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シンギュラリティ・ビジネス

2017.07.11 公開 ポスト

世界のトップエリートは「10%アップ」でなく「10倍アップ」の成果を目指す齋藤和紀

ドローンは、シンギュラリティ大学が最も注目するテクノロジーのひとつ

 アメリカはシリコンバレー、近くにはグーグルの本社もあるエリアに、「シンギュラリティ大学」という大学があるのをご存じでしょうか。「シンギュラリティ」の到来を予言しているレイ・カーツワイルと、起業家のピーター・ディアマンディスが発起人になったこの大学には、世界中から意欲あふれる優秀な若者が集まります。
  News Picks編集長・佐々木紀彦さんも「AI入門の決定版だ」とお薦め『シンギュラリティ・ビジネス――AI時代に勝ち残る企業と人の条件』著者の齋藤和紀さんは、日本ではまだ数少ない、シンギュラリティ大学のプログラムの受講者です。
ここではいったいどんな教育が行われているのか? 自身の体験を踏まえて、その驚きの様子をお伝えします。

 * * *

「スリープレス・ユニバーシティ」(寝ない大学)

 レイ・カーツワイルとピーター・ディアマンディスの2人が発起人となり、米国のカリフォルニア州にエクスポネンシャルなテクノロジーの教育に特化した「シンギュラリティ大学」が設立されたのは、2008年のことでした。名称は「大学」ですが、法的には「公益企業(Benefit Corporation)」。当初は大学としての認証を受けようと考えたのですが、やろうとしていることがあまりに先進的でありすぎたために、それは断念しました。

 しかしもちろん「大学」を名乗る以上、そこが教育・研究機関であることはいうまでもありません。ただしそれに加えて、シンギュラリティ大学はベンチャー企業の育成やベンチャーキャピタル機能なども備えています。日本でいえば、株式会社とNPO法人の中間ぐらいの位置づけだと思えばいいでしょう。創業にあたってはグーグル、シスコ、オートデスクといった大企業がスポンサーとして支えました。

 キャンパスがあるのは、NASAのエイムズ・リサーチセンター内。シリコンバレーのマウンテンビューという地区で、近くにはグーグルの本社もあります。エイムズ・リサーチセンターは飛行場を併設するNASAの基地のような場所で、かつてはそこで宇宙飛行士の養成もしていました。ですから、シンギュラリティ大学の建物の隣にある宿泊施設には、宇宙飛行士が使っていた部屋もあります。

 そこで寝泊まりしながら、24時間体制で教育プログラムに参加し、起業にいたるまでのマインドセットを植えつけられるのがシンギュラリティ大学という場所です。飲食物も提供されるので、プログラムが終わるまで一度も敷地外に出ない参加者もいるとか。

 シンギュラリティ大学の頭文字は「SU」ですが、じつは「スリープレス・ユニバーシティ(寝ない大学)」ではないのかという冗談もあるぐらい、参加者はそのプログラムに真剣に取り組んでいます。

競争率数千倍。世界中の優秀な若者が集まる

 そのキャンパスを使って行われる事業は、大きく分けて3つ。その3つを簡単に紹介しておきましょう。

 もっとも「大学」らしい中心的な教育活動は、毎年夏季に10週間かけて実施される「グローバル・ソリューション・プログラム(GSP)」です。参加者はおよそ80名。受け入れ枠をはるかに超える応募があり、倍率は、噂では数百倍ともいわれています。

 GSPに参加するためのルートは2つ。直接選考で合格するか、各国のコンテスト(GIC=グローバル・インパクト・チャレンジ)で優勝するかのどちらかです。およそ4万ドルといわれる衣食住を含む参加費用は、前者の場合はグーグルが全額負担。後者の場合も、各国のスポンサー企業がサポートしてくれます。これまで日本からは参加者がいませんでしたが、2017年には日本でもGICが開催され、初めて日本在住の日本人の参加者が出ることとなりました。

 10週間のプログラムは、大きく前半と後半に分かれています。前半の5週間は、地球や人類規模の問題解決のための技術や考え方に関する講義。後半の5週間は、いくつかのグループに分かれて実際に製品やサービスの開発に向けた仮説と検証を行います。すでに、そこから生まれたベンチャービジネスも少なくありません。

 このGSPの前半の内容を5〜7日間で集中して講義するのが、私も2015年に参加した「エグゼクティブ・プログラム(EP)」です。参加費の1万4000ドルは、自分で払いました。

 およそ60人の参加者のうち3分の2ぐらいが米国外からで、その中で多いのはヨーロッパの人々。アジアからは私を含めて2人だけで、それ以前を含めても日本からの参加者は10人に満たない状態でした。参加者の職業もさまざまで、自ら起業を考えている人のほか、経営者や投資家、軍人などもいます。男女比はおおむね2:1度でした。

 日本人は自分だけのはずだったので、EPの講義で隣にいた女性から流暢(りゅうちょう)な日本語で話しかけられたときは驚きましたが、聞けば、日本で外資系銀行のCEOをやっていた経験があるとのこと。そのときはすでにオーストラリアに移っていましたが、彼女のようなまさに「エグゼクティブ・プログラム」の名に似つかわしい立場の人もたくさん参加しているのです。敷地内の宿泊施設はテレビもない簡素なものなので、運転手つきの車でフォーシーズンズホテルから毎日「通学」してくる人もいました。

 GSP、EPと並ぶもうひとつの主要プログラムは、秋季に行われる「アクセラレーション・プログラム(AP)」です。チームごとに選考され、選考通過チームには、GSPと同様のプログラムに加えて、10万ドルの開業資金と場所が提供されます。すでにチームとして「開業」している団体が対象で、GSPよりも実践的なコースといえます。GSPを通して構成されたチームがそのままこのAPに移行してくることもあるそうです。 以上の3本柱のほかにも、「エクスポネンシャル・シリーズ」と題したテーマ別の講演会、ユース向けプログラム、大企業向けのカスタマイズプログラムなど、シンギュラリティ大学は多様なメニューを用意しています。

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シンギュラリティ・ビジネス

2020年代、AIは人間の知性を超え、2045年には、科学技術の進化の速度が無限大になる「シンギュラリティ」が到来する。そのとき、何が起きるのか? ビジネスのありかた、私たちの働き方はどう変わるのか?

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齋藤和紀

1974年生まれ。早稲田大学人間科学部卒、同大学院ファイナンス研究科修了。シンギュラリティ大学エグゼクティブプログラム修了。2017年シンギュラリティ大学グローバルインパクトチャレンジ・オーガーナイザー。金融庁職員、石油化学メーカーの経理部長を経た後、ベンチャー業界へ。シリコンバレーの投資家・大企業からの資金調達をリードするなど、成長期にあるベンチャーや過渡期にある企業を財務経理のスペシャリストとして支える。エクスポネンシャル・ジャパン共同代表、Spectee社CFO、iROBOTICS社CFO、Exoコンサルタント。

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