい。しかし日本では「子どもの鼻ふき紙」だった北斎(浮世絵)が、なぜ西洋でここまで価値が上がったのか。そこには資本主義の光と闇があった。そして北斎が晩年のアトリエとした長野県小布施には何があったのか? 林忠正と高井鴻山、二人の男から「いまなぜ北斎なのか」を解く革新的ノンフィクション!

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知られざる北斎

長澤まさみさんが主演する映画『おーい、応為』が話題です。
モネ、ゴッホを魅了し、西洋で「東洋のダ・ヴィンチ」と称された葛飾北斎。
その名を世界に広めた画商・林忠正、そして晩年を支えた小布施の豪商・髙井鴻山。芸術と資本、江戸と西洋が交錯する中で創作に生きた画家の生涯を描いた書籍『知られざる北斎』もあわせてお楽しみください。本書から一部を抜粋してお届けします。

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神山典士

ノンフィクション作家。1960年埼玉県入間市生まれ。信州大学人文学部卒業。96年『ライオンの夢、コンデ・コマ=前田光世伝』にて第三回小学館ノンフィクション賞優秀賞受賞。2012年度『ピアノはともだち、奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密』が青少年読書感想文全国コンクール課題図書選定。14年「佐村河内守事件」報道により、第45回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞。「異文化」「表現者」「アウトロー」をテーマに、様々なジャンルの主人公を追い続けている。

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