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文豪の女遍歴

2017.11.26 更新 ツイート

近松秋江ーー逃げられて追いかけて嗚呼小谷野敦

小谷野敦著『文豪の女遍歴』(幻冬舎新書)――夏目漱石、森鷗外、谷崎潤一郎ほか、スター作家62名のさまよえる下半身の記録。姦通罪や世間の猛バッシングに煩悶しつつ、痴愚や欲望丸出しで恋愛し、それを作品にまで昇華させた日本文学の真髄がここに。

 

近松秋江 ( 一八七六 〜 一九四四 )  Shuko Chikamatsu

 近松秋江は、本名を徳田浩司といい、岡山県の出身である。上京して、東京専門学校(早大)を卒業、読売新聞、中央公論などに勤めるが長続きせず、「文壇無駄話」という文藝評論を書き始める。当初、徳田秋江を名のったが、徳田秋聲と紛らわしいので、好きな近松門左衛門からとって近松を名のる。

 実家はカネがあったから、困窮したり病気になって実家へ帰り、また上京のくりかえしで、そのうち大貫マスという出戻り女を事実上の妻にし、小間物店を開いて七年ほどいたのだが、娼婦を買って梅毒になったか、ないしは別の女を世話をすると称して家に引き入れたりし、マスは下宿していた岡田という学生とできて出奔してしまう。

 それから秋江の、マス探索の旅が始まり、岡山へ行ったり、日光で宿に泊まったという情報を得て、日光の宿の宿帳をしらみつぶしに調べて、マスと岡田が一緒に泊まったことをつきとめ、外へ出てぼろぼろと涙を流す。

 帰京するとすぐ夏目漱石のところへ行ってその経緯を話し、漱石は熱心にメモをとっていたという。そして秋江の出世作「別れたる妻に送る手紙」と続編「疑惑」が書かれるのだが、マス宛の手紙の形式でありながら、その後なじみになった藝者を友人にとられたといった泣きごとを書き連ねるありさまである。なおこの友人というのは同郷の正宗白鳥で、白鳥は戦後、秋江が死んだあとで「近松秋江 流浪の人」を書き、秋江はあまりに怠け者なので同じ社にいても辞めてしまった、マスなんて汚い顔の女でどこが良かったのかと書いている。

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文豪の女遍歴

夏目漱石、森鴎外、谷崎潤一郎他、スター作家62名のさまよえる下半身の記録。姦通罪や世間の猛バッシングに煩悶しつつ、痴愚や欲望丸出しで恋愛し、作品にまで昇華させた日本文学の真髄がここに。

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小谷野敦

一九六二年茨城県生まれ、埼玉県育ち。東京大学文学部英文科卒業、同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士(比較文学)。大阪大学言語文化部助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを経て、文筆業。『もてない男』(ちくま新書)、『聖母のいない国』(青土社、河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『谷崎潤一郎伝』『川端康成伝』(ともに中央公論新社)、『江藤淳と大江健三郎』(筑摩書房)など著書多数。小説に『母子寮前』(文藝春秋、芥川賞候補)、『悲望』(小社)、『童貞放浪記』(小社、二〇〇九年映画化)、『中島敦殺人事件』(論創社)がある。

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