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文豪の女遍歴

2017.11.22 更新 ツイート

谷崎潤一郎――女人崇拝家の繚乱すぎる愛のかたち小谷野敦

小谷野敦著『文豪の女遍歴』(幻冬舎新書)――夏目漱石、森鷗外、谷崎潤一郎ほか、スター作家62名のさまよえる下半身の記録。姦通罪や世間の猛バッシングに煩悶しつつ、痴愚や欲望丸出しで恋愛し、それを作品にまで昇華させた日本文学の真髄がここに。

 

 谷崎潤一郎 (一八八六 〜 一九六五) Junichiro Tanizaki

 谷崎は「大(だい)谷崎」と呼ばれるが、これは偉大だからではなく、弟の精二も作家だったから「大デュマ」「小デュマ」と同じように区別のために言われ始めたのである。

 日本橋の裕福な商家の生まれで、父は婿養子、母方の祖父がやり手だったが、祖父が死んだあと、家が没落するが、成績優秀だったため援助があって、東大国文科へ進み、大貫晶川(しょうせん、岡本かの子の兄)や和辻哲郎らと第二次『新思潮』を出し、二十五歳で「刺青」を発表し彗星のごとくデビューした(処女作は戯曲「誕生」)。

 浅草十二階下の「魔窟」と呼ばれる娼婦に通ったりして梅毒にもなったが、大正改元の頃、真鶴館というところに滞在して、従兄の妻と密通し、ばれて女は離婚され、谷崎も出奔して行方不明になり、自殺を考えたこともあった。

 その後、群馬県前橋出身の藝者になじみ、結婚を望むが、相手に旦那がいたので、その妹で、一時藝者に出ていた千代と結婚した。翌年女児が生まれ、鮎子と名づけたが、鮎はもともとナマズの意味だというので、のち「あゆ子」と仮名で書くようになる。

 だが谷崎は、あまりセックスがうまくない千代に失望し、虐待するようになる。さらに、千代の妹でエキゾチックな少女・小林せい子が同居するようになり、谷崎は十四歳くらいのせいとセックスしてしまい、これが『痴人の愛』の「ナオミ」のモデルになる。谷崎は映画会社と契約して映画のシナリオを書くようになり、せい子を葉山三千子の名で女優として売り出そうとする。

 年少の友人・佐藤春夫は、千代に同情してこれが恋に変わり、千代を譲ってほしいと言う。谷崎はせい子と結婚するつもりで承諾するが、千代が佐藤との恋で美しくなったのと、せい子から断られたのとで前言を撤回し、佐藤と谷崎は絶交する。これを小田原事件という。

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夏目漱石、森鴎外、谷崎潤一郎他、スター作家62名のさまよえる下半身の記録。姦通罪や世間の猛バッシングに煩悶しつつ、痴愚や欲望丸出しで恋愛し、作品にまで昇華させた日本文学の真髄がここに。

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小谷野敦

一九六二年茨城県生まれ、埼玉県育ち。東京大学文学部英文科卒業、同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士(比較文学)。大阪大学言語文化部助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを経て、文筆業。『もてない男』(ちくま新書)、『聖母のいない国』(青土社、河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『谷崎潤一郎伝』『川端康成伝』(ともに中央公論新社)、『江藤淳と大江健三郎』(筑摩書房)など著書多数。小説に『母子寮前』(文藝春秋、芥川賞候補)、『悲望』(小社)、『童貞放浪記』(小社、二〇〇九年映画化)、『中島敦殺人事件』(論創社)がある。

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